Love Step

〜☆〜Christmas Special Step 13〜☆〜



聖良と会えなくなってもう2週間になる。

正直こんなに長引くとは思っていなかった。

素直になって謝ればいいのは分かっている。だけど、もし聖良に拒絶されたら…

男らしくないとは思うが、そう思うと携帯の発信ボタンを押す事も出来ない。

ただ一言、会って謝りたいと言って呼び出せばいいだけなのに…。



暁とも何となく気まずくて、ずっと話をしていない。
あいつにも謝らないといけないのだが、タイミングが悪くてなかなか二人になる事が出来ない。

暁が杏ちゃんを大切に思っている気持ちを誰よりも理解して応援してやっているつもりだったのに、暁を傷つけるような事を言ってしまった自分に腹が立ってしょうがない。



暁…ごめんな

たった一言そう言えばいいのに何故こうも何もかも上手くいかないんだろう。

大きく溜息をつき、ソファーに寝転ぶように横になる。

今日はもう、午後の授業はサボろうと決め込んで目を瞑った時、バンといきなり勢い良くドアが開いた。

あぁ…鍵、かけ忘れてた

驚いたのはいきなりドアが開いたせいだけではなかった。飛び込んできたのが暁だったからだ。暁も驚きながらも後ろ手に鍵をかけ、俺を正面から見つめている。

「…龍也…おまえか。」

「暁…おまえもサボりか?」



お互いに何も言わず暫し見つめ合う。

何を言うわけでもなかったが暁の心が手にとるようにわかった。

暁も俺に謝りたいと思っている…?
長い付き合いのせいか、波長が合うからか俺たちは見詰め合うだけで互いの考える事がピンとわかることが多い。

今もそうだ

深呼吸を一つすると、俺はまっすぐに暁を見つめた。

「暁…ごめんな。俺、自分が情けないよ。勝手な思い込みでおまえに嫉妬して、おまえを傷つけた。」

「イヤ。俺のほうこそ、悪かったな殴ったりして。」

「あ…あぁ、そう言えば殴られたんだっけな俺。」

「オイオイ、何ボケてるんだよ。プチアルツか?俺が殴ったせいだとか言うなよ。」

「おまえのせいなんかじゃねぇよ。はあ…。心のほうが痛くて体の痛みなんて感じなかったよ。」

「へぇ、詩人みたいな事言うじゃないか。他人に干渉するのが大嫌い。干渉されるのはもっと嫌いな龍也のセリフとは思えないね。」

「何だよ。人のこと感情の無いサイボーグみたいな言い方すんなよ。」

「似たようなものだったろう?聖良ちゃんに会うまではさ。」

龍也の言葉に胸が痛む……聖良…

「まだ謝ってないのか?」

「こわくて電話もできねぇよ。嫌いとか別れるとか言われたら俺、立ち直れねぇもん」

「結構意気地なしだな、龍也。」

「うるせぇ、ほっとけ。」

「ほっとけるかよ。おまえのその悲痛な顔みてるとこっちまで気分がブルーになるんだよ。」

「俺そんな悲痛な顔してるのか?」

「自分で鏡とか見てないのか?ひでぇ顔してるぜ。」

「…そっか…。俺の中で聖良の存在がこんなに大きくなってるなんてな、自分でもどうしていいかわからないんだよ。あいつを好きなのに、大切にしたいのに、一番酷い傷付け方をしてしまった。聖良に会う以前に顔を見る資格さえないと思う。」

「聖良ちゃんがおまえを嫌っているってどうして思うんだよ。聖良ちゃんもおまえに会いたいと思ってくれているんじゃないか。」

「いや。聖良から連絡の一つもないし…きっと俺の事嫌いになったんじゃないか。」

「それは無いだろう。聖良ちゃんすげぇ落ち込んでいるらしいぜ。おまえからの連絡を待ってるんじゃないか。」

「聖良が・・・?」

「行こうぜ。龍也」

「え…」

「聖良ちゃんに謝るんだよ。東棟に行くぞ。昼休みはまだ少しあるし、今なら捕まるだろう?」

「……。」

「ウジウジしてんじゃねぇよ。聖良ちゃんがおまえを待っていたらどうするんだよ?もしかしたら、おまえに振られるんじゃないかっておまえと同じ事考えてる事だって考えられるだろう?」

「そんなこと…」

「無いって言い切れるのか?」

「……。」

「来いよ。とにかく聖良ちゃんに会うんだ。おまえ、ぐずぐずしていると浦崎に聖良ちゃん盗られっちまうぞ。後悔していいのか。」



――――後悔していいのか―――



そうだな暁。俺は後悔はしたくないよ。
例え、聖良に振られる事になったとしても、俺のこの気持ちは本物だ。


聖良が好きだ・・・。


この気持ちだけはどうしても捨てられない。


「わかった。行こう。」




そのときだった―――



「美奈子先輩、鍵を持っているんですか?」



ドアの向こうから聞こえた聖良の声に一瞬心臓が止まりそうになる。



ドアの鍵を開ける音。


無意識に暁の腕を取り、入り口から死角になるロッカーの陰に隠れたのは、心の準備ができていなかったからかもしれない。

美奈子がドアを開けて入ってくる。後に続いて入ってきた聖良に惹きつけられるように視線が釘付けになった。


…聖良…会いたかった


俺の心が温かい何かに満たされていく。
こんなにも聖良が好きだ


聖良を手放すなんて…ヤッパリできそうにない。

何かを考え込むように部屋の中を見回す聖良を見つめてそう確信する。
たとえ聖良に嫌われていてもいい。それでも俺が好きなのは…。




――――――聖良!?




聖良が突然ポロポロと大粒の涙を流しで泣き出した。

「聖良ちゃん。泣いてるの?」

聖良を気遣う美奈子。本来ならその場所にいるべきなのは俺のはずなのに

「え…あ、あれ?本当だ。おかしいな。アハハッあたしったら、どうしちゃったんだろう。」

美奈子の腕の中で泣きじゃくる聖良の姿が痛々しくて抱きしめたくなる。

「聖良ちゃん、佐々木君のこと本当に好きなのね。」



…聖良…おまえは俺を想って泣いているのか



「あたし…龍也先輩が好き…。どうしていいか分からないの。美奈子先輩…あたしっ、どうしたらいいのかわからないの。」



―――!



俺は…なんてバカなんだ?聖良を傷つけた上こんなに苦しめて泣かせるなんて。

何を迷っていたんだろう

何を不安に感じていたんだろう

不安も、迷いも…聖良だって同じ気持ちでいたのに



ゴメン、聖良。

本当にごめん…。









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ようやく暁と仲直りできた龍也。何も言わなくてもどこかで互いを信頼しあっている男の友情って良いですよね。
そして、偶然聖良の気持ちを聞いた龍也。嬉しかったでしょうね。これでふたりはようやく仲直り…できるのでしょうか?