Love Step

Love Step番外編

*** 君と綴る桜の夢 ***




今日は朝から何だか気分が良かった。
多分昼休みに聖良と屋上で待ち合わせたせいだろう。

生徒会室の窓から隣りの芝生で昼休みを過ごしている学生を見て羨ましそうにしている聖良に気付いた俺は昨夜のうちにメールを送った。

『明日は天気が良いらしいから久しぶりに屋上で待ってる。聖良の弁当楽しみにしているからな。』

聖良があんなに喜んで気合の入った弁当を作ってくるとは思ってもいなかったが、それだけ俺の提案を喜んでくれたのだと思うと自然と表情も緩んでくる。俺今すごくにやけているんじゃないだろうか。

弁当もすごくうまくて更に頬が綻んでしまう。
そんな俺を見つめる聖良の笑顔がまたとろけそうな位に甘くて、可愛くて…ずっとずっとかまっていたくなってしまうのは仕方の無い事だと思う。

今夜も一緒に俺の家で過ごして夕飯が食えると思うと、益々嬉しくなった。

だが同時に僅かな不安も過ぎった。
聖良はすごく無防備だ。
世の中には悪い人間は存在していないと思っている。
いつも思うことだが、夜道を俺のマンションまで歩いてくる聖良には不安を隠せない。

「聖良は無防備だからな。おまえ、人に道を聞かれたらホイホイ案内するタイプだろう?」

誰かに道を聞かれたらそのまま道案内をして何処かへ行ってしまいそうだと常々不安に思っていた俺は一度は聖良に釘を刺しておかなければと以前から思っていた。
ここぞとばかりに聖良の反応を見るチャンスだ。

案の定困った人を見捨てておけないとアッサリと言う聖良。
相手が誰であろうが人の良い笑顔でノコノコと道案内をしてしまうだろうと確信した俺は不安を隠しきれなかった。
本当にナンパと気付かずに連れて行かれてしまうんじゃないだろうか?

ここで聖良を一人で歩かせるのが不安だ何て言ったら束縛しているように思われてしまうだろうか。
やっぱり、そこまで言ったら流石に聖良に嫌われそうだな。
でも…すげぇ不安なんだよなあ。

一人で出歩くなとは言えないが、警戒するくらいはして欲しい。
大丈夫だと本人は言うが、ナンパだってこと自体に気付かない可能性のほうが高いと思うのは絶対に思い過ごしじゃないと思うんだ。
なんせ、聖良だもんなぁ…。

まだされてもいないナンパに嫉妬するのも変な話だが、想像しただけでイライラしてくる。

だから聖良を離したくなくなった。
釘を刺すように不意打ちで唇を奪って腕の中に閉じ込める。
甘く、涼やかな聖良の香りがフワリと鼻腔をくすぐり心を癒していく。

ああ…このまま聖良を腕に抱いてここで昼寝でも出来たらすげぇ幸せだろうな。


……午後の授業サボっちまおうか?


俺から視線を逸らしタマゴサンドをパクつきだした聖良を眺めながら策を練る。

聖良の時間割は頭には入っている。午後からは数学と体育だっけ?
って事は問題は担任の数学だけだな。


とりあえずその気になってもらってから…。

タマゴサンドの味見と称して腕を引寄せると再度唇を奪う。
よほど驚いたのか喉を詰まらせそうになった時は流石にあせったけど、それでも逃がすつもりなんて無かった。

当たり前のように俺の腕の中に収まる聖良。まるでこの腕の中が彼女の居場所である事が生まれる前から決まっていた事のように感じる。

俺は聖良さえいれば幸せだし場所がドコとかどんな状況だとか全然気にしないけど、聖良は気になるらしい。頬を染めて俺の腕から逃れようとジタバタしている。


でも、離してやんねぇ♪


「天気もいいし、気持ち良いもんなぁ。こんな日は聖良を抱きしめて昼寝していたいよな。」

俺の言葉にピクンと反応して身体を引くようにして次の言葉を待つ。

「このまま押し倒したら授業は無理だよな?」

一瞬顔が引きつったのがわかる。……おもしれぇ。もう少しからかってみよう。

「外で開放的に誰かに見られるかもってスリルのあるエッチって言うのも良いかもな?」

なんてな、するわけ無いだろう?その肌を誰かに見られるなんて真っ平だもんな。
俺一人で楽しませてもらうしっ♪

「せ〜い〜ら♪諦めて俺とサボろう?」

聖良が眼鏡を外し見つめられると弱いのを俺は知っている。
いつもより至近距離でないと聖良の顔すらよく見えないのを良い事に聖良を堕としたい時は必ず眼鏡を外していつもより潤んだ瞳で迫ってみる。

今日だってほら…すでに心が揺らいでいるのがわかる。
少し意地悪な流し目を送って誘うように甘い言葉を囁いてみた。

「聖良…好きだよ。」

俺の言葉は罠だって聖良はちゃんとわかっている。
わかっているのに、この距離で見つめて甘く囁くともう思考回路が停止するようだ。
瞳が潤んで俺に魅入られたように動けなくなっている。ひょっとしたら俺って催眠術の才能があるのかもしれない。

聖良が頷くまで後一押しだな

「一人寝はイヤだな。傍にいてくれる?」

駄目押しの一言でコクンと頷く聖良。
こんな姿もやっぱりカワイイ。
男に迫られて、こんな風になってしまうのは俺だからだと思って良いよな?
他の誰かでこんな風になったら俺そいつを殺しかねないぞ。

その辺も後でゆっくり聖良を問い詰めてみようと考えながらこの後の予定を考えつつ、その柔らかな唇に何度も想いを寄せた。
出来ればすぐにでも押し倒してムニャムニャ…ってなっても良いくらの気持ちだったけど、流石に場所が場所だけにそんなことできる筈もなく、とりあえずデザート代わりに甘いキスを堪能する。

諦めたように溜息をつくと、俺を受け入れて僅かに唇を開く聖良。

キスが深くなり、その全てを貪るように心が求め始める。
このままいくと止められなくなりそうだ。
一度玉砕した理性はまだ復活の兆しは見えなくて、最近の俺はどうも暴走傾向にある。

もちろん聖良限定だけど。

「……お外でエッチだけは絶対にイヤですからね」

擦れた小さな声で聖良が訴えるのが耳に届き笑みがこぼれた。
本気にしているんだろうか?
学校の屋上で…なんて、誰に見られるかわからないのにそんな危険を冒すわけ無いだろう?
おまえの白い肌を見てもいいのは俺だけなんだから。

そう、例えそれが春の暖かい陽射しを降り注いでいる太陽であっても、この澄み渡った青空であっても、道端を彩り始めた草花であっても聖良の素肌は見せたくないんだ。

ここまで嫉妬する俺ってヤバイのかな?


バイトまでの4時間…



昼寝とは言ったけれど寝かせてやるつもりなんて無いぞ。




+++   +++   +++




佐々木達のいる屋上の更に上に貯水タンクを設置した僅かなスペースがある。
屋上のみならず校舎全域を見渡せるが、柵も無く強風に煽られる危険性が高い為立ち入り禁止になっている場所だ。

ここから落ちたらまず即死は確実だろうな。

危険なので普段は登れないようにはしごを外してあるけど、ちょっと除けてあるだけだから登ろうと思えばこんな風に簡単に上がれてしまう。
でも、ここに自ら上がろうと考えるなんて僕たちくらいのものだろうな。
高所恐怖症ではない僕だけど、下を見るのはかなりの度胸がいる。
愛子の腰をチャンスとばかりにしっかりと抱いて支えながら、全神経を足元に向けていないと目眩がして落下してしまいそうだ。

何でここまでするのかだって?

それは佐々木龍也の動揺する姿がそれだけの事をしても見る価値があるからだ。

しかも、それをネタにからかう事が出来るかもしれないって言う、人生でもそう何度も巡ってくる事の無いチャンスかもしれないんだ。
多少のリスクは覚悟するさ。

さっきまで二人で弁当を食っているときの甘い顔なんて新聞部にスクープで高く買い取ってもらえそうなネタだったぜ。

僕に写真の才能があれば絶対にやっていたな。

屋上には他にも学生がいるにもかかわらず人目もはばからず聖良を引寄せる佐々木を信じられないものを見るような気持ちで見つめる。

これ、本当に佐々木なんだよなぁ。

クールビューティのカケラも見当たらないぜ?メチャクチャ甘いじゃねぇか。
聖良って本当にすげぇや。



そのうち、佐々木に羽交い絞めにされるようにジタバタしていた聖良が諦めたように力を抜いたのを見て僕は聖良が午後の授業を放棄したことを確信した


「なあ、あいつら授業出ない気みたいだぜ。」

「まったく、しょうがない生徒会長よね。可愛い聖良ちゃんを悪の道に引きずり込んでくれちゃって!」

愛子が僕の横でかなりご立腹だ。
愛子は聖良のこととなるとマジになるから面白い。まるで自分の妹か何かのように思っているようだ。

できれば僕にもその位の情熱を持って執着して欲しいって言ったらダメかなあ?
どう見ても愛子の中での優先順位は僕より聖良が上のような気がする。

「ああっ!もうダメよ佐々木君。こんな所で聖良ちゃん襲わないでっ!!」

もう半分悲鳴だね。
僕としては良い見ものだと思うんだけど、愛子には許せないらしい。
携帯を出して聖良の番号を押しているようだ。

あ〜あ、佐々木の機嫌がまた悪くなるぞ。

「もしもし?聖良ちゃん。佐々木君に襲われているでしょう?ダメよこんな所で!ちゃんとおうちに帰ってからにしなさいよ。」

おうちに帰ってからって…それはないんじゃないか?止めてるんだか煽ってるんだかわからないじゃないか。
あ、佐々木が聖良の携帯を取り上げてる。うわ、マジで切れてるんじゃないか?

「あ、佐々木君?ちょっとこんな所であたしのカワイイ聖良ちゃんを襲わないでよねっ!ちゃんと見てたんだから。」

佐々木がギョッとした顔で辺りを見回している。…と。そこへバッチリ目が合った。

そうそう、この屋上には更に上があるっておまえ忘れていただろ?

佐々木の表情が驚いたものから呆れたものに代わり、それからマジで切れ出したのを見て笑いが止まらなくなった。




佐々木はまさかこんなところから僕らが見ていたなんて思わなかったんだろうな。
まあ、誰も考えないだろうケド…。

あいつの慌てぶりが余りにも面白かったので、気をよくして更にからかいたくなってくる。
こんな危険を伴う場所に上がるリスクを負ったんだ。
それなりに楽しみたいもんな♪

睨んだって聖良の前じゃできる事はたかがしれているだろう?全然怖くないし♪





…って思っていたんだが頭のデキはあいつのほうが上だった。

「信じられねぇ…バカか?おまえら。」

そう言いながら僕達のいる最屋上の下までやってきた佐々木はニッコリと極上の笑みを浮かべた。

見たことの無いような妖艶な笑顔を見せられて男の俺でさえ一瞬ドキッとする。
ぼけっとしている俺達に、次の瞬間いつものあの冷たい仮面をつけたかと思うとあいつはいきなりはしごを外した。

「バ〜カ!そこで暫く反省してろ。」

冷たい視線を飛ばしつつ手をヒラヒラ振って、聖良の腕を取ると屋上の出口へと向かう。

おいおいマジかよ?
こんな場所に置き去りにされたら誰も気付いてくれないぞ?

「おい、冗談はよせよ。はしごを戻していけっ!」

「いやだね。そこで頭を冷やしてろ。あ、そうだ。俺達午後からフケるから。誰も助けに来ないだろうし今夜は一晩二人でラブラブに過ごすんだな。
運良く誰かが気付いて助けてくれることを祈っていてやるよ。じゃ〜な。」

ニッコリ♪…ってそんな怖いビューティスマイルはいらねぇって。
おまえが綺麗に微笑む時は要注意だってよくわかったよ。

「わ〜〜!!悪かったっ!!もうしないっ。はしごを戻してくれよ。」

「きゃ〜〜!!佐々木君ごめんなさい。降ろしてえ。」





「ヤダ」






パタン…




無情にもあいつは僕達を心配する聖良を引きずって屋上から去ってしまった。


やられた…。いくらなんでもここまでやるとは思わなかった。


半泣きの愛子を抱きしめて座り込む。

今晩ここで過ごすのは絶対寒いよなあ…。










龍也先輩はあたしの手を掴むと屋上を後にした。
二人をあの貯水タンクのある最屋上に残したまま。

「先輩…龍也先輩!愛子先輩と淳也先輩を助けてあげなくちゃダメですよ。」

「良いんだよ、少しくらいお灸を据えておかないとな。」

「でも…。」

「心配ないよ。朝まであそこにいる事はないだろうから。」

「え?どうしてわかるんですか?」

「世の中には文明の利器っていうもんがある。俺達が見られているって気付いたのはどうしてだった?」

「どうして…あ、携帯?」

「そう。今は頭に血が上ってるから気付かないかもしれないけど、暫くしたら気付くさ。誰か助けに来るだろうから大丈夫だ。」

「よかった。本気で朝まで置き去りにするつもりかと思いましたよ。」

「本当にそうしてやりたい気分だけどね。聖良が嫌がるだろうからやめた。…さ、フケるぞ。」

「え!あれって本気だったんですか?」

「当たり前だ。ほら教室行ってカバン取って来るぞ。」

「そんなの無理です。ちょっと…龍也先輩?」


龍也先輩はあたしの教室の前まで来ると、渋っているあたしをいきなり抱き寄せた。
周りにクラスメイトがいるのにと動揺していると、今度はいきなりあの瞳で見つめられ唇を奪われた。
途端に火がついたように顔が真っ赤になる。

龍也先輩は戸惑って真っ赤になっているあたしにを横目に、何事も無かったように教室に入ると荷物をまとめるように言った。
真っ赤な顔で先輩の催眠術にかかったようにフラフラと荷物をまとめる。

「聖良は熱があるみたいだから午後は休ませるよ。担任にはそう伝えておいて。」

龍也先輩がクラスメイトにそう言っているのが聞こえたけどそれを否定する気にもなれなかった。
きっとあたしはどう見ても熱があるとしか思えないくらい頬も耳熱かったんだもの。

あたしを送ると言い訳して学校を本当にサボってしまった龍也先輩。


これって生徒会長がしても良いことなんですか?





それでもあたしの手を引いて気持ち良さそうに春風に吹かれて歩いている龍也先輩を見ていると何も言えなくなってしまう。
少し遠回りしようと龍也先輩はマンションから程近い川の土手にある桜並木へとあたしを連れてきてくれた。
この桜並木はあと1か月もすれば桜が満開になる。
僅かに早咲きの桜が咲き始めているのを見つけてはしゃぐあたしを先輩は優しい瞳で見守っていてくれた。

こんな時間を持てるのならサボるのもたまにはいいかもしれないと思い始めている自分がいたりして…。

「たまにはこう言うのも良いだろう?まだ腹が減っているようなら川縁の桜の木の下ででも弁当の続き食うか?」

あたしの心を読んだようなタイミングでそう言う龍也先輩にちょっと驚きつつもコクンと頷いた。

「…そうですね。お天気もいいしこのまま帰るのももったいないですし…。」

先輩に手を引かれて一本のさくらの木の下に座り込む。
早咲きの桜が枝の先に一つだけピンクの淡い花を咲かせているのがとても印象に残った。

「桜の季節にはまだ早いけど…いつかこの場所に聖良を連れてきたいと思っていたんだ。」

「…あたしを?」


「少しマジな話なんだけどさ…聖良には聞いて欲しいんだ。」

そう言うと少し悲しげな複雑な顔をして龍也先輩はあたしを引寄せて小さな声で話し始めた。
一つだけ咲いた小さな桜が春風に煽られる。
その光景が何故か切なく映ったのは龍也先輩の声がとても切ないものだったからかもしれない。

「俺のいなくなった母親はさくらと言うんだ。俺の誕生日の頃はいつも桜が満開でこの川縁へ毎年花見に来たよ。母親と死んだ父親と三人でさ。」

あたしを抱きしめる手に僅かに力が入る。あたしは先輩の背中に腕を回すと支えるようにして抱きしめた。
あれほど心を閉ざしていたお母さんの話を龍也先輩が自ら話してくれていることに驚くと同時に、それだけあたしを信頼してくれている事に感動を覚えた。
嬉しさと、愛しさが込み上げてくる。

「母親が蒸発してから俺の父は仕事にのめり込んだ。母親の事を忘れたかったんだろうな。無理がたたって倒れたときにはガンの末期でもう手遅れだったんだ。」

「そんな…。」

「俺は母親が憎かったよ。今でも許せるとは思っていない。でも…聖良に出逢ってから、折に触れて母親が俺を愛していた頃の記憶って言うのが少しずつ蘇ってきているんだ。最近では俺達の前から姿を消したのには何か理由があったんじゃないかと思うようになってきた。」

天を仰ぐようにして、一旦呼吸を整えるように間を置くとあたしの瞳を見つめてくる。
その瞳の中に先輩が何か決意をしているように見えた。

「聖良のおかげだよ。こんなに穏やかに人を愛する気持ちをもう一度持てるようになった。母親を許す事は出来ないけれど、俺を産んでくれたことに感謝できるようになった。俺を産んでくれたから俺は聖良に会う事が出来たんだから。」

「…あたしも龍也先輩のお母さんに感謝します。龍也先輩を生んでくれた事。」

「ありがとう聖良。…ずっと俺の傍にいてくれるな?」

「はい。…ずっと傍にいます。毎年先輩のお誕生日をこの桜の下でお祝いしましょう。」

「そうだな。毎年二人で…そのうち家族も増えてたくさんで来たいよな。」

「クス…楽しそうですね。早くそうなればいいですね。」

「きっとそうなるよ。毎年俺の誕生日には聖良の作った弁当をこの桜の下で家族そろって食べるんだ。」

瞳を輝かせて嬉しそうに未来の夢を語る龍也先輩。
こんなに幸せそうな顔をあたしは見たことがあったかしら。

あたしとの未来を語るあなたがとても愛しい。
あたしの持っているものであなたを幸せにしてあげることが出来るのなら何を捨てても構わないと思う。

あなたを幸せにしてあげたいの。

言葉でこの気持ちを表現する術をあたしは知らなくて…でも、あなたにどうしてもこの気持ちを伝えたくて…。

ギュッと彼を抱きしめると精一杯の気持ちを春風に託した。



――あたしの人生の全てをあなたにあげるから…一緒に幸せになりましょうね。





やがて来る桜の花の季節。

初めて共に迎えるあなたの誕生日は満開の桜の下がいい。

夢のように美しく降りしきる満開の桜の下であなたの腕の中で語りたい。

これから先もずっと共に歩く未来の夢を。

この桜の下であたしはあなたに誓うわ

これからの人生はどんな時もあなたの隣りにいることを。




ねぇ…龍也先輩。


未来を語りましょう。


あたし達のまだ見ぬ子ども達の話を…。


ほんの少し未来のあたし達の家族の話を…。


幾度季節が巡っても毎年同じ桜の下で少し先の未来を夢見ましょう。


ずっと二人で永遠の夢を綴ってゆく為に。





あなたがあたしを見詰める。


言葉が無くても愛しているとあなたの心が伝わってくる。


柔らかな春の風に抱かれて、甘い優しい時間があたし達を心地良い空間で包んでくれる。


「愛しているよ聖良。ずっと一緒に生きていこうな。」


うん、ずっと一緒よ。


あたしの言葉はそのまま先輩の唇に吸い取られてしまった。


きっと気持ちはちゃんと伝わったよね。だってちゃんと彼の心の声が聞こえてきたもの。



幸せになろうな…って。





+++ Fin +++

2006/03/08


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