〜☆〜Christmas Special Step 9〜☆〜
あの日からもう1週間。
あたしは龍也先輩とずっと会っていない。
毎朝鏡の前で自分の姿を映すたびにあの時付けられた幾つもの痕を見つめる事が癖になってしまった。
首元を隠すように気を付けていたけれど、もうその必要も無くなりつつある。
あの日の痕は薄くなった幾つかを除いては既に消えている。
僅かに残る薄い痕も、消えるのは時間の問題で…それが寂しいと思ってしまうのはどうしてなんだろう。
痕が一つ消える度、先輩の心があたしから離れて消えてしまうように感じてしまうのは何故なんだろう
うちの学校は学年ごとに棟が違う。1年は東棟、2年は西棟、3年は南棟、先生方の教官室が北棟、実習室や特別教科室が別館になっている。
だからよほどの事が無い限り、1年生のあたしが2年生の先輩の教室のある西棟へ行くことは無い。
先輩があたしのいる1年生の東棟へくる事もまず無いだろう。
生徒会室のある別館へ足を向ける勇気はまだ湧いてこない。
だからと言って自分から連絡する事も出来ない。。
先輩からも連絡は無いし、あたしからも連絡していないんだから会えなくても当たり前なんだけど。
心が騒ぐ…。
ヤッパリ…会いたいと思う。
あんな事になっても、嫌いになんてなれない。
先輩は…あたしの事怒っているんじゃないかな。
『俺には聖良が必要なんだ。絶対におまえを手放さない。別れるなんて認めないからな。』
先輩の声を思い出して、胸がきゅんとなる。
あたしは龍也先輩だけが好きなのに…どうしてこんな事になってしまったのかな
別れるなんて認めないと先輩は言ったけど、あれから全く連絡が無いのはもう、あたしの事嫌いになっちゃったからかもしれない。
あたしがあんまり何も知らないコだから、失望したかもしれない。
スキだらけで他の男の人にキスされてしまうようなコを彼女にしているのがイヤになったかもしれない。
あの日……先輩に抵抗してしまった事を怒っているのかもしれない。
あの時の事を思い出して、ブルッと体が一瞬震えた。
こわかった。
龍也先輩が知らない別の人みたいで…すごくこわかった。
床に押付けられた背中が冷たくて、
耳元で聞こえる先輩の声が冷たくて、
あたしに触れる手も、唇も、その声さえもが冷たくて
先輩がまるで違う人みたいに冷たくて
こわくて、必死で逃げてしまった。
先輩を傷つけてしまったかもしれないけれど、あの時はその場にいてはいけない気がした。
ひとりになって冷静に考えなくちゃいけないと思った
だから、先輩をひとり置いて生徒会室を後にした。
どうしてだろう
あの時何故あんな風に言ったんだろう
無意識に先輩を傷つけようと思ってしまったんだろうか。
『さようなら。佐々木先輩』
佐々木先輩…なんて言ったら先輩が傷つくのはわかっていたのに……
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聖良。やっと冷静になれたみたいね。君の一言のせいで龍也の精神状態は大変な事になっているよ。
今更ながらに龍也の事が好きだと自分の中ではっきりとわかった聖良。良い方向に流れてくれればいいんですけどね。