〜☆〜Christmas Special Step 21〜☆〜
響先輩の後に続いて生徒会室へと向かう。
ゆっくりと歩いてくれている響先輩の心遣いがとても嬉しい。
この人が亜希の好きだった人なんだ。
亜希はずっと響先輩のこと好きだったんだよね。
本当に…憧れみたいな存在だったけれど、亜希は響先輩に恋してた。
亜希が片想いをしている様子をずっと傍で見てて、いつか龍也先輩と響先輩と4人でダブルデートが出来たらいいねって言っていた。
いつか亜希の恋が実れば良いって願っていたのに…。
ウィーンへ留学を決めたのは、大切な夢を叶える為だってわかっているけれど、響先輩への想いが彼女の決断を鈍らせていた事もあたしは知っている。
亜希はその想いを振り切って夢へと踏み出した。
でも…知らなかった…。
響先輩も…亜希の事が好きだったなんて…。
どうしてもっと早く…留学を決める前に先輩の気持ちを知ることが出来なかったんだろう。
ふたりは想い合っていたのに…なんて切ないんだろう。
どうして恋って『好き』という気持ちだけではダメなのかな。
亜希と響先輩の切ない恋に比べたら、あたしのしていることって何て贅沢なんだろう。
あたしは龍也先輩が好きで…傍にいられれば、ただそれだけで幸せだったのに…。
あたしの想いは龍也先輩がちゃんと受け止めてくれていて、あんなに大事にされていたのに。
あたし、バカだね。
何を見失っていたんだろう。
誰が何を言っても、先輩に相応しくないっていわれても、この気持ちを偽る事なんてできる筈がなかったのに…。
『どうしてあなたなの?』
その質問の答えは最初から決まっていたってやっと気が付いた。
今なら胸を張って言い返せる。
「他の誰が龍也先輩を好きになっても、その何倍もあたしのほうが龍也先輩を愛しているからよ。」って
あたしは龍也先輩が好き。誰にも渡したくない。
先輩の隣りで笑っているのは…ずっとあたしでいたいの。
彼だけは、誰にも譲れない。あたしにとって、とても大切な男性(ひと)なの。
響先輩の歩みが不意に遅くなった。急に距離が縮まって思わずぶつかりそうになる。
驚いて見上げると響先輩は、眉を潜め不機嫌そうに廊下の先を見ていた。
龍也先輩もそうだけど、この3人はビケトリ(美形トリオ)と言われるだけあって本当に顔が整っている。
短い金髪にグレーの瞳の響先輩が機嫌の悪い顔をしているだけで、その場が凍りつくほどの緊張感が走る。
綺麗な顔している人が怒ると、本当に怖いんだよね。
そう思っていると、響先輩があたしを庇うように前に立ちはだかった。
まるであたしを何かから護るように。
そう、あたしの視界をさえぎるように
響先輩に気を取られていたからすぐにはわからなかった。
廊下の先に浦崎先輩と金森先輩があたしたちを見つめていた事に…。
まだ、あたしの心の傷は血を流している状態だった…。
響先輩があたしを庇ってくれても、襲ってくる恐怖までは防げなかった。
身体が震え出して、目の前が歪み始める。
急激な不安に襲われて呼吸が荒くなる。
心臓が耳障りなくらいバクバクと鳴って激しい目眩と嘔吐が襲ってくる。
こわい…。
いや…。
助けて…
助けて…龍也先輩…。
「聖良!俺を見ろ。しっかりするんだ。」
突然、廊下に響きわたった声。
あたしの…大好きな人の声
あたしの心をただ一人穏やかに静めてくれる人の声。
震える身体を叱咤し、ゆっくりと顔をあげて声のする方向を見つめる。
「龍也…先輩。」
フラフラと龍也先輩へと足を踏み出し両手を伸ばし歩き出す。
急いで近付いて来てくれる先輩の姿が涙で滲んで見えなくなる。
お願い涙…先輩の姿を消さないで。
会いたかったの…龍也先輩に会いたかったの。
もう少し見つめさせて。
まだ、流れないで。先輩を消さないで。
頬を涙が伝った時、手を伸ばせば届く所に龍也先輩は微笑んで立っていた。
「聖良…おいで。」
静かに両腕を広げてあたしの納まる場所を作ってくれる。
広い胸に吸い寄せられるようにその腕に手を伸ばす。
同時に逞しい腕にしっかりと抱き寄せられた。
全身を安堵感が包み込む。先輩の優しさが流れ込んできて傷ついた心を包んでくれる。
温かい胸に顔を埋めるとそれまでの震えや恐怖が一気に消えていった。
縋るように先輩の背中に腕を回してしっかりと抱きしめる。
あたし、やっとこの腕の中に帰ってきたのね。
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やっと心が通じ合ったね。おめでとうvv龍也かっこいいよ(*/∇\*)惚れちゃう(コラ)
まだ心の傷が癒えない聖良。パニックになった聖良を現実に引き戻すなんて龍也の一言は凄い特効薬だね。聖良の心の治療には彼が不可欠のようですね。
長いドロドロジレジレを乗り越えてやっと二人は会う事が出来ました。もう痛いのも乱暴なのもありません。
ひたすらラブラブで行きますので最後までお楽しみいただけると嬉しいです。