※残酷な描写・戦闘描写があります※
事の次第は、こうだった。
ウスライが帰宅したと思って、ハダレは本当に何も身構えずに敵の眼前に出てしまった。
相手が武器を持っていることを悟ったときには、敵の刃がハダレの肌を浅く傷つけていた。
男たちが四人組であることを知る頃には、浴室を背にして追い込まれていた。
「油断したな……お前も、ウスライとかいう男も」
流石に武器を持った男4人に無鉄砲にかかれるほど、ハダレも無謀ではない。
ただでさえ怪我人のこの身、隙をうかがっているこちらに、
男の内一人が覆面越しにも分かるほどはっきりと笑みを浮かべていった。
「あの方を甘く見るなよ。この街は、あの方の庭といっても差し支えない」
「身内だからって、何時までも容赦してもらえると思うなよ」
「……身内?誰と誰がだ」
隙をうかがいながらも訝しげに問いかけるこちらに、男たちは一瞬きょとんとする。
「……なんだ、知らないのか。ならいい」
「どちらにしても、お前を連れ帰るのが俺らの仕事だからな。
大人しくすれば、俺らから一言くらい口利いてやるよ。『とても素直な奴ですんで、調教は程ほどに』とかな」
「『調教』……」
改めて敵方の口から聞かされたその言葉が、酷くハダレの癇に障った。
オレは、自分の力で今までの自由を勝ち得てきたのだ。
オレの力。筋力や、集中力、瞬発力、諸々の肉体の力と、
そして――右眼の力。――今更、踏み込ませはしない。
「そういうこった。ほら……」
相手の一人が、おどけるようにナイフを閃かせた。
その瞬間、その一瞬の内には、男の身体が吹き飛んだ事は他の3人は気がつけなかった。
吹き飛ぶといっても、ただすっ飛んでいっただけではない。文字通り、四散したのだ。
風船のように爆ぜ割れた全身が壁や天井に張り付き、その一片は敵の男の一人の頬に張り付いた。
「わ……!?」
気味悪げにその男が頬を拭う。それに重ねるように、
「な…どういうことだ!あいつは対衝撃用のサポーターをつけていた!
何で……それで、あんなことになるんだ!?ま、まるで紙くずじゃないか!!」
悲鳴のような敵の男の声が響いた。それが、ハダレにはたまらなく心地よかった。
ゆっくりと、眼帯をずり下げた右眼から振返りながら、
「おっさんおっさん、人間なんつぅのはさ、本当脆いんだから。
刺されて死ぬ。締められて死ぬ。殴られて死ぬ。
押しつぶされて死ぬ。息が詰まって死ぬ。
今生きてるのが不思議なくらい、人間の体は柔らかくて貧弱で悲しいんだって、知ってたかぁ?
……そんなんで『異』に勝てるわけ無いじゃん」
余裕の足取りで近付くと、恐慌状態になって襲い掛かってきた2人目も同じように潰して殺す。
そして3,4人目を振返った。
「ひ、ヒィィィイイいい!」
大げさに声を上げた男が、窓際に後ずさるように逃げていく。
逃げようという意図は明確だったが、あえてハダレは何もせずに、残った男に向き直った。
残った男は、震えながらもこちらに刃を向け、戦闘体制を保っていた。
『異』を捕まえによこしたのだから、そこらのごろつきに毛が生えた程度の度胸はあるのだろう。
大げさなくらい上下する輝きの切っ先を見つめながら、ハダレはむしろ面白そうに笑った。
「ん゛――――、ん゛―――!!」
「はー、やっぱり性欲は溜めて溜めて出すのが良いよね」
ハダレは昂ぶり切った自身を男に埋めて、心底満足そうな吐息をついた。
何もせずにいきなり杭を打ち込んだ男の肛門は裂け、仲間の血溜りの中に混ざろうとでもするように
たらたらと血を流していた。
そこをハダレの肉棒が高速で通過するのだ。まさに傷を抉る痛みを、男は味わわされていた。
ただ皮肉にも、男が痛がって身体に力を込めると、男の中までがきゅうと絞られる。まるでやめてくれと懇願するように。
男の中に存在するハダレ自身は、そうやってきつく愛撫されると、尚更気持ちが良くてたまらない。
結果、ハダレの腰は留まるどころか、尚更激しく打ち付けられることになる。
男の頭は上からハダレが押さえつけていて、床からあげることが出来ない。
血溜りであっぷあっぷしながら、男は必死に抗議――あるいは哀願の悲鳴を上げ続ける。
その惨めな姿に、ハダレの性欲はどんどん高まっていく。
背筋の震えるような感覚が、腰を伝わって性器に蓄積されていくようだ。
また、少し自身が膨張したような気がする。
結合部が、血の泡を立てている。それと比例するくらい、激しい水音が静かな部屋に満ちる。
もし自分が挿入されるほうだったら、羞恥の余り落ち着いていられないほどの音量だ。
まあ、今の男にはそんなこと気にする余裕は無いだろうが。
「ン……それにしたって、ひどい話だよねー。仲間置いて逃げちゃうなんて。
よっぽど甲斐性ないんだねー、あんたらの組織」
「ふ、ざけるな、この化け物!――あ、あぐぅッ……」
よほど癇に障ったのか、それとも組織に思い入れでもあるのか、罵倒してくる男。
その抵抗をねじ伏せ、逆に頭を押さえていた手をずらして首を締め上げる。
片手だし突き上げる片手間なので、そうすぐに死ぬほどきつくは無いはずだが、
逆にそれが男にとっての不幸だっただろう。気管を締め上げられ、気絶することすらかなわずに足掻くしかない。
「ッひ……――ひ…ぃ…」
「ぁ……ッ、すげぇ締まる…」
必死に逃れようともがく男を取り押さえて、
まるでオナホールの更に代用だというように、その後孔を「使う」ハダレ。
「……!……!!………ッ………」
ついに男が白目を剥いて痙攣を始める。
それが死への動作なのか、気絶前の痙攣なのかよくわからなかったが、
彼の孔は今まで感じたことの無いほどよく締まり、まるでイったときの痙攣が持続するような、
自慰の道具としては申し分の無い感触をハダレに与えてきた。
「………!ハ、ぁ」
血で滑った男の内部からたまらない刺激を受けて、ハダレは一度の自慰では出し切れなかった精液を吐き出した。
特に意味はなかったが、全てを出し切る前に男の中から抜き去り、残りの精をその場にぶちまけた。
男の腹から股間、そして自分の股間まで白く汚しながら、
その足元に広がる赤とのコントラストをぼんやりとした眼に楽しむ。
「はは……我ながら、上手いこと考えたかも……ねぇ」
底の抜けたような笑いをこぼしながら男を見やると、男はぐったりとしたまま動かない。
ハダレは狂ったように一人で笑い続けた。
数分経っても、男はぴくりともしなかった。不気味な静寂に、ハダレの意識は徐々に醒めていった。
やがて、男の呼吸が止まっていることを確認して、ハダレの意識は完全にさめた。
自分がしでかしたことの大きさが、凄惨な部屋の様子から圧力をかけられてしみるように理解できた。
ハダレはどうすることも出来なかった。次第に、体が痛んできた。
血の海に腰を下ろしながら、唇を噛み締めて、涙だけは流さないように努めていることが唯一彼にできることだった。
「一人逃がしたのか」
ウスライは尋ねた。ハダレが頷くのを見て、そっと瞑目して天を仰ぐ――最悪のパターンの内の、もう一つだ。
一人でもこの襲撃の結果を持ち帰る者がいるのはまずい。自分が出先で手を汚した意味はなんだったのか。
自分が今まで組み立ててきたシナリオが崩れるかもしれない要素が、守るべき相手から喰らわされてしまった。
それも、『異』に甘んじて屈した、保持者の不甲斐なさのせいで。
ウスライはゆっくりと拳を握ると、ハダレを容赦なく殴った。
この男には珍しい、感情表現の一環としての暴力だった。
ハダレは悲鳴一つ上げず、甘んじてその拳を受けた。派手な音がした。
だが、罰されることで罪が贖われるのだから、何もされないよりもずっとましだった。
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