〜☆〜Christmas Special Step 26〜☆〜
…キーンコーン……♪
予鈴がどこかで小さく鳴っている。まるでこの部屋だけ違う世界のようにあたしたちの声以外の音が遠くに聞こえる。
「先輩。授業、始まりますよ。」
「聖良は行って欲しいの?俺はサボってこのまま聖良といたいんだけど。」
「行かなくてもいいんですか?」
「今日はサボリ。今は聖良と離れたくない。聖良は俺といたくないの?」
「…いたいですけど…。」
「だったら、このまま黙って、ね?今まで会えなかった分を取り戻すからさ。」
妖艶っていう位色っぽい綺麗な顔で微笑む龍也先輩に、そんな風にお願いされて抵抗できる女の子がこの世にいるのならお目にかかりたいですよ。
その笑顔は毒です。…誰だってイチコロだと思いますよ。
「まだキスが足りないみたいだから」
そう言って重ねられる唇。 先輩、本当に授業に出ないつもりなのかな
「まさか、放課後までずっとこのまま離さないつもりなんですか?」
話している間も離れないように唇を追いかけてくる龍也先輩に、一抹の不安を覚えて恐る恐る聞いてみる。まだ、1時間目が始まったばかりなのに放課後までこのままずっとキスしていたら唇が腫れちゃう気がする。
間抜けな事を考えているのかもしれないけれど、龍也先輩ならありえる気がしてきた。
「できれば…離したくない。ずっとこうして聖良を抱いていたい。」
「放課後までですか?」
「いや。一生…。俺の一生をかけて聖良の人生を丸ごと抱きしめていたいよ。」
「…っ、龍也先輩?」
「まるでプロポーズみたいだな。何言ってるんだろう俺。」
「うん…ビックリしちゃうじゃないですか。この年でプロポーズなんて…。」
「おかしいかな?俺はずっと聖良と生きていきたいけどな。今すぐプロポーズはもちろん無理だってわかっているけど、いずれ…。な?」
「龍也先輩…。」
龍也先輩があたしを抱きしめる腕に力をこめた。ギュッと締め付けられるように胸が切なくなったのは先輩の言葉のせいだったのかな。それとも腕の力強さだったのかな。
「これからたくさんの時間を一緒に過ごして、思い出をいっぱい作ろうな?俺の隣りにはいつだって笑顔の聖良にいて欲しいんだ。」
「…はい。約束します。いつだって先輩の傍にいます。たくさん思い出を作って心の中にたくさんの先輩を閉じ込めておきたいの。あたし、ずっと先輩と一緒に歩いていきたい。」
先輩の胸に頬を寄せてぬくもりを感じるようにして瞳を閉じる。
優しく髪を弄ってくれるこの指が大好き。
静かに髪を剥きながら髪に唇を寄せるのを感じる。暖かい息が掛かってその部分からゾクッと痺れが走った。
この感覚も何だか久しぶりだと感じてしまう。
まだ、恥ずかしいけれど、それでももっと感じていたいと思っている自分を否定する事も出来ない。
心も身体も少しずつ先輩を受け入れる準備を整え始めているのを感じ始めている。
「俺達デートってしたこと無いだろ?普通のカップルみたいに外で会ったりしてみないか?もうすぐクリスマスだしさ。…今日何日か知ってるか?」
先輩があたしの髪を弄りながら聞いてきた。先輩が聞きたい事はすぐにわかった。あたしもすごく気になっていた事だったから。
「はい、クリスマス・イヴまで…後3日ですね。」
「聖良、クリスマスは…俺と一緒に過ごせる?まだ外出はムリかな。」
そう言って頬に落とされるキス…。やっぱり放課後までこの調子なのかも知れないと確信しつつある。
「外出は多分いいと思うけど…先輩と一緒に過ごせるんですか?」
あたしの言葉にに先輩はすごく嬉しそうにニッコリと微笑んだ。すごく綺麗なんだけど同時にゾクッと何か背筋を走るものを感じる。
…この微笑みは悪戯とか何か企みのあるときの表情なんだよね。ほんの少しこわくなりつつも、先輩の次の言葉を待つ。
「クリスマスは出来れば外泊できないか?一晩中聖良を抱いていたいんだけど…だめかな?」
頬に額にキスの雨を降らせる合間に囁かれる甘い質問に思わず頷きそうになる。
ちょっと待って?…えっと、それはどういう意味でしょうか?
ただ抱きしめるだけって事?それなら今もしているよね。
心臓がドキドキして止まらない。
多分…やっぱりそう言う事なのかな?
いつか…とは思うけれど、そんな風に言われるとやっぱり動揺を隠せない。
どぎまぎしながら言葉を探していると、更にあたしを追い詰めるように『ダメ?』と聞いてくる。
ずるいよ。龍也先輩の子どもみたいな綺麗な瞳にその綺麗な顔で言われたら、誰だって簡単に堕ちちゃうでしょう?
あたしが困っているを楽しんでいるような先輩の表情(かお)。
何だか悔しいな。いつもいつもこうして先輩の手の平の上で遊ばれているみたいで。
たまには先輩も困ってみて欲しいな。
少しイジワルな答え方をしたくなって思い切って先輩の首に手を回すと耳元に唇を寄せた。耳を軽く噛むようにして息を吹きかけてみる。龍也先輩があたしにいつもするように…。
驚いたような龍也先輩の顔。
何だかその表情が嬉しくてもっと驚かせてみたくなる。
「それって…ただ抱きしめているだけなんですか?」
何だか大胆な事言っていると思う。これじゃあたしが誘っているみたいじゃない?
「どうかな。聖良はどうしたい?俺はもちろん抱きしめる以上が良いんだけどな。」
クスクスと笑う先輩の声に心臓が爆走しているのがわかる。恥ずかしいのに、何故か自然にそうなってもいいと思えた。
「Step Upは…サンタさんの気分次第ですね。」
あたしがそう言ったときの先輩の顔をあたしは一生忘れないと思う。
驚いたように見開かれた瞳。何か言いたそうに僅かに開いた唇。あたしの言葉が理解できなかったように一瞬固まって…。
それからゆっくりと表情を変え、あたしの大好きなあの笑顔になった。
あぁ…やっぱりこの笑顔が大好きだ。
その想いがあたしの背中を押す勇気をくれた。
「サンタさんがあたしに勇気をプレゼントしてくれたらきっとStepを踏み出せると思うから…。そのときはちゃんと手を繋いでいてくれます…――っ!」
手を繋いでいてくれますか?――その言葉は最後まで言わせてもらえなかった。
いきなり唇を塞がれてしまったから…。
何度も繰り返される激しいキス。
先輩の想いの深さが伝わってくる。あたしはこんなにも求められているんだと思うと嬉しくなる。
長い激しいキスからようやく解放された時には息があがって自分を支える力さえ残っていなかった。
「絶対離さないから。ずっと手を繋いでいてやるよ。眠れないかもしれないから覚悟しておいて♪」
幻聴だと思いたいとんでもない言葉が耳に飛び込んできた。
満面の笑顔で嬉しそうにそう言って強く抱きしめてくる龍也先輩の言葉に顔が引きつるのを感じる。
後悔先に立たず…。
あたし、もしかしたらとんでもない事を言ってしまったのかもしれない。
自分の言った言葉を取り消したくなったのは言わなくてもわかるよね?
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(^▽^)アハハ聖良。墓穴を掘ってしまいましたね。龍也の思う壺です。
クリスマスはふたりでラブラブデートです(これはStep5でUPします)龍也は思いを遂げる事が出来るのか?
オロオロの聖良とワクワクの龍也を次でどうぞ♪
最後までお楽しみいただけると嬉しいです