ずる、と中に入れられていたものが出て行く。
……ああ、ようやく終わったんだ。
身体を起こそうとしたが、快楽はすっかり俺の力を奪ってしまっていて、しばらくはまともに動かせそうにない。
体力の回復を図る俺に、傷男が耳打ちする。
「最高だったよ、お前」
そんな感想はいらねぇんだよ、どこまでも人の神経を逆なでする野郎だ。
弛緩しきってただ呼吸をするだけの身体。べたついて不快だった。
帰ったら真っ先に風呂だ。全部洗い流して、何事もなかったように日常に戻ってやる。
飽きるぐらい古泉とゲームして輝かしい連勝記録作ってやる。
「……?」
影ができて、目の前に、靴の爪先。
その意味するところに気づく前に、顎を掴まれて持ち上げられた。
「ぁ……ぅ」
眼鏡をかけたその男の顔を見て、回らない頭で、確か古泉を拘束していたもう一人だということを思い出す。
レンズ越しの薄いナイフみたいに光る瞳に覗き込まれ、ぞっと悪寒が走る。
「まさか、もう終わりだと思ってるわけじゃないよな」
思ってたよ、それどころか信じきってたよ、悪いか。
けれど俺は悪態をつく気力もない。なんせろくに喋ることもできないんだからな。
「せっかくだから、色々試してみようか」
「いいね、気絶するまで?」
眼鏡の提案に、男たちが笑いあう。
どいつもこいつもサドばっかりか。
たぶん今、俺の顔は蒼白になってるはずだ。
誰でもいい、誰か、こいつらまとめて殺してくれ。
俺はまるで荷物のように持ち上げられ、ニヤニヤ笑う眼鏡の身体の上に乗せられた。
「、っ」
男の指が、俺の尻の割れ目をもったいぶってなぞる。
「俺、体力ないんだよねー。寝てるから、自分で挿れて頑張って動いてよ」
嘘だろ。
俺は後何回、絶望を味わえばいいんだろう。
こっちだって体力なんざねえよ。
なけなしの体力はお前らのせいで根こそぎ持ってかれたよ。
自分の体重を支えるので精一杯で、どうしたらいいかなんてわからなくて、俺は木偶のぼうみたいに男の腹を跨いでいる。
いつまでも動かない俺に焦れたのか、男はとんでもないことを言った。
「一人じゃできないんだったら、お友達に手伝ってもらう?」
「っ!」
古泉、に?
「ゃく、そくが、ちが……っ」
抗議する俺の腰に手が触れる。
「君がなんでもする、って言ったんだ。反故にされたのはこっち」
「……っ、わ、かった……やるよ」
俺は唇をわななかせ俯いた。
ああもうどうしたって俺は古泉が大切で守りたいんだ。
残っているカスみたいな力をかき集めて、なんとか腰を浮かす。
それだけでも俺には重労働なのに、眼鏡は俺の腰を砕くような更なる悪戯を仕掛けてくる。
股間にペニスをさし込まれ、ゆっくりと前後に引かれた。ぬち、と音がする。
「はぅっ」
「あ、これだけで感じちゃった? ごめんね」
ちっとも悪いと思ってない顔で言う。
俺は堪えて、堪えて、堪えきって身体の位置をずらした。
「く……っ」
初心者にいきなり騎乗位ってどんだけ鬼畜なんだよ、眼鏡叩き割るぞ。
そんなことを思いながら、できるわけもないのを知っている俺は、自分でそれの位置を確かめて、息を吐きながら腰を落とした。
徐々に視界が下がっていく。
「は……」
唐突に男の手が伸びて、俺のペニスを握った。
「っ!? あ」
あ、ああああ深い深い深い!
ぎりぎりで保っていた俺のバランスは見るも無残に崩れ、重力にしたがって勢いよく腰が落ち、一気に奥まで到達する。
奥、が実際にどのへんにあるものなのかは知らないが、きっとここがそうだ、これより先は不可能だと直感した。
行き過ぎた快感は苦痛と紙一重なのだということを、嫌というほど思い知らされる。
「はっ……はー……っ……はぁ……っ……」
この状態から自分で動くなんて途方もないことのように思えた。
だってしょうがないだろう、全身が悲鳴を上げてもう無理だって訴えてくるんだから。
――――古泉、俺に勇気をくれよ。
ごめんな、お前を理由にしちまって。
「お前のため」だなんて、そんなことされたって重いだけだよな、恩着せがましくって嫌かもな。わかってるんだ。
でも俺は弱いから、今の俺にはそれが必要なんだ、弱い俺は支えがなくっちゃ動けないんだ。
「んーまあ、おまけで及第点」
眼鏡が腰を突き上げてきた。
「うぁっ!」
激しいうねり。緩急をつけて繰り返される。ぐらぐら揺れる。
体力がないだと? どの口がほざく、この大嘘つきめ。
「ああっ! あっ! んんぅっ、あ、あああああ!?」
頂上までの道は短く、俺はいとも簡単に達し、だらしなく欲望を撒き散らした。
「君、男でよかったねぇ? 女だったら妊娠しちゃってたかもしれないし」
眼鏡が嘯く。
ずんずん内臓に響くような追いうち。あ、また、まただ、爆発するっ――――。
薄汚れた体液を中に注ぎ込まれ、くずおれるように男の胸に倒れこんだ。
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