〜☆〜Christmas Special Step 7〜☆〜
『もう、おしまいにしましょう。』
信じたくない言葉。
触れた唇がほんのわずかに離れたその一瞬に静かに呟くように聖良の口から漏れた言葉。
言葉の意味を理解するのを脳が感情が拒否をしているのを感じる。
どうして―――
おまえは俺を好きだって言ってくれたじゃないか
「せ…いら…?何言ってるんだよ。冗談だろ。」
声が震えているのがわかる。
「あたし…自分が許せない。いくら無理やりだったからって先輩以外の人とキスをするなんて。
先輩…ごめんなさい。
あたし、いつも無防備だって先輩に叱られてていたのにこんな事になってしまって…。」
やっと止まった涙が再び聖良の頬を濡らす。
痛々しい姿に愛しさがこみ上げると同時に聖良を誰にも渡したくないと言う強い気持ちが湧き上がってくる。
「別れるって言うのか?」
「……こんなあたしが先輩の傍にいていい筈がないんです。
みんなちゃんと分かっているんですよ。だからあたしを呼び出したりするんです。
あたしが先輩に相応しい女の子なら、誰もが祝福してくれるはずですよね。」
背中を嫌な汗が流れていくのがわかる
聖良が俺から離れていこうとしているのか
そんな事許せる訳無いじゃないか
「何をバカなこと言ってるんだよ。俺に相応しいかどうかなんて俺が決める事だ。」
「あたし、先輩に迷惑ばかりかけている。」
「そんな事ない。むしろ俺は聖良がいないとダメになる。」
「クス…そんな事ないですよ。先輩には金森先輩みたいな綺麗な人がお似合いなんですよ。」
聖良が俺の腕の中からスルリと抜け出した。温もりが失われ急激に不安になる。
おまえだけは何があっても失いたくないんだよ聖良。何でわからないんだ?
「あたしが先輩といるのは正しい事じゃないの。」
「何でそうなるんだ。しっかりしろよ聖良、俺の言う事ちゃんと聞いているのか?俺が好きなのはおまえだけなんだよ。他の女なんていらないんだ。」
「あたしといると先輩に負担ばかりかけてしまう。あたしはそんなお付き合いはしたくないの。」
「聖良…俺の気持ちはどうなるんだよ。」
俺の言葉も耳に届かないように聖良は俺を振り切るように数歩後ずさりする。
聖良が俺から離れていく
俺の手を離れて行ってしまう
いつか他の誰かのものになって俺の事を忘れてしまう――
そんなのはイヤだ。絶対に許さない――
「別れるなんて、いうなっ!」
別れて俺を忘れるくらいならいっそ…
俺の中で何かが壊れた
聖良の腕を強く掴み抱き寄せる。
「聖良、だめだ。絶対に離さない。聖良を誰かに渡すくらいならムリにでも俺のものにする。」
何をしたかなんて自分でもわからなかった。
どうしても、自分のものにしたかった。
嫌がる聖良を押さえつけ無理やり胸を開いて口付ける。
細い首筋に赤い華を散らし、自分の印を付けていく。
大きく開いた胸元は想像以上の質感でシットリと俺の手に吸い付いてきた。
―――もう、止まらなかった。
どんな手を使っても、聖良を俺のものにしたかった。
「誰にも渡さない。聖良を失うくらいなら俺から二度と離れられないようにその体に俺を刻んでやる。」
「―――!っ…いやっ」
冷たい床に押し倒し胸を露にして顔を埋める。
柔らかい胸と甘い香りが俺の中のオスを刺激して、理性のカケラを摘み取っていった。
白い胸に顔を埋めて何度も吸い上げる。
身を捩る聖良を力で押さえつけ、自分の痕を確かめていく。
もう、何も考えられなかった。このまま聖良を失って誰かに盗られるくらいなら、このまま自分のものにしてしまいたかった。
「俺だけのものになってくれ。聖良…。」
「やめて、龍也先輩。いやっ…。」
聖良の静止の声も耳に届いていなかった。ただ聖良を離したくない、自分のものにしたい、その感情だけが俺を突き動かしていた。
「誰にも渡さないから。浦崎になんて絶対に渡すもんか。」
「…っ、やっ…痛っ…離して。」
「愛してるよ聖良。」
有無を言わさず唇を塞ぎ、否定の言葉を封じ込める。
「聖良…愛してる。俺のすべてを捧げるから。おまえのためなら命だってやるから。
頼む。俺の傍にいてくれ。俺だけを見て、俺だけを愛してくれ。俺にはおまえが必要なんだよ。」
唇の触れる距離を保ったまま、強く抱きしめて何度も愛していると繰り返す。
それが聖良を繋ぎ止めることのできる呪文のように。
それでも…
「やめて。先輩。こんなのイヤです。そんなことする先輩なんて大嫌い!これじゃ浦崎先輩と一緒じゃない。」
聞こえてきたのは悲しみに満ちた拒絶の悲鳴。
聖良の叫びにも悲鳴にも聞こえるその声に、体が雷を受けたように衝撃をうけた
理性が少しずつもどってくる。
一瞬、腕を緩めた俺から数歩後ずさるように部屋の隅に逃げ込んだ聖良は怯えたように俺を見つめていた。胸を無理やり開かれた事が明らかに分かる聖良の姿。
胸に、首筋に残された幾つもの痕。
あれが俺の想いの証しなのか。
何をやっているんだ俺は
傷ついた聖良を更に追い詰めて傷つけた
聖良を自分のものにしたかったのは聖良を愛していると思ったからなのに。
俺のした事はなんだ?自分の事しか考えていない身勝手な愛情の押し付けじゃないか。
冷静になればただ、欲望を満たすだけの力任せの行為でしかないじゃないか。
聖良が俺を受け入れる事など、できるはず無いんだ。
最低だ。
自分のした事に嫌悪を覚える
もう傷つけないってあの時誓ったのに…何をやっているんだ俺は。
ごめん…聖良
「ごめん。聖良…俺は…。」
「…忘れます。何も無かった。全部忘れます。」
涙に濡れた聖良の顔は、俺を見ることは無かった。
一瞬、喉を詰まらせて苦しげに言葉を吐き出す。
「聖良…。」
「もう忘れますから…先輩も忘れて下さい。」
自分に言い聞かせるように、繰り返す聖良。
こんなにも愛しいのに、何故傷つけてしまったのか
「…あたし、帰ります。」
「…聖良…。俺、おまえが好きだ。」
「……あたしは…。」
「別れるなんて言うな。」
聖良の瞳が揺らぐ。俺への想いが無くなった訳では無いと告げている
「俺には聖良が必要なんだ。絶対におまえを手放さない。別れるなんて認めないからな。」
それでも聖良は俺を見ようとしなかった。一言だけ告げると静かにドアを開けて出て行った。
「さようなら…佐々木先輩。」
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ああっ、もうお叱りの言葉が飛んでくるのが目に浮びます。ハイ、申し訳ありません。
柊花の教育不足で龍也の暴走に歯止めが利きませんでした。(T_T)
おまけに龍也には更なる不幸が襲います。まぁ、自分でタネを蒔いてしまうのですが(バカ)
まだ、続きを読んであげるよとおっしゃる方は、次のStepへどうぞ。