Love Step

〜☆〜Christmas Special Step 20〜☆〜



クリスマス・イヴまで残すところ、あと3日。

校内もクリスマスで浮かれているのと冬休みが間近な事もあり妙にざわざわと浮ついている。

誰が誰と過ごすだとか、プレゼントがどうとか、誰とデートするとか……あぁうぜぇ。

あんまり周囲の会話が耳障りだったから、登校早々生徒会室に逃げ込んでしまった。

ソファーに寝転び聖良の事を想う。

聖良は、もう2学期中は学校に来ないだろうな。
怪我の具合はどうなんだろう。
このまま俺たちは3学期までずっと会えないんだろうか。

できれば恋人として最初のクリスマスを一緒に過ごしたかったが、今年はムリなのかもしれない。

来年はあるのか?

そう自分に問いかけて苦笑する。
聖良が嫌がっても俺は彼女を手放せそうに無いと自分で確信してしまったから。
俺たちはまだ、辛うじて恋人として繋がっている。

聖良にクリスマスのプレゼントを用意したけれど…これも渡せるかどうか怪しいところだ。

なんせ、この状況だ。
会う事すら思うようにならない俺たちは、気持ちを確かめ合う事すらできない。
いや、正確には俺が聖良に気持ちを伝える事ができないと言うほうが正しいだろう。

俺はこの間聖良の気持ちを偶然にも聞いてしまった。美奈子に言わせれば盗み聞きとか言う話だがそれは誤解だ。
俺は聞こうと思って聞いたわけじゃない。

だが、結果的には俺は聖良の気持ちを確信し不安が解消され心が軽くなった。聖良が俺をまだ好きでいてくれるという事実が今の俺を支えてくれているのは間違いない。
あの時聖良の気持ちを聞いていなかったら…俺は今も不安でこんなに冷静ではいられなかったと思う。

でも、聖良はまだ俺の気持ちが変わってしまったんじゃないかと不安を抱えたままだ。
何とか気持ちを伝えたいのに、何故かタイミングが悪くて上手くいかない。

あの事件さえなければ…聖良が怪我をしなければ…今ごろ二人でクリスマスの予定でも立てていたのかもしれないと思うと苛立ちが募るばかりだ。

あの日生徒会室で偶然聖良の気持ちを聞くまで、彼女が俺の気持ちに対して不安を感じているなんて思ってもみなかった。
強引なくらいに気持ちを伝えてきた筈なのに何故彼女が俺の気持ちに不安を感じるのかわからない。
むしろ俺のほうがずっと不安だと思っていたのに…。

俺たちは同じ気持ちでいたんだと思うと何故もっと早くに気付いてやれなかったのかと自分に腹が立つ。

保健室まで運んだ時のおまえは余りにも蒼白で軽かった。
まるで人形を抱いているようで…心が寒くなる思いだったよ。
あんなおまえを見るのはもう沢山だ。


聖良…温かくて柔らかいおまえをこの腕にもう一度抱きたいよ。


もう誰にも、聖良を傷つけさせたりはしない。

俺が護ってやるから…

帰って来い聖良…。






バン!




突然開かれた生徒会室のドア


暁が血相を変えて入ってきた。


「何だ?暁。おまえもサボりか?」

そう笑って言ってから、この間も同じような事があったなと思い出す。

「ばか!何呑気なこと言ってるんだよ?聖良ちゃんが学校に来たんだよ。さっき俺たちのクラスにおまえを訪ねてきていた。」

暁の言っている事が耳に入ってから脳に到達して理解をするまで、普段の俺の3倍は時間を要していたと思う。

「聖良が…学校に来た?俺のクラスに…って、まてよ。まさか、それじゃあ…。」

「そう、浦崎も金森も教室にいた。それが彼女の精神状態を不安定にするんじゃないかと心配なんだ。」

暁の言葉に胸が痛い。やっと学校に来れるようになった聖良をまた深く傷つけたんじゃないかと思うと苦しくなる。

「こんな時に何だっておまえ携帯の電源切ってあるんだよ。何度もかけたんだぞ?」

「…忘れてた。充電すんの。」

聖良と連絡が取れないから、充電することさえ忘れていた。今更ながら俺の世界って聖良中心に動いているんだと苦笑してしまう。

「ボケてる場合じゃねぇだろ?今、聖良ちゃんを支えてやらないでいつ支えになるつもりだよ。今は響がついている。多分もうすぐここへ連れてくるはずだ。ただ…」

暁の言いたい事はわかった。あの廊下を聖良は通れないかもしれないと言う事だ。

最初の事件の後、身体が震えて美奈子が支えないと歩けないほどのだった聖良。

それ以上の精神的ショックを受けている彼女があの廊下を渡ってこの生徒会室まで来れるとは思えない。
ほんの少し前、俺のクラスで浦崎と金森を見たのなら尚更だ。


行かないと…聖良を迎えに行かないといけない。

考えると同時に身体は動いていた。

「暁。俺、聖良を迎えに行って来る。」

暁はニヤッと笑うとドアの前から身体をずらし俺が通れるよう開けてくれた。

暁の脇をすり抜ける瞬間、勢い良くパン!と背中を叩かれる。
鋭い痛みが背中をビリビリと駆け抜け、勢いで前のめりになった。痛いやり方だが、これが俺たち3人の子どもの頃から互いに送ってきたエールだ

暁が心から心配して、応援してくれているのを感じて勇気が湧いてくる。
俺には背中を押してくれる最高の親友が二人もいるんだ。

「龍也がんばれ。必ず聖良ちゃんを連れて来いよ。」

「いてぇな。わかってるよ。」

素直にありがとうとは言わないけれど、暁には全部分かっているはずだ。

「必ず連れてくる。聖良にはもう一度俺の隣で笑ってもらうさ。」

ニッと笑って廊下を駆け出していく。



―― 聖良、待ってろ。今行くから…。











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龍也に会いたくて学校に来た聖良。勇気を出して龍也のクラスまで行ったのにすれ違ってしまったようです。
龍也って本当に聖良中心に世界が回っているんですよね。聖良から連絡が無ければ携帯の電源さえ切れていても気にならないんです(笑) 聖良を迎えに行った龍也。今度こそふたりは想いを打ち明けられるのかな?