代理戦争/最下層街編/承・遭遇/1


「も……コモリッ……」
「ん?」
呆気に取られていた様な2人が、はじかれたようにハダレを見つめる。
見つめられた青年は、乱れに乱れた格好だった。
首筋の赤い印は一つだけだが、それと同じくらい赤くなった両乳首は乾きかけた唾液に濡れている。
鳩尾に目立つ痣を越えて引かれた唾液の筋は性器まで続き、その性器はわずかな精液をこびり付かせている。
その下には潤滑油で慣らされて口を開いた後孔がひくひくと蠢いている筈だ。
彼は絶頂の残り香を表情に漂わせて、ぼろぼろと言葉をこぼしていく。
「……もっ……入れ……」
のぼせたような瞳が正気を失っているのは分かった。
だが、やはり愚かな2人は原因が「自分たちの巧みな愛撫」であると信じている。
だから、調子に乗って、そのまま挿入にこぎつけたとしてもなんら不自然なことは無かった。
コモリは左足を拘束していた紐も解いた。
予想通りぐったりとしたそれと、右足の膝の裏を改めて押し上げる。
片方を肩に乗せかえ、手を自由にすると、その手を使って自身にも潤滑油を垂らす。そして、宛がう。
「…………夢じゃないよね、コレ」
宛がった先の筋肉が収縮して、さも歓迎されているかのような幻想がコモリを支配する。
抱えた脚の先には胴があり、その先には顔の右半分を覆ったハダレの顔が見える。
と、ソウジョウがその顔を両手で正面に向けさせる。双方の双眸がはっきりと合う。
「ぁ……」
「最初で最後の夜なんだ、目くらいあわせたっていいんじゃないか?」
僅かに目を見開くハダレではなく、コモリに向けて発せられた言葉はその耳を素通りして消えた。
見詰め合ってみると、ハダレの瞳は最初に無理矢理見たときより綺麗な色合いに見えた。
涙でぼやけたそれは激しく波打つ水面のような青灰色で、引きずり込まれるような錯覚さえ覚える。
近くに寄れば寄るほど、波打つ水面に映った姿がばらばらに引き裂かれるように、
心までかき乱されるようだった。
思わず、苦しくなるのも構わず上体を倒し、口付けた。目は開けたままで。
そして後孔も、一気に貫いた。

「ン゛ン、ンんぅ―――!!」
何から認識するべきか――コモリの五感は、一瞬戸惑ったに違いない。
それほど、鉄壁の王者が汚される瞬間は刺激的だった。
ぼんやりしていた瞳がかっと見開かれるが、数瞬後にはぎゅっと瞑られ、大粒の涙が滲み出す。
押し進めるたびに膨れるそれは、コモリの頬も濡らした。
上がった悲鳴は大方コモリの唇が飲み込んだが、それでも悲痛さはソウジョウに隠し切れなかった。
「どうだ?この痛がり方、本物かもな」
「……多分……ぁあ……」
コモリはキスの隙間から、半分喘ぐように答えた。少し痛いが、精神的な満足もあって、気持ちいい。
まだ全部入り切っていない。だが、ソウジョウの下ごしらえのおかげか、なんとか根元まで入れられそうだ。
骨の浮いた、女のようには柔らかくない脚や腰を抱えて押し入れると、痛がって悶える。
「ンンッ……!ン……!!んッ……ん――!」
緩めて受け入れる事が出来ない体は、火照りを失っていく。冷や汗が浮き、歯の根も合わないハダレ。
下の口は括約筋が強張り、内臓である奥の方までがコモリを圧迫してくる。
流石に可哀想になって、唇を離して顔を撫でてやる。
涙を親指で拭って、そのまま口に運ぶ。――しょっぱかった。
「……ごめん……本当はもっと……気持ち良くしてあげる……筈だった…んだけど」
言い訳じみた独り言を呟くコモリ。
挿入し終えた事を、緊張した括約筋に根元を銜えられて悟るやいなや、動き出す。
「……ありきたりだけど、もう、我慢できないっつか……本当……ごめん」
「ぁぐうっ、い、っ……、あ!」
肉のぶつかり合う、なんとも残酷な音が規則的にしている。
なんとか出血は免れたものの、その異様な痛みは慣れている筈のハダレを混乱させるほど酷かった。
殴られて痛いのと、この痛みとは全く別だと理解していても、 痛くて泣くのは何年ぶりだろうかと思わずどこかで考えてしまう。
青年ではないものが青年の筋肉をこじ開けて押し入り、拒絶するように緊張する内部を無理矢理開かせて、 肉棒が届く限りにおいてぐちゃぐちゃに掻き回す。 潤滑油のおかげで引き攣れる感じは無かったが、実際に五臓を押し上げられるのは気持ち悪くてたまらなかった。
細い腹にもし筋肉がついていなかったら、おそらくコモリ自身の質量が浮き出たのではないだろうか。 それほど克明に体に刻まれる違和感は凄まじかった。
「あ、あ!ぅっ、ぐ……はぅ、う」
ハダレは恥も外聞も無く泣き叫んだ。
緩んだ蛇口のように、尽きない涙が横へ流れていった。
後孔からも、溢れた潤滑油がだらっと流れ出てくる。 色気のある、ヒクつきの隙間から糸を引くような様ではなく、潰れた紙パックから飲みのこしが零れるような、 ただ単に自然の物理にしたがったらそうなった、というように。

ハダレの性器は萎えたままで、頬からも血の気が引いて久しい。 見かねたソウジョウが2人の間に指を差し入れて扱いてやっても、一向に立たない。 芯を僅かに持つが、突き上げられるたびにしぼんでしまう。乳首に触れても、反応はない。
「おいおい、もうちょっと優しくやる予定だったじゃないか?
 こいつ、興奮するどころか不能になったみたいに反応しない」
「……ダメだ、分かってんだけど……はぁ、……出したくて、しょうがなくって……」
ソウジョウの忠告にも全く耳を貸さずに、コモリは自分の快感を追った。 ハダレが快感を得るかどうかは別として、とりあえず出し入れできるほどには筋肉の緊張は緩んできていた。 普段買う女のような柔らかさや、甘く噛まれるような締め付けには程遠いハダレの後孔。 妄想していた時の、快楽をねだる甘い声もない。苦悶の呻きが耳に痛い。 だがコモリにとって、現状は最高の天国で、頭にはとにかく抜き差しして射精する事しかなかった。

グチャグチャと、口を開けて食物を咀嚼するような音が続く。
実際、下の口はコモリを限界まで頬張って申し訳程度に食んでいた。
ただ上の口は、歯を食いしばる力も無く半開きになり、涎を垂れ流したままだ。時々意味も無くぱくぱくと開く。
その口に――新たな「食物」が供された。
「じゃ、キスも済ませた所で……役得を頂くとしようか」

「ン゛ぅッ!」
それこそ口一杯にソウジョウ自身を含まされ、奉仕を強要させられる。
「上のお初はもらってもいいだろう?こんなに協力してやったじゃないか」
非難がましい目線を送るコモリに、宥めると言うよりむしろ当然と言った口調で応えるソウジョウ。
そして更に当然のようにハダレを非難する。
「ほら、もっとちゃんと舐めろよ」
両腕を頭上で拘束されたハダレの頭の可動範囲は、ソウジョウの思ったより小さかったらしく、
それならばと根元まで含ませられる。えづこうにも、頭は強く押しつけられてどうにもならない。
「……ぅ……ふっ……」
顔が動かせないので、ハダレは頬の内側や舌を絡めての愛撫に専念する。
突かれてヒクつく咽喉で敏感な先端を包み込み、良く動く柔軟な頬肉で血管の浮く茎を育てる。
陰毛が呼吸を阻害する。苦しい。
だが、死因が窒息・フェラチオというのは死んでも死にきれないので、必死に肺を収縮させる。
張り詰めた裏筋を自由にならない舌で苦し紛れになぞってやると、ソウジョウがにやにやしながら頭を撫でた。
「強いあんたもいいけど、コッチもいいな……微妙に上手いのが気に障るけどな。
 まさか、俺たちファンを裏切って、口で勝ちを買ってたわけじゃないだろ?」
「ぅぐ……ッ……」
挿入前よりははっきりしていた瞳に、改めて涙が浮かんだ。
零れ落ちはしなかったが、じわりと滲んだそれは容易には乾かなかった。
「……は、ハダレ……出るッ……!」
ハダレの腿を掴むコモリの指に力が篭り、傷を広げられた青年がうめいた。
だが、体内に吐き出された精液の感覚がおぞましくて、うめきを更に重ねる。
肉棒が蹂躙した範囲を越えて断続的に注がれる体液が、自分の肉と絡むのを感じた。と、
「こっちも……ッ、だ」
「ぁふッ!」
続けて、今度は上の口に――というより、咽喉に直接吐精された。
飲むと覚悟を決める前に、反射的にそれを胃へ送り込んでしまって、後で噎せる。
「か……ハッ、ゴホッ……」
尿道に残っていた精液を口内に零しながら、ソウジョウは自身を引きぬいた。
亀頭とハダレの唇を、白い粘液――精液と唾液の混合物が結んで、すぐに切れる。切れた先は青年の顎を伝う。
(終わった)
痛くてたまらない尻孔から、やっとコモリの性器が抜き出され、内臓の圧迫が休まる。
全身が生臭く、ぬるぬるして痛くて、やるせない。だが終わったのだ。
ハダレは性欲による支配が終わる事を期待して、安堵した――
「んじゃ、次オレ2番目頂くから」
「……じゃあ口の2番目はオレ、もらうっつか」
驚愕の言葉が聞こえてきたのは、そのときだった。



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