結局、片足を解く事で両者は合意したようだった。
血は止まったようだが、結局放置していた右足は解いても問題ないだろうという判断だった。
コモリはハダレの右足の膝裏を押し上げ、自分の肩の上に担ぎ上げる。
ハダレの口から短い呻きが漏れたが、一瞥しただけで注意はしない。
逆に注意するのは、脚を担ぎ上げて初めて見えた後孔だった。
濁った桃色のそこを粘液でも引きそうな執拗さで眺めて、ため息をつく。
「ハダレっち、ここ使ったことある?」
――答えが無いのを不審に思ったコモリが顔を上げると、ハダレは顔を伏せていた。
「ねぇ」
「……うるさ、ぃ……」
何かを堪えるように眉根を寄せ、ハァハァと荒い息をつく青年は、それでも語気を荒くして言った。
「怖いなぁ……折角、優しくしてあげようっていってんのに」
身を乗り出そうとするのを制して、ソウジョウがハダレの前髪を梳き上げる。
「お前があんまりしつこく弄くってるから、答えられなくなったんじゃないか?」
愉快そうに告げるソウジョウの言葉に、ハダレはそれしか言えないようにうるさい、と繰り返した。
伏し目がちな青灰色の瞳を潤ませ、耳まで赤く火照らせた「そそる」表情。
せっかく解放された右足も脱力して、勃起した性器を隠そうともせずに全身を投げ出している。
それはハダレがソウジョウの暴力とコモリの愛撫と、何より自分に巣食う欲望の暴発に陥落しかけている証だったが、
残念なことに、ハダレのどこにどういう『異』が潜んでいるのか、そもそも『異』とは何なのか、
全く知ろうとしなかった愚か者2人には分からなかった。ただ、自分たちが青年を征服したのだと勘違いをしていた。
殺菌できるのが売り文句のウエットティッシュで軽くそこをぬぐってから、指を運んで、撫でてみる。
「ぅあっ……」
驚いたように腰を跳ね上げると、痛んだ体が軋んで、また驚いたように大人しくなる。
だが静止の言葉はなかった。あきらめたのか、疲れたのか、傍目にはどちらか分からなかった。
コモリは何度か指先で括約筋の表面の感触を味わってから、本格的に潤滑油を使ってそこに触れた。
「……硬いっつか……ガチガチだし」
「とりあえず、憧れの人が尻軽じゃなくて分かってよかったんじゃないか?」
困ったように振返るコモリに、とりあえず先に進めと促すソウジョウ。
ハダレが美女ならともかく、心底退屈している――或いは興奮していてもすることが無いために、いらいらしているようだ。
「だね」
それを見て取ったのか、コモリは濡れたハダレ自身に唇を寄せた。
根本から、先走りの伝った跡をなぞる様に先端まで舐め上げ、一滴も無駄にすまいとばかりに一気に銜え込む。
「ぁ……っあぁ!……ひ」
一方で、その後の穴も触れてやる。驚いて反射的に締まる後孔は、濡れていると淫猥に見えた。
更にコモリには「憧れの人」のフィルターがかかっていて、
指に吸い付く感触が自分だけに向けられているような錯覚さえ覚える。
唐突に「挿れたい」という言葉がコモリの脳裏に浮かんだ。
今まで何度も妄想してきたことであったが、本物の肢体を目の前に、ぽっかりとそれだけが抜け落ちていた。
急になにか急がなければならない気がして、口の中の性器をきつく吸いたててやる。
「あッ、ぁ……!ぅっ……!」
じゅくっと漏れた先走りが口に広がるのを嫌悪などせずに、コモリは口腔を使ってハダレを扱いた。
抱えた脚が快感を与えるたびにコモリを引き寄せ、それに気をよくした男が更にねっとりと舌を絡ませて愛撫する。
「ぅあ……ッ、ン……」
さすがに声を漏らし始めたハダレのつま先が、びく、と震えた。
夢中で責めるコモリ。――そこに、ソウジョウが割って入った。
「お前さっきから後ろがぞんざいだぞ」
言われて見れば、「入れたい」と感覚したときからコモリはフェラチオに気をとられて、後孔がおろそかになっていた。
あまりに孔が硬いので、一度いかせるつもりだったのだが、何だか本末転倒になってしまっていた。
ソウジョウは指に潤滑油をたっぷり垂らすと、早く温まるように擦り合わせながら、ハダレににじり寄った。
「オレが後ろを解すから、お前が前でいかせてやれよ」
は、とコモリがあっけに取られた瞬間に、ソウジョウはすかさずいい位置を確保すると、
容赦の無い手つきで指を突っ込んだ。
「あ、ぅッ……!!」
「乱暴にすんなよ。……つか、やっぱなんか納得行かない気がする……」
「だから下ごしらえみたいなもんだってば」
コモリがハダレの性器を刺激する間に、ソウジョウがきつく締まった後孔を、性器を受け入れられるほどに解す。
なんともせっかちな手段だったが、効果は覿面だった。
2人がそれぞれ違う部位を担当することで、お互いがそこだけに集中できて細やかに責めることが出来る。
ハダレにとっても、こなれた部位の快感が未開発な部位の違和感を紛れさせてくれるだろう、その方が辛くない――
と、強姦犯2人は勝手に思ってやっている。
だが事実、コモリが触れていたときガチガチに緊張していた後孔は、
今ゆっくりとだがソウジョウの指を受け入れ始めた。
だが滑りを活かして中を刺激される気色の悪さに、ハダレは総毛だった。
「ひ……ぃ……」
ソウジョウの指はもともと太い上に、軟骨を折ったことがあるので尚のこと抵抗がある。
それでも、滑りとコモリのフェラチオ――今は、亀頭部だけを集中して吸って、射精に導こうとしている――のおかげで、
痛いくらいの硬さながらも、根本までしっかりと銜えられている。
薬でも塗りこむようなイメージで、ぐるぐるとかき回してやると眉根を寄せて呻く。
「……どぉ?」
コモリが青年を銜えたまま尋ねる。その刺激でまたハダレが吐息を漏らした。
「よく分からん……とりあえず指は入るんだが、それ以上はどうなるか。無理してケツに怪我させたらヤバいな。
かといってあんまりのんびり遊んでると上に怒られるぞ」
「うーん」
首を傾げて悩みながら、ハダレの先端に舌を這わせた。同時に片手の指を使って、裏筋を刺激してやる。
青年自身はとうに絶頂を迎えていてもおかしくない追い立てられ方をされていた。
ただ、後一息快感が足りなくて焦らされているといった所だ。逆に、満足な快感を後孔が邪魔しているのかもしれないが。
「……正直そろそろ挿れたいんだけどなぁ」
「うッ、んぅう……」
「こいつが尻軽だった方が話し自体は簡単だったろうに」
太い指を2本に増やしながら、ソウジョウはため息をついた。
男には前立腺があって、個人差があるがそこを撫で繰り回してやればどうにかなる――とは、
数回男を抱いたことのあるソウジョウの信念だ。
だが今まで抱いたのは元々そっちの気があったり、遊びの感覚でやらせるほど後孔での快楽にこなれた連中ばかりで、
全くその気の無い者を口説いたり、ましてや強姦の際に役立つ知識かといわれれば首を傾げざるをえない感じがする。
ソウジョウの2本の指は、一本の時と同じくらいのきつさで迎え入れられている。
コモリが何度も絶頂寸前まで青年を追いやっているようだが、上手くいかせられないらしく、生殺し状態らしい。
その所為で――いや、そのおかげで、青年の後孔が蕩けてきているというのもあるのだろうが。
しかしこのくそ狭い内壁でも、見つからないものは見つからないものだ。
再びため息をつこうと、ソウジョウが息を吸ったその瞬間――
「ぁ……あああッ!!」
ビクビクッと、青年の身体が激しく跳ね上がり、コモリの口の中に予告無く白濁が注ぎ込まれた。
けほ、と咽ながら――それでも一滴残さず飲み込んだのは愛情の証だった――、コモリはハダレとソウジョウを交互に見る。
ソウジョウはソウジョウで、いくらか柔らかくなった青年の締付けを呆然と指で味わいながら、2人を見やる。
ハダレは誰の事も見ていない。
絶頂の余韻に全身で浸りながら、その双眸はどこでもない宙をうっとりと見つめて彷徨う。
「……今なんかした?」
「いや……もしかして、なんかこう知らない間にツボ突いちゃったとか?」
何となく気後れするようにぶつぶつと呟きあう2人を尻目に、ハダレに巣食う性欲は膨らんでいった。
泣き叫ぶ精神を黙らせ、快感に抵抗する性器を勃起させ、拒絶する後孔を物欲しげに痙攣させ、
1人だけでなく2人も3人も容易く飲み込めるような、巨大な蛇のように。
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