「眠ってる間にある程度の身体検査はしたのか?」
「身長とか体重、胸囲胴囲とか血液検査とか、まぁ何時やってもいい物は大半終わりました。
特に血なんか、暴れてたらもらうに貰えませんし?」
「……ご苦労。仕事が早くて助かる――何せ、本来の期限を過ぎてしまっているからな。
調教は出来るだけ早く済ませたい」
「んーッ!」
『調教』の言葉に、ハダレが強く反応する。鉄枠を軋ませながら、反抗を示す。
其れに対して二人組みは余裕の態度で対応する。
「あとは勃起した時の大きさとか、感度の検査をすればすぐにでも調教に入れますー」
「そうか。なら、すぐに頼む」
「はい。分かりました……って事で」
拘束衣の男はくるんと振り向くと、ハダレに向かってつやっぽい視線を投げ掛けて言った。
「これからキモチイイ検査するから。あんまり反抗しないでねぇ?」
勿論ハダレは嫌だった。
しかし何事につけても、自由にやる事を至上として生きていた――
或いは、捕らわれていることにトラウマを持って生きていた青年である。黙っていられるはずが無い。
ゴムの棒に歯型が何重にも刻まれるほどに噛み締め、鉄枠を置いた台自体ががたがたと揺れる振動を起こす。
しかし拘束衣の男が伸ばす腕は防げなかった。
ぴんと立てた人差し指一本で、顎の先をくっと押し上げられる。そこから爪の先で軽く引っかかれるように、
喉仏を通り、鎖骨と鎖骨の間を過ぎ、大胸筋、鳩尾、割れた腹筋の間から臍をそっとなぞられると、
流石に指先にいやらしいくすぐったさを覚えて腰が跳ねた。
指先はそこから更に下腹部の方へ降りてゆき、髪を梳く様に陰毛を撫でる。
「あれ?頭染めてるんだ。下の毛の色が違うね」
五指を使って軽く引っ張ったり、手櫛のように指を入れたり、弄びながら、
「俺と同じ、赤毛だね。いい色。
あ、でもやっぱりトリミングした方がいいですねー。ちょっと多すぎるかも」
などと無邪気そうに言う拘束衣の男。
「うむっ…!」
羞恥で赤くなりながら、ハダレがぎしっと音を立てて暴れる。
それを穏やかな目で見つめながら拘束衣男は、
「あのねぇ、俺も『異』だから」
「ん゛ッ!」
ぷち、と小さな音を立てて拘束男の手がハダレから離れた。
握り締めた指の間からは、髪の毛の色より暗い色の縮れ毛が飛び出している。
毟り取ったそれをぱらぱらと掃い、少し赤くなった地肌を撫でながら、
「あんまり暴れられると、『欲』が出てきちゃうんだよねぇ……?俺も興奮型だから」
見開いた眼で説得されると、流石のハダレも一瞬竦んだ。
気迫とは裏腹に、地肌を撫でる手つきは優しく。ぴりぴりと痛む皮膚を宥めるように、指の腹で擦る。
その一方で、身動きの取れないハダレの顔に顔を寄せ、呼吸で皮膚をくすぐる。
「そうそう……そうやって、大人しくしてて……」
言葉の隙間に、ついばむようなキスを挟みながら、片手は陰毛から性器の付け根を優しく撫で回す。
「―――ッ!」
顔を背けようとしても、全く動けない。いいように全身をなぶられるしか、ハダレに選択肢は無かった。
次第に下腹部を這っていた指が、人差し指と中指の間に性器を挟む形で股間を撫でている。
性感を引き出すのではなく、純粋に皮膚の感触を味わうように。
「良い感触ですよぉ。皮膚の荒れとか無いですし。本当に面倒の無い素材です」
足の付け根をくるりと撫でられ、くすぐったさにハダレが反応する。
きゅっと瞑った左目の目尻に拘束男がキスすると、驚いたようにまた鉄枠が軋んだ。
だがもう言葉で抵抗を封じようとするのは止めて、拘束男は身体を乗り出した。
片手でハダレの内腿を撫でながら耳に出来るだけ熱い息を吹きかける。
「ッ……!」
びく、と驚いたように跳ね上がる身体。
その体が落ちないうちに、拘束男は直接注ぎ込むように囁いた。
「耳は……感じるかなぁ」
そして言葉を押し込めるように、長い舌で耳たぶから耳の穴の際まで一息に舐める。
できるだけいやらしい音を立てて耳たぶをしゃぶり、赤ん坊のように吸ってやる。すると、
「ふッ!」
やめろ、という意味を込めてだろう、ハダレが鋭い眼差しで拘束男を睨みつける。
拘束男は知らないふりをして、甘噛みを交えてしゃぶり続ける。その一方で、更に下半身も弄くる手を止めない。
膝の内側辺りから、足の付け根の窪みまでを直線で結ぶように、爪の先でつぅっと撫でる。
たどり着いた先から更に尻の割れ目に指を向け、後孔の手前から睾丸までを結ぶ会陰をかりかりと引っかく。
「ん……っ……」
「くすぐったい……?それとも気持ち良い?」
ひっかかれて緊張したそこを、今度は凝りを解すように指の腹で円を描いて擦る。
きゅ、っと締まる後孔の筋肉の動きが指に伝わった。
「ねぇ。どーなの」
返答を聞く前に、拘束男は長く伸ばした舌で、ハダレの耳をじゅぶりと犯した。
「んうッ!……ふ…っ…」
抗議のような、悲鳴のような声をあげるハダレに、薄笑いながら舌を這わせる拘束男。
狭く乾いた耳の穴を深く犯し、奥でピチャピチャと唾液を跳ね上げ、塗りつける。
「ん、…うんッ!う、」
こんなことはされたことが無い。熱くぬめる舌が、低速ではあるが出し入れを繰り返す。
何よりも鼓膜に近い場所を犯され、はしたない音を立てられる羞恥が、脳を少しずつ蕩けさせていく。
一方で、下肢の指の方も段々と核心に迫りつつある。
会陰を擦っていた指がふと離れたと思うと、その更に後ろを軽く押さえた。
「……今、びっくりしてきゅって締まった」
実況されても、返す言葉などあるはずが無い。ハダレはその指から反射的に逃れようと、空腰を突き上げた。
が、拘束の一端も緩むことは無い。
肩幅ほどに開かれ、閉じられない両脚の奥にやすやすと手は入り込み、手探りながらも正確に表層を撫でる。
「ちゃんときつく口、閉じてる。処女じゃないって聞いてたけど、あんまり酷くなくてよかった」
時折押し込むように揉みながら、指先を固く拒む後ろの小さな穴の感触に目を細める拘束男。
横目で眺めるその笑顔は、あの廃ビルで見たのと同じ、歪んだ笑顔だった。
耳から舌が引き抜かれる時、ぬぽっ…と粘着質な音がした。
舐められ、犯された部分がひやりと冷えて新たな刺激になって、ハダレは身動ぎした。
その身体に覆いかぶさるように、ハダレの両脇に手をつきながら拘束男が身を乗り出す。
そして、
「ふ……んぅッ…」
ぴちゃぴちゃと水音を立てながら、首筋から順々に下るように舌で舐められる。
全裸の身体を、温かさを持って這い回る舌と指先。
鉄枠がじゃまをしているらしく、時折拘束男は身体を乗り出す位置を変えた。が、殆ど舌は休まらない。
段々下がっていく舌先が、右の乳首を捕らえた。べろ、と大雑把に一度舐めてから、改めて吸い付く。
しかし、
「ん……」
ハダレは思ったほどの反応を示さない。
嫌そうに顔を歪め、拘束男を下目遣い――という表現もおかしなものだが――で睨みつけただけだ。
残念がるかと思いきや、拘束男は優雅に座ってこちらを眺めている主人を振り返って、
「あれ?……未開発、と。ご主人様、楽しみが増えましたねぇ」
さも楽しそうに振り返って見せる。
またハダレの背筋を寒いものが走り抜け、ぶるりと体が震えた。
未開発だといったからには、何かされるのかと身構えるハダレ(実際は何も出来ていないが)。
しかし2人組みはそこで何をすることも無く、カギロイは穏やかな視線でこちらを見ているだけだし、
拘束男は乳首にもう一度キスしただけでそこから離れた。
舌は更に濡れた道を刻みながら、鳩尾に到達した。
そこに触れられて、ハダレはふと十日と数日前の事を思い出した。
その場所を殴られて、二度と消えそうに無い紫色のあざが出来ていたことを。
「んん……消えかけだけど、ここ、あざが出来ててきれいじゃないなぁ……」
(あ…・・・そうか。もう流石に消えかけてんのか)
それを残念にすら思いながら、やはりハダレはウスライの事を思い出していた。
(俺のせいでこんな事になったんだもんな……)
あの部屋での襲撃で、自分がもし冷静に行動できていれば、
もっと追っ手が来るのは遅かったのではないだろうか。
追っ手が遅ければ、もしかしたらこれ以上誰の傷も伴わずに逃げ延びられたのではないだろうか?
そんな疑問ばかりが頭を掠める。
しかし一方で、先ほど拘束男が言ったことも頭から離れない。
(……でも、やっぱ…あんたしかいないよ……)
助けて欲しかった。これからろくでもないことになるのは分かりきっている。
ほら、
「ていうか……寝てる時も思ったけど、本当に体傷だらけだねぇ。
流石優秀な代理戦争の選手だっただけある、って
褒めてあげたいんだけどねぇ……ちょっと傷モノ過ぎるかも。
少し消しちゃおうか、傷跡」
良いようにオレを弄くりだした。
「嫌そうにしてるねぇ。傷を消すだけなのに」
意外そうにしている拘束男に、ハダレは出来る限りの抗議の表情を浮かべてやった。
この男がどういった経緯で今の位置についたのかは知る由も無いが、
ハダレが代理戦争の王者の地位を手に入れるまでには無数の戦いと怪我と苦難があった。
痩身に刻まれた傷は全て、見た目の問題くらいで消して良い程の、軽い思い出ではない。
(ふざけんな!)
凶暴なほどに鋭い視線で威嚇すると、拘束男が肩をすくめた。
「未練ったらしいねぇ……どうせ、十日もしないうちに全部捨ててもらって、御奉仕の仕方を覚えてもらうのに」
「ッふ……?!」
ある程度予想していたことではあるが、改めてあいての口から聞かされるとショックはショックだった。
今まで築き上げてきた全てを捨てさせられ、虐げられる事を至上とする性奴隷になれ、と。
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