〜☆〜Christmas Special Step 3〜☆〜
「蓮見さん、ちょっといいかな?話があるんだけど。」
また呼び出しですか…
って、今日は…男の人?龍也先輩って男の人にも人気があったの?
あたしを呼び止めたのはスラリと背の高い肩に少し触れるくらいの髪を金髪に染めた、少し切れ長の目をした整った顔の男性(ひと)だった。タイの色が紺だから2年生だろう。
「嫌って言っても話し聞いてもらうけどね。」
そう言うとその人はいきなり戸惑っているあたしの手をとって、グイグイと引っ張って何処かへ連れて行こうとする。
「ちょっと待って下さい。わかりましたからっ…そんなに引っ張らないで下さい。ちゃんとお話はお伺いしますから。」
「ホントに?ちゃんと逃げないで聞いてくれる?」
「ハイ、それで何でしょうか。龍也先輩のことなら…。」
「ああ、止めてくれる?君の口から佐々木の名前を聞きたくないんだけど。」
「え?だって、龍也先輩のことが好きであたしに文句を言いたかったんじゃないんですか?」
その人は明らかに不快そうに眉を寄せて違うといった。
「あのねぇ、聖良は僕がそんな趣味のある男に見えるの?」
「…じゃあどうしてあたしを呼び出したりしたんですか?」
「あの男の事でないと君を呼び出したりしちゃいけないわけ?僕は君と話がしたかったんだけど。」
「はぁ…何のお話でしょうか?」
「フフッ。聖良は本当に鈍感なんだ。普通男が女を人気の無い所に呼び出したら、大体想像つくんじゃない?」
「……女の人からはしょっちゅう呼び出しをされてますけど、男の人は初めてですから…。」
何を言いたいのか良くわからない。大体この人あたしのこと名前で呼んでない?
会ったばかりの名前も知らない人にいきなり名字でなく名前で呼ばれたなんて龍也先輩にバレたらそれこそ何を言われるか分からない。
グイグイと引っ張られてきたから歩くのがやっとだったけど気がついたら人気のない別館の廊下まで来ている。
研修室や生徒会室のある別館へ繋がる廊下、ここはあまり人が通らない。話をするには静かでいいのかも知れないけれど初めて会った男性とふたりきりでこの場所にいるのは正直居心地が悪い。
『だからおまえは無防備だって言ってるだろう。』
眉間に皺を寄せて不機嫌な顔をした龍也先輩の顔が浮かんでくる。
考えてみたらこんな風に知らない男性(ひと)と二人きりでいるところを見られたりしたら、それこそ怒り狂うんじゃないかな。
…先輩、来ないよね?こんな所まで捜しに来たりしないよね?
最近はいつだって呼び出しを受けるたびに龍也先輩がどこからか現れてあたしを助けてくれる。
どうやってその情報を得ているのか不思議だけれど、あたしを心配してくれているのだと思うととても嬉しい。
そんなことを思い出してふっと笑みがこぼれた。
そんなあたしをその人は見逃さなかったらしい。
「こんな時まで佐々木のこと考えているのかな?本当に無防備なコだね。もっと警戒したほうがいいんじゃないかな。」
「え…?何を警戒するんですか。大体あなたどなたですか?」
「ああ、僕の事知らない?佐々木と同じクラスの浦崎淳也だよ。結構有名なんだけどな。」
「あ…お名前は聞いたことあります。バスケット部のキャプテンさんでしたっけ?」
「あははっ。名前だけ?残念だな。じゃあこれからもっと僕の事知って欲しいんだけど…。」
そう言って浦崎先輩は一歩あたしのほうへと足を踏み出す。反射的に一定の間を取るように一歩下がると背中が壁に当たって逃げ場を失ってしまった。
「もう逃げられないね。僕、聖良のこと好きなんだケド。…佐々木なんかと付き合うのはやめて僕にしておかない?」
「……っ!何を言ってるんですか?あたしは龍也先輩と付き合っているんです。」
「でも、好きで付き合い始めたわけじゃないんじゃないか?佐々木の勢いに押されて流されたんじゃない?」
「そんなっ…」
「聖良を見ていたらわかるよ。佐々木を本気で好きなわけじゃないだろう?勢いに飲まれて恋してると錯覚しているだけだよ。僕なら聖良に本当の恋を教えてあげられる。」
一体この人は何を言っているの?
あたしが本気で先輩を好きじゃない?
あたしの想いが本物じゃないっていうの?
「…そんなこと、ないです。あたし本当に龍也先輩を…。」
「せいぜいキス止まりの関係なんだろう?セックスも知らないで本当に佐々木を好きだなんて言える訳?」
「なっ!」
「フフフッ、真っ赤だね。可愛いよ。佐々木には勿体無い。君のバージンは僕が貰ってあげる。あいつよりは遥かに君を満足させてあげられると思うよ。」
この人は何を言っているんだろう
「汚い手を使ったって言われてもいい。僕は聖良が欲しいんだよ。聖良のその真っ直ぐな瞳を僕に向けさせたい。佐々木じゃなくて僕を見ろよ。」
「何をバカなこと言ってるんですか。あたしは龍也先輩を…―――!!」
一瞬の事に何が起こったのかわからなかった。
「――――!」
突然すごい力で引き寄せられて次の瞬間に乱暴に唇を塞がれていた。
満身の力で抵抗してもその力は緩む気配も無い。
後頭部を強い力で押さえつけられているから顔をそむけることも出来ない。
――――いやだ。助けて龍也先輩
身を捩るたびに抱きしめられる腕に力が入る。
息が苦しい…
口内を貪るように掻き回され逃げ回る舌を執拗に追いかけ絡められる。
抱きしめられる腕の力と息苦しさに意識が朦朧として力が抜けていく。意識を手放しそうになった瞬間、その声は聞こえた
「聖良ちゃん?」
不意の呼びかけにあたしを抱きしめる腕の力が緩む。その隙をついて満身の力を込めて浦崎先輩を突き飛ばした。
「いやあっ!」
よろけながらも必死に声の主に縋りつき助けを求める。
「暁先輩…たすけ…て。」
暁先輩はあたし抱きとめると、浦崎先輩を睨み付けた。
「おまえ、何をやってるんだよ。」
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ライバル浦崎淳也登場。ついに波乱の幕開けです。酷いヤツですね〜。いきなり聖良にキス!
ヒーロー登場!が、なんと龍也ではなく暁でした。美味しいトコ取りですね、暁のヤツ(笑)
龍也が怒り狂う姿が目に浮びますよ。烈火の如く怒り出す龍也を見てみたいですか?