代理戦争/最下層街編/起・導入/2


※後半に微量な出血描写有ります※


「じゃ、いっつぁショーターイム。よっと」
ハダレは笑顔のままでモウジを転がし、半開きの口に布を押し込み、適当に上着をはいで手足を縛り、転がすと客席のほうをちらっと見た。
黒ずくめの男が、事務的にうなずくのが見えた気がして、更に笑えた。
「さァて、どーしようか」
ぐったりと横たわったままの男の肩に足を乗せ、ハダレは思案した。
こんな事をやっているが、ハダレは未成年である。「いたぶる」試合の経験値は低い。
――先天的に『できるかどうか』は別として。
「こういうときにぱっと思いつけないあたり、まだまだ修行中って感じだよね。
 まー、注文どおりおっ勃てられただけでもちょっと褒めてほしいけど」
その言葉に一瞬男の視線が青年の股間に向かう。…………成る程、ズボンの生地が押し上げられている。
例えば、激しい音楽のライブ等で男性アーティストがそうなるのと同じなのだろう。
極度の興奮状態。それを体が勝手に性的興奮と履き違えてしまう現象。
だが、モウジにとってはそんなことはどうでも良かった。これから犯されることを予感させる材料があるなら、理由など。

そんな男の目の前に、ふいにぽとりと何かが落ちてきた。 大してバウンドすることも無く転がった、蛍光色の何か。電化製品らしく、スイッチのようなものがついている。
それを良く見ようと、モウジが頭をめぐらせる上で、ハダレはまだぶつぶつと呟いている。
「慣らして入れたら意味無いしめんどいけどなー、流血も面白いもんじゃないし。
 適当に痛くさせて気持ち良くさせてーとか加減良くわかんないしなぁ。かといって…………」
と、ハダレはパーカーとジーンズのポケットを探った。そして――掴み出す。
掴み出されたそれらに、観客と実況は呆気に取られた。
『何ィィィィ!?さっきまで散々暴れまわっていたハダレのポケットから、出るわ出るわ大人の玩具!  ここから目視で確認できるだけで10はあるぞ!い、一体どうやって持ち歩いてたんだこの男!』

「こんなに渡されたって、使いきれないだろうしなぁ」
ハダレの両手に掴まれていたそれらは、 様々な用途の『玩具』だった。
それに気付いたモウジが、もう一度視線をめぐらせてぎょっとする。
ぽとりと先ほど落ちたそれも、同じ類の道具だったからだ。

『なんと用意のいい男でしょうか、…………しかし卑猥です、こっちによこしなさい!』
実況は最初は単純な驚きに満ちていたが、最後の辺りになると笑いが混じっていた。
会場も同様だったが、モウジだけは笑えなかった。笑えるわけが無かった。
その分の笑いを引きうけたように、優しくない笑顔で、ハダレが一つ一つ解説していく。
「んーと。これがスタンダードなバイブで、こっちパール。なんかすっげぇ震え方するから。これは浣腸。  んでこの瓶、通称惚れ薬。一発でメロメロって宣伝してて、本当だったらしいけど、  依存性が強すぎて今は製造禁止になったらしくてレアものだって。  でぇ、これは口にはめる奴。こうやって使う」

ハダレは今解説しかけた轡をモウジの口――布を押し込まれ、吐き気を催している所為で半開きだった――に嵌めた。
締め過ぎるほどに締めて、モウジの抵抗を苦しさで奪ってから、緩めてちょうど良くする。
口に押し込まれた部分に穴のようなものが開いていて、その大きさは青年がそこから布を引きずり出せるほどだった。
そうしてから、ハダレは視線を観客の方に這わせて、問い掛けた。
「この穴どうやって使うか、分かるーー?」

観客が口々に何か応えている。
もしかしたら分からないといっているのかもしれないし、答えているのかもしれない。
少し間を置いて聞いている振りをして、ハダレは大声をあげた。
「せいかいはーー、」
足もとに落して(置いて)いた玩具の一つで、最も細いものを取り上げると、轡の穴に突っ込んだ。
男が嫌がって、もの凄まじい力で抵抗する。
が、ハダレはヘッドロック状態でそのまま前後に無理矢理出し入れする。
「こーやってぇ、噛まれずに強制フェラできまーす」
おー、と言うテレフォンショッピングのような反応が起こる。
モウジは懸命に舌でそれを押し出そうとするが、玩具が細く口元に余裕があるせいで、
逆に舌を絡めているように見える。
いずれにしても閉じられない口腔には唾液が溜まり、玩具は確実に濡れていった。
ハダレは充分な状態になるのをまってから手を止め、玩具を引き抜いた。
強烈な舞台用のライトがそれを照らし、ぬらりとした輝きを見せる。
それにうっとりしたような瞳を向けると、ハダレは観客席をぐるりと見渡した。
…………目に止まったのは、前から2番目の列の金髪の若者だった。特に理由は無い。
「んぁーと。そこの金髪の兄ちゃん」
俺?と自身を指差す彼に頷きながら、ハダレは言った。
「今からオレとじゃんけんして。
 ……兄ちゃんが勝ったら、慣らしなしでコレ、この人にぶち込む。負けたら他考える」
モウジの顔に驚愕が広がる。
それは細いとは言え、そんなものがいきなり入るのかという恐怖や、 なぜそんな事をされなくてはならないのかという憤りや、 じゃんけんという完全に運任せのいい加減なゲームで俺の運命は決まるのかという絶望の、 それぞれに対する驚きの混じった、実に多様な表情だった。

だがハダレはそんな事には構わなかった。
今獲物が考えている事など、本当にどうでもいい。
午前中に管理機構へ呼び出されたときに下手な冗談を言ったせいで、 山ほどの怪しげな道具を押し付けられてしまって困っていることに比べれば。 あるいは、自分の仕事を遂行することと天秤にかければ。

あるいは、今ひそかに胸のうちで湧き上がる凶暴な『何か』を満足させることに比べれば。

「んじゃ、いくよ。さぁーいしょはグー!じゃんけん……」
固唾を飲んで、会場全体が結果を見守る。

『ポン!』

…………一瞬、静寂が訪れる。それを実況が破った。
『パーとグー!ハダレの負け、つまり金髪の兄ちゃんの勝利!』
会場が一気に異様な雰囲気に包まれた。
これから血も辞さないサディスティックな試合になるだろうことが誰にも予想できたからである。 実況もそれに拍車をかける。煽りに煽り、モウジを取り囲む逃げようの無い『円』を築く。
『哀れ昨日まで豪腕の猛者、加虐の立場だった男が、
今夜こんな悲惨な処女喪失を迎えるとは誰が予想できただろうかー!』

モウジはここに来て精一杯暴れた。
縛られているとはいえ、専門の拘束具ではないから自分の腕力ならなんとかなるという見積もりがあったのかもしれない。
自分はもう芋虫のように這わされているという油断から、ハダレが不用意になると思ったのかもしれない。 だがモウジにとって恐ろしい事に、その両方ともおこらなかった。 むしろ、興奮に泥酔した瞳のくせに、ハダレは冷静に行動していた。

暴れる身体の1点――何処とは言わないが、激痛を与えるツボだ――に指を突き込み、
痺れるような痛みに男がひるんだ所を更に関節を押さえて取り押さえる。
男が未だ身に付けているズボンと下着を引き摺り下ろし、腰を引き上げて四つん這いにさせる。
男の尻が上がったところで、その孔の在り処を目で確認する。
そして、文字通り慣らしなしに玩具を突き刺した。
絶叫が会場に響き渡った。

「ぅぐぁがああああああああああ!」
「……やっぱ……難しい……なぁ」
ぐりぐりと容赦なく抉りながら、ハダレは呟いた。
滑らかで細身(本当にこの手の玩具としては細かった)のバイブ。
さらにそれが滴るほどに唾液で濡れていた事、そして何より排泄器官の役目を考えれば、 例え出入り逆でも入りそうな気はしていたのだが。
ハダレの手元には先端2〜3センチで早くも止まってしまったバイブが握られている。
だが一度入れるといってしまった手前ここで終わるのもどうかと思うし、 新たな展開も思い付かない。ハダレは更に腕に力をこめた。
「……お、ちょっと入った……。モウジさん、あんた力抜いてよもうちょっと」
「ぁ、あ、あがっ……」
玩具が2,3ミリずつ、粘膜を巻きこむように突き進んでいくたびに男が苦悶する。
暴れまわっていた身体は大人しくなり、今は筋の浮いた手足が震えるだけになっている。

と、いきなりモウジが目を見開いて背をぴんと伸ばした。
「ふわぁああああああっ……!」
「んん?」
ハダレはむしろビックリしてその変化に注目した。
マンガや小説ではあるまいし、性感帯に触れるのはいくらなんでも早過ぎる。
訝しく思っていると、玩具を握る指に生暖かい筋を感じて、思わず手を離した。
「あ、切れた」
指についたものは濁った血液で、どうやらやはり内部が裂けたらしい。
ハダレはわざわざそれを客の方に向かってほら、と掲げて見せた。
「やっぱ無理があった。奥まで入れたら傷広げるだけで、いいことないねぇ」
男のほうはというと、肩で息をつきながら、その場で背をのたうたせている。
その筋肉質な尻からは、赤い筋のついた玩具が尻尾のように揺れていた。
それを見ながらハダレは、
「…………どうしようか。キスはしたくないし、かといって突っ込むにはちょっと早いし……
 それとも内臓めくれるまでオモチャ攻め?いや、これはオレが萎えるし……ふぅん」
頭を掻き回しながら、また独り言をいいながら考えていた。



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