〜☆〜Christmas Special Step 19〜☆〜
あの事件から聖良はずっと学校を休んでいる。
傷がひどかった事もあったが精神的に参っているのが一番の原因らしい。
聖良のお母さんからも今はそっとしておいて欲しいと言われ、俺も渋々ながらそれに従った。
あの日から、俺はずっと聖良に会っていない。彼女の傷の様子すらもわからない。
メールを送っても返事が無いのは多分携帯も切ったままなんだろう。お母さんに取り上げられているのかもしれない。
聖良の親友の霜山亜希がウィーンに出発する前に聖良に会ったと聞いたが、他の誰もが彼女に会うどころか電話さえも繋いでもらえないらしい。
霜山が出発前に俺にくれた電話では、聖良は俺が思っている以上に元気だという事だった。
聖良は俺に心配をかけまいと、本当の事は言っていないだろう。
本当に元気なら聖良のことだ、すぐに何らかの形で連絡をしてくるだろう。
多分俺が毎日メールを送っているだろうと言う事くらいは聖良ならとっくに気付いているだろうから。
霜山を問い詰めた所、彼女は渋々聖良がまだ夜には悪夢を見てうなされたりしていると教えてくれた。
そんなに精神的なショックが酷かったのかと心配で仕方がない。
美奈子が昨日自宅まで挨拶に行ったがやはり玄関で帰されたと言っていた。
学校関係者に会う事で聖良が色々思い出したり治療に差し支える事を心配しているらしい
聖良を支えてやりたいのに、俺には何の力も無くてただ待つ事しかできない。
それが悔しくて返事がないのを知りつつも、毎日飽きもせずにメールを送り続けている俺ってしつこいかな?
でも、何もせずにはいられないんだ。
聖良は独りで苦しんでいる時に支えてやれなくて、本当に聖良を好きなんて言えないじゃないか。
何もできなくても、少しでも傍にいてやりたいんだ。
学校が終わったら毎日聖良の家の前まで行き聖良の好きなトルコ桔梗とカスミソウの花束を玄関先に置く。
それから迷惑にならないよう近所の公園から聖良の部屋の窓をただひたすら見つめ続ける。
俺ってもしかしてストーカー?
でも、少しでも一目でもいい。部屋の中を歩く影でもいい。
聖良が元気になったとわかるだけでいい。
ほんの一瞬の可能性に賭けたいと毎日聖良の家に通いだして今日でちょうど一週間。
未だに、ほんのチラリとも姿を見ることもできない。
聖良は…元気になったんだろうか。
傷は…どうなったんだろうか
聖良、おまえは俺の事を少しは思い出してくれているんだろうか…。
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玄関に飾ってあるトルコ桔梗がまた増えている。
ママがあたしが元気になるようにって飾ってくれているみたいなんだけど…変なのよね。
何故か毎日1本ずつ増えている。カスミソウも少しずつボリュームが出ているし…。
何だろう、この感じ…。
何かとても大切な事を見落としているような気がするんだけど…。
ふっと龍也先輩のことが胸を過る。
まさかね。
そんなはず無いよね。だって…もしも毎日来ているならママだって教えてくれる筈だよね。
でも…まさか…ね?
突然降ってきたように湧き上がってきた言いようの無い感情に突き動かされるようにママを呼ぶ。驚いたようにキッチンから出てくるママに噛み付かんばかりの勢いで花の事を問い詰める。
単なる偶然かもしれない。でも僅かな可能性が欲しかった。
ママはあたしの表情を見て、観念したように白状した。
龍也先輩が学校を休んだ最初の日にトルコ桔梗の花束を持って会いに来た事。
落ち着くまでは連絡を取らないで欲しいと言った事。
そして、それから毎日花束が玄関先に届けられるようになった事。
確信した…これは龍也先輩だ。龍也先輩が毎日あたしに会いに来てくれていたんだ。
会えないのを知っていて、それでも毎日来てくれていたんだ。
涙が溢れて止まらない。
じっと何てしていられなかった
外へ飛び出した途端、吹き込んでくる12月の冷たい風、でも寒さなんて感じなかった。
玄関ドアを開けた足元に目が釘付けになってしまったから。
龍也先輩が来てくれたという確かな証しのトルコ桔梗の花束をそこに見つけてしまったから。
拾い上げるとまだ、少し温かいような気がしてふわりと抱きしめてみる。
龍也先輩のコロンの香りが風に煽られてかすかに香った。
先輩がここにいたんだ。そう思っただけで涙がどんどん流れ落ちてくる。
会いたい…。会いたいよ。龍也先輩
こんなにもあなたが好きなの。
あなたの腕の中に帰りたいの
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龍也、健気ですね。冬の公園で何時間も聖良の部屋を見つめ続けるなんて…やっぱりストーカー?(爆)
聖良は龍也が毎日会いに来ている事を知って龍也の想いをほぼ確信したようです。
それでも言葉がないと相変わらず不安なようですが…。