〜☆〜Christmas Special Step 23〜☆〜
結局…
浦崎と金森には、まだ精神的に不安定な聖良に必要以上に関わらない事を同意させ、最終的には聖良の意思で許してやる事になった。
甘いって?俺もそう思うよ。
でも、それが聖良の望んだ事だから俺にはそれ以上言えなかった。
ほんっと、俺って聖良に弱いんだよな。
彼女は俺の最大の強みであり弱点でもあると思う。
聖良のためならどこまでも強くなれる自分は誇らしく思うが、聖良の笑顔には簡単にKOされてしまうんだから情けないよな。
美奈子に加えて金森というお目付け役が増えた。
しかも浦崎までもが聖良を泣かせたら承知しないと俺を見張っている形になってしまった。
更なる心配のタネを拾ってしまった気がするのは俺だけだろうか。
なんだかこの先が思いやられる気さえする。
聖良の心のキズはまだ完全に癒えた訳ではないが、ほんの少しだけ心の余裕が出来たのか、生徒会室に戻り、先程の出来事を暁に説明している間もパニックを起こしたりせずに冷静に話を聞いていた。
自惚れるわけではないけれど、聖良の心のキズを癒す事が出来るのは俺だけだと思う。
発作が起こった聖良を抱きしめた時、聖良の身体から震えが遠ざかって落ち着いていくのを感じた。
俺の腕の中で聖良が安心できるなら、きっと彼女のキズは俺が癒してやれるはずだ。
相変わらず俺に縋りついたままで離れる事も出来ないような状態の聖良の顔を覗き込むようにして様子を伺う。
「聖良…こわかっただろう?もう落ち着いたか。」
「ハイ。多分…もう大丈夫だと思います。」
強がって俺の腕の中からそっと離れようとする聖良の腕を引き、再び胸の中へと閉じ込める。
もうどこへもやらないと、二度と離れないようにとギュッと柔らかい身体を抱きしめて耳元で優しく囁いた。
「もう、離さないから。」
「…っ、先輩?」
「聖良…会いたかった。聖良に会いたくておかしくなりそうだった。聖良は…俺に会いたくなかった?」
本当は、さっき廊下で抱きしめた時から聖良の気持ちはわかっている。
でも、聖良の口から直接言葉として聞きたかった。
「そんな事…ないです。あたし…会いたかった。」
今にも消え入りそうな呟くような小さな声。
聖良の切ない思いが俺の心に流れ込んでくるようだった。
聖良がどんなに心細かったかが手に取るように伝わってくる。
聖良…本当にゴメン…
不安にさせてゴメン
淋しい思いをさせてゴメン
護りきれなくてごめん
痛い思いをさせてゴメン
その白い肌に一生残る傷を残してしまって…本当にゴメン。
暁と響がその場にいる事は、とっくに頭から飛んでいた。
聖良の手を取って絆創膏だらけの指にそっと唇を這わす。手の平に指にそっと唇で触れ、想いを込めて白い包帯の上にもキスを落としていく。
この痛みを俺が全部代わってやれたらいいのに。
「痛かったよな。ごめんな…。俺、聖良を護りきれなかった。こんなに綺麗な肌に一生残る傷をつけてしまって…本当にごめん。」
「ううん、あたしにこうして触れていいのは龍也先輩だけだから…。このキズはあたしの勲章なの。龍也先輩以外の人から自分を護れたっていう証しだから。」
健気に微笑んでみせる聖良が愛しくてたまらない。
こんなに真っ直ぐに俺を見てくれている聖良の気持ちを、一瞬でも疑っていたんだと思うと恥ずかしくなった。
詫びるようにそっと聖良の髪に頬を寄せて瞳を閉じると、甘い花の様な香りがふわりと俺を包んで心を癒してくれる。
まるで俺の心を悟って許してくれているみたいだ。
まだ、もう一つ謝らなくちゃいけないことがある。それを片付けなければ俺達は元のふたりに戻ったとは言えない。
小さく息を吸い込んで一瞬だけ息を止める。その息を吐き出すのと同時に心の中を曝(さら)け出す様
に口を開いた。
「ゴメン、聖良…。俺さ浦崎の言ったこと気にしていたんだ。聖良は俺に無理やり彼女にされたってアレをさ。前に嫉妬でキレた時にもう傷つけないって約束したのに…また同じような事…って言うか、あれより酷いことしてさ。俺ってサイテ―だよな。」
聖良が俺の胸に顔を埋めたままプルプルと頭を振って答えてくる。
その様子に安堵して、心の重荷を下ろすように大きく一つ溜息を付いた。
「乱暴なことして…傷つけてごめんな。聖良…好きだよ。俺の事許してくれるか?」
涙が溢れ出した聖良は声もでない様子でしゃくりあげながらコクコクと頷いている。
聖良の抱えていた不安が伝わってきて胸が痛くなるような切なさが押し寄せてくる。
「俺、今度の事でわかったんだ、聖良が誰よりも大切だって。おまえを失ったらどうしようって不安で不安で仕方が無かった。」
そっと聖良の頬に手を伸ばし唇を寄せると涙を吸い取り、その綺麗な瞳を見つめる。
「ゴメン…本当に。こんな俺だけど、これからも傍にいてくれないか?
付き合いだしたときは強引に迫った形になったけれど…。でも、この気持ちは誰にも負けない。
だから、もう一度おまえに申し込むよ。」
――― 俺はこの時たぶん今までで一番優しく微笑んだんじゃないかと思う。
「蓮見聖良さん。君の事が誰よりも好きです。…俺と付き合ってもらえますか?」
『好きだ』何て言葉じゃ足りない。
…この想いを伝える言葉なんてこの世にあるんだろうか。
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ええっと、龍也君?お友達の存在を忘れていませんか?暁と響はこの時どんな顔していたんでしょうね?
でもって!!きゃ〜☆龍也、再告白っ!!やったねっvv聖良の答えは…?言わなくてもわかるよね(笑)
結果を知りたいあなたはすぐに次のStepへどうぞ。