Love Step

〜☆〜Christmas Special Step 4〜☆〜





〜〜〜♪〜〜〜♪



この曲は聖良に関するものだ。
また呼び出しか…
ったく懲りない奴らだ。今度は誰だ?そう思いつつ携帯を耳にあてる。



――――!



聖良が浦崎淳也に無理やり連れて行かれたと聞いて耳を疑った。

あいつはバスケットのキャプテンで身長も高く顔も良いためかなりモテる。そのため気に入った女は片っ端から声をかけて寝ていると聞いている。どこまでが本当かわからない噂だが、余りいい噂のない奴である事は間違いない。

その浦崎が聖良を連れて行った?

一体どこへ行ったんだ?

携帯の向こうから聞こえる聖良の友達の声が俺の理性を掻き集めてくれる。
落ち着け、落ち着け。
与えられる情報から最大限考えられる可能性を見つけるんだ。

聖良の友達がくれた情報から俺は別館を目指して教室を飛び出した。
もうすぐ午後の授業が始まる。

でも、そんな事はどうでも良かった。




聖良に何かあったら俺は冷静でいられるんだろうか…



階段を駆け下り別館への廊下へ差し掛かったとき、視界に暁が誰かを腕に抱きしめているのが目に入った。




――――聖良!



頭が真っ白になる

聖良が俺以外の誰かに抱かれているその事実が余りにも衝撃的で…。

理性にピシッとヒビが入ったように怒りで身体が軋んだ。

それでも必死に理性を繋ぎ止め、聖良の名前を呼び傍へと向かう。


聖良の身体が声に反応するようにビクッと跳ねて俺を見る。その瞳には大粒の涙が溜まっていた。


「聖良…大丈夫か?浦崎に呼び出されたって聞いたんだが、一体何があったんだ。」

その言葉を聞いて、聖良は自分を抱きしめるようにして泣き伏してしまった。
眉を潜めて暁を無言で見つめる。

暁は顎をしゃくって廊下から死角になった一角を指した。
そこには、殴られて頬を腫らした浦崎が倒れている。

「とりあえず一発だけ殴っておいた。後はおまえが好きにすればいいさ。」

暁のその言葉に浦崎が聖良に何かをした事を悟り怒りが込み上げる。

「何を…したんだ?」

その言葉は浦崎に質問したものなのか、それとも暁に質問したものなのか、もう自分ではわからなかった。
聖良を浦崎が傷つけた。その事実が許せなかった。

胸倉を掴み浦崎を睨みつける。
浦崎が痛む頬を擦りながらも俺をあざ笑うかのように見て言った言葉は俺の胸の深部を抉った。

「おまえたち、まだ寝てないんだって?もう4ヶ月も付き合ってんだろ?普通だったらもうモノにしてるんじゃないか?」

「…おまえには関係ない。」

「いや、あるね。聖良はお前に強引に彼女にされたんだろう?じゃなきゃとっくにヤッテるよな。聖良がお前の事本気じゃないんだったら僕が貰う。」

「――!!なっ…何をふざけた事…。」

「ふざけてるわけじゃない。聖良が僕を好きになったら邪魔をせずにちゃんと譲ってくれよ。僕は彼女が気に入った。どうしても欲しいんだよ。」

「おまえはどんなに気に入った女も寝たらそれで終わりなんだろう?そんな奴が聖良に触れるなんて絶対許さない。」

「あははっ。寝たら終わり?そんなこともないんだけどね、まあ、そんなバカな女が多いだけさ。でも、聖良は違うよね。」

一瞬、浦崎の目に宿った光が俺を圧倒した。
こいつは、たぶん俺と女に対する視点が似ている。

バカな女、醜い女。顔がいいという理由だけで擦り寄って身体を預けてくる愚かな生き物。

俺は女を拒絶した。だが、浦崎は女を利用しているんだ。

だからこそ、こいつも聖良に惹かれるのかもしれない。

純粋な聖良、ピュアな心を持つ聖良。

こんな奴に奪われるわけには行かない。聖良は俺の唯一自分から欲しいと思った女だ。

「聖良は渡さない。指一本だって触れさせない。」

怒りで身体が震えるのがわかる。この男にだけは負けられないと…



「クスッ…もう遅いね、さっき第一段階はクリアしちゃったから。」

ニヤリと唇を吊り上げて不適に笑う浦崎。
聖良の泣き崩れた姿が脳裏をよぎり振り返ると、聖良は暁に肩を抱かれたまま口元を隠すと俺と視線を合わせないように慌ててそらした。


次の瞬間、俺は浦崎の言葉の意味を理解し瞬時に奴に殴りかかっていた。

怒りに握り締めた震える拳に伝わる衝撃…
振り切った拳に残る鈍い痛みが聖良の心の痛みのようで苦しかった。

浦崎は壁に打ち付けられうめくとそのまま動かなくなったが、それでも止まらない激情に駆られて更に殴りかかろうとする俺を暁が必死になって止めて掛かる。

「龍也、止めておけ、こんな奴殴る価値もない。それより聖良ちゃんのそばにいてやれよ。」

暁の言葉にハッとして、聖良の傍まで行くと震える彼女を腕に抱きしめる。

柔らかい温もりが自分のものだと思いたくて

聖良の気持ちが俺だけに向かっていると信じたくて

胸がつぶれそうだった



『聖良はお前に強引に彼女にされたんだろう?』




あの言葉が頭から離れない。

胸をえぐって血を噴出している。



聖良…おまえは本気で俺を好きになってくれているんだよな?






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龍也、怒ってましたね(コワッ)龍也は結構怒りっぽいです。冷静なようで切れると見境がなくなります。
龍也の心の不安が少し表れてきていますね。浦崎に鋭い突込みをされかなり動揺しています。
いつものポーカーフェイスはどこへやら、ぷち★ってキレて殴っちゃいました。