Love Step

〜☆〜Christmas Special Step 22〜☆〜



廊下の先に人影を見つけたとき、嫌な予感がしたんだ。


そこに、浦崎と金森が立っていた。

あいつら…今度は一体何を考えているんだ?

このふたりがここにいると言う事は聖良はまず、この廊下を通れないだろう。

どうする?どうせこいつらには話をつけるつもりだったんだ。
いい機会だと言えばそうなんだが…。



思考をめぐらせている間に、廊下の向うに響の姿が見えた。少し後ろを聖良が歩いてくる。




―― 聖良…会いたかった




右手の包帯の白と左手の無数の絆創膏が痛々しい。

響が聖良を庇うように浦崎達の視線から聖良を護っている。だが聖良の様子は明らかにおかしかった。


ガタガタと震えだし顔色も真っ青になっている。
気分が悪いのか口元を抑えて身体をくの字に曲げるようにしてふらつき始めた。



まずい…。パニックの発作だ。



無意識に叫んでいた。



「聖良!俺を見ろ。しっかりするんだ。」




その声に反応して聖良が顔を上げる。

俺と目が合った瞬間、聖良の瞳から涙が溢れ出した。




何も言わなくてもわかる。聖良がどんなに俺に会いたいと思っていてくれたか…。


小さな声で俺を呼びキズだらけの両手を差し伸べフラフラとよろけながら、それでも一歩ずつ俺の元へ歩いてくる。


一秒でも早く抱きしめたくて聖良の元へ駆け出していた。

涙で潤んだ聖良まであと数歩の所で立ち止まり、差し伸ばす聖良の手を受け入れるようにゆっくりと両手を開いた。
会えなかった間に積もり積もった愛しさが伝わるようにと、精一杯の想いを込めて微笑んでみせる




「聖良…おいで。」




その声に導かれ俺の腕に倒れこむように抱きついてくる聖良。


あの冷たい人形のような身体ではなく、今度こそ温かく柔らかい本来の聖良だった。
安堵するように溜息を付き俺に全身を預けてくると、徐々に身体の震えがおさまっていくのがわかる。

縋るように俺に回された手に力が入ると聖良がやっと俺の元に返ってきたのだと実感できた。


聖良…お帰り。やっと俺の元に帰って来たんだな









そっと涙を拭ってやり、しっかり聖良を抱いたまま冷たい視線を浦崎と金森に向ける。
こいつらは一体何をするつもりだったんだろう。
これ以上聖良を傷つけるような事があったら、俺はこいつらに何をするかわからない。

冷静でいられる自身なんて無かった。

そんな俺に気付いてか、先に口を開いたのは響だった。

「浦崎、金森。一体どういうつもりでここにいるんだ?おまえ達まさか、また何か企んでいるんじゃないだろうな。」

響の質問に先に口を開いたのは金森だった。

「違うわ。私…蓮見さんに謝りたくて。ごめんなさい、こんな酷い怪我までさせるつもりは無かったのよ。」

金森の言葉に一瞬自分の耳がおかしくなったのかと思った。響きも同じような表情で俺を見つめている。
金森が…謝る?聖良に…?

「ゴメンな、聖良。俺…聖良があそこまですると思わなかった。
ここまで拒絶されるとさすがに凹んだよ。嫌われるのはしょうがないかも知れないけど、俺は本当に聖良が好きだったんだ。この気持ちは本当だから…。」


金森に続き、追い討ちをかけるような浦崎の言葉にも思わず言葉を無くしてしまうくらい驚いた。こいつがこんなに素直に自分の気持ちを吐き出すなんて思わなかった。

「正直言うと、俺には堕とせない女なんていないと思っていたよ。聖良が初めてだ。」

一体どうしちまったんだ、こいつらは。
俺の表情を読んだのか浦崎は苦笑しながら俺を見て言った。

「悔しいけどさ、聖良は俺が始めて本気で好きになった女だからな。幸せになってもらいたいんだ 聖良が佐々木をそこまで好きなんだったら俺はお前たちを祝福する。
佐々木に渡すのはしゃくだが聖良がそれを望むならしょうがないからな。」

「浦崎…。」

「佐々木君。私あなたが好きだったけど、もっと好きな人が出来たの。」

金森の瞳が妙にキラキラしているのが何故か嫌な予感を煽る。

「へぇ…そりゃおめでとう。」

「今度は佐々木君がライバルね?」

「へ…?」

「私が好きなのは聖良ちゃんなの。もうスッゴク気に入っちゃった。こんなに芯の強い娘だとは思わなかった。今まで、佐々木君に相応しい娘がいたら諦めようと思ってきたけれど、聖良ちゃん程佐々木君に相応しい女の子はいないってわかったの。それどころか佐々木君が聖良ちゃんに相応しくなってもらわなくちゃ困るって思うのよ。」


……って、待て。金森までが聖良に惚れたって言うのか?

「佐々木君が聖良ちゃんを泣かしたりしたら、私が許さないからね。淳也と私がお目付け役だと思って聖良ちゃんを大事にすんのよ。」

勘弁してくれよ。美奈子がもう1人増えたじゃねぇか。


俺の腕の中の聖良はあっけに取られた様子で浦崎と金森を見ている。

少しは落ち着いたのか俺の顔を見上げ困った様な瞳で問い掛けてくる。

この視線は「許してあげてもいい?」って所かな。

小さく溜息を付きながら思わず苦笑する。
ホントに純粋だよな。あんなに苦しい思いをさせられても、こんな風にふたりが謝ってくるとアッサリと許そうとしてしまうんだから。

「聖良はどうしたい?」

俺は聖良に問いかける。聞かなくても答えなんてわかっているんだけどさ。

「あたしは…ふたりを許してあげたい。」

ほらね。そう言うだろうと思っていたよ。
苦笑する俺を見て聖良は「ダメ?」と上目づかいで問い掛けてくる。

それって俺がダメって言えない事わかっててやってるだろ?聖良。
可愛すぎるって。
暫くそんな顔を間近で見ていなかったからな。
ちょっと刺激が強すぎたみたいだ。やたらとバクバク心臓が騒ぎ出してきやがった。
聖良に聞こえなきゃ良いけど…。

聖良の無意識って本当にこわいよな。
また、理性が吹っ飛んだらどうするんだよ

愛しさを込めてギュっと抱きしめて、耳元で優しく囁いてやる。


「いいよ。その代わり絶対にこいつらと二人きりにはならないって約束してくれよな?」

俺の言葉に一瞬キョトンとした顔をして、それからクスクスと笑い出す聖良。

この笑顔を見るのは随分久しぶりだ。


心が癒されるような笑顔。


この笑顔を一生護りたい。


心からそう思った。







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聖良、優しいね。あんな目にあったのに許しちゃうなんて…。この優しさと純粋さにみんなが惹かれるのね
聖良に惚れてしまった浦崎淳也と金森愛子が龍也の新たなお目付け役になるのは決定事項です(笑)
龍也には新たな難題が山積のようです(爆)悩んで苦しんだ二人でしたが、次回からひたすらラブラブのバカップルに逆戻りです(*/∇\*)うひゃ〜vv
最後までお楽しみいただけると嬉しいです。