〜☆〜Christmas Special Step 14〜☆〜
龍也先輩と最後に会った日から随分時間が経った気がする。
もうどの位会っていないんだろう。
季節は晩秋から初冬へと季節の色を変え、ほんの僅かな間に校舎を彩る植樹たちもその葉をすべて風に散らして寒そうに冷たい風に身をさらしている。
ほんの僅かな間に、それでも確実に時間は流れ何かが変わっていっている。
あたしと、龍也先輩も…確実に何かが変わってきているように思う。
この間は美奈子先輩の胸で今まで胸に溜めていた不安を洗い流すように泣いてしまった。
きっかけになったのは生徒会室の龍也先輩の残り香だったけれど、それだけじゃない。
浦崎先輩と金森先輩のあの会話が、あたしの中で今までスッキリしなかったもやもやをクリアにしてくれた。
何もかもが仕組まれた事だった。
あたしと龍也先輩を別れさせる為の罠だった。
許せなかった。
あたしだけを傷つけるのならまだしも、龍也先輩をも傷つけた事が許せなかった。
胸の奥から言いようのない怒りが込み上げてくる。
酷いよ。許せない。
〜〜♪
美奈子先輩からのメールだ。
ああ、そうだ。今日は美奈子先輩と約束をしたんだっけ。
今日こそは美奈子先輩と伸び伸びになっている会計の最後の引継ぎをする事になっている。
生徒会に出ると龍也先輩に会えるだろう。それはそれで嬉しいと思う。
でも、会うのが怖いというのも本音だったりする。
龍也先輩からの連絡は相変わらず無くて、本当にもう嫌われてしまったのかもしれないという気持ちが日ごとに強くなっていく。
あたしから切り出した別れなのに、先輩にまだあたしを好きでいて欲しいと思っているなんて、何て我が侭な女なんだろう。
嫌われても仕方が無いかもしれない。
あの日以来あたしは呼び出しを受ける事がなくなった。
何度も呼び出しを受けて『本当に付き合っているの?』と聞かれた頃は胸が痛かったけど、あの日から呼び出しが一度も無いのは、学内の誰もがあたしたちがギクシャクしているのを知っているからなのかもしれない。
いつも思っていた。あたしは龍也先輩とは不釣合いなんだろうなって。
だから、いつか先輩があたしに飽きて気持ちが離れる事もあるかもしれないとは思っていた。
でも…
自分のそんな理性の声とは裏腹に、胸の奥からこみ上げてて来る激しい想いがあたしを捕らえて離さない。
龍也先輩が好き。誰よりも大好き。
こんなにもこんなにも想いが溢れる。
苦しいほどに切ないのに…それでも、心の奥底があったかくて、何もかもが愛しいと思う。
この気持ちが恋で無かったら何なんだろう。
浦崎先輩はあたしが龍也先輩に本気じゃないって言ったけれど、この気持ちが本気で好きじゃないって言うんだったら、本当の好きってどんな気持ちなのかあたしにはわからない。
ただ一つはっきりとわかるあたしの気持ち…
龍也先輩が大好き…
龍也先輩に会いたい。
一目チラッと見るだけでもいい
でも、会うのが怖い
怖くてどうしても携帯の発信ボタンを押す事も、生徒会室に足を向けることも出来ないでいるあたしって、何て臆病者なんだろう。
美奈子先輩から、最後の引継ぎをしたいから週明けの月曜日こそ絶対に来るようにってこの間約束させられなければ、今日も生徒会室に足を向ける事は無かったと思う。
行かなくちゃと思う心のどこかに少しでも龍也先輩の姿を見ることが出来るかもと期待している自分がいる。
いつまでもこのままで良い訳無いってわかっている。
もし、今日会うことが出来たらきちんと話そう。
先輩があたしを嫌いになっていてもいい。
それでもあたしが好きなのは優しい笑顔の龍也先輩だけだから。
あたしの気持ちをちゃんと伝えよう。
龍也先輩を誰よりも大好きですって。
もう二度と、先輩に好きって言う事も無いかもしれないから…。
今日が最後かもしれないから…。
BACK /
NEXT
ずっと連絡をくれない龍也の気持ちに不安を抱き続ける聖良。ようやく自分の中に気持ちを告げる決心をしたようです。龍也は…どう動くつもりなんでしょう?次は龍也も気持ちです。