代理戦争/最下層街編/結・抵抗/3


※微妙なスカトロ描写があります※

ぱた、と雫が滴り落ちた。今度は何の雫だろうかと拘束男が床を見やるが、
汗、涎、先走り、そして浣腸液のどれに新しい雫が加わったのかなど分かるはずも無い。

諦めて視線を鉄枠の中へと戻すと、じんわりと胸に満足感が広がっていくのが分かった。
『右手を休めずに動かしながら』、拘束男はハダレに囁きかけた。
「出ちゃいそうで苦しいでしょ?」
「……ん…ん…」
逼迫した呼吸の間から、ハダレはそれでも頭を振って否定した。
だがその痩身は汗でしっとりと濡れ、浅く速い呼吸で胸が上下するたびに光の当たり具合が変化して艶めかしい。
目を瞑り、時折息を詰める仕草で腹痛と排泄欲をこらえるのに必死なのがよく分かる。
勿論後孔には栓の役目をする器具が押し込まれているので、むしろ漏らすことも出来ないのだが、
『出してしまいそう』な感覚は途切れることなくハダレを苛む。
そして、破局の予感を感じさせる場所は僅かの間に、二箇所に増やされてしまっていた。
「ふッ!」
拘束男の右手がゆっくりとハダレから離れるように動いた瞬間、ハダレがびくんと背を引き攣らせた。
じりじりと退いて行く、そんな些細な動きにも、我が事でさえなければ面白いように反応してしまう。
「ッ…ぁあ……」
だからなのか、拘束男は楽しそうに、右手で透明で細い管――いわゆるカテーテル、と呼ばれるものを弄くった。
ゼリーなのかそれともカウパーなのか、たった今『引き出した』部分の滑りが乾かないうちに再度『押し込む』。
「ぁあ゛あ!……んぁ…」
再び、敏感な部分を急激なカテーテルの動きで強く刺激されたハダレが身悶えた。
「どぉ?こっちに出し入れされるのって?」
拘束男は覗かせた目元を明らかに愉悦で染めながら、ハダレの尿道孔を犯す管を右手で上下させた。
先ほどまでのピンク色の粘土は取り払われ、今は怒張した自身に管が刺さっているのがはっきりと見える。
「初めてだよねぇ、こんなの」
そんなに何度もあってたまることか。
そう毒づきたかったが、鉄の轡が邪魔して言葉が発せられない。
その上次々に与えられる種々の感覚に、段々と脳が混乱していく。
快感と性欲が結びつき、痛みと被支配欲と支配欲が結びつき、
交互に押し寄せ絡み合い枝葉を伸ばし心と現象が触れくっつき一つになり、やがて

「んぁうああっ!あ、!」
カテーテルが性器の中から前立腺を擦過すると、管をくわえ込んだ小さな穴からとぷっと粘液があふれる。
とろんと蕩けた瞳には、欲望の色が濃く見られた。
「このまま奥まで突っ込んだら……前も漏れちゃうね」
ハダレの反応の強い所で管を抜き差ししながら、拘束男がうっとりと言った。
逆にハダレはぎくりとしたように表情を引き攣らせた。
「まだ『中』見てないけど、後ろももう我慢の限界でひくひくしてるよね、きっと。
 高濃度の食塩水って痛いし熱いし、今凄いイイんだろうなぁ……漏らしたとたんにイっちゃったりして」
そういって、空いている手でこつこつとその器具を叩いてみせる。
「ぅう…ぅう……」
ハダレはぶんぶんと首を振ったが、もはや目付きに最初のような鋭さは無い。
「出したくないの?」
「………ん…」
怪訝そうな問いかけに、ハダレは今度は縦に首を振った。
このまま何時までも腹に排泄物を溜めておくことが出来ないとわかっていたとしても、
わざわざ人前で出したいと主張するほどの根性は持ち合わせていなかった。
「本当に〜?」
だが拘束男はからかうように口元を曲げると、再びハダレの脚の間に這い寄った。何をするつもりなのか。
「んんっ、ん゛」
そういえばさっき、器具を突っ込まれた時に拘束男が言っていた。「尻の中を見る器具を改良した……」とか何とか。
まさかと思って拘束男の位置を目で追うと、男はなにやらペンのようなものを弄くっていた。
今度は何の器具だろうと思う――間も無く、そのペン先に小さな灯りがともる。
「ペンライトぉ〜。これで中がよく見えるねぇ」
愕然とした。が、既に器具で無理に広げられた口を閉じる術などない。拘束男が笑った。
「ちなみに今入ってる感触で分かると思うけど、これ先っぽから根本に掛けて太くなってて、
 透明なプラスチックで出来てるから。今照らしてると、無理に覗き込まなくても全部見えちゃってるんだよ」
こつこつと指先で器具を叩きながら、
「やーらしー。中が充血してきっついピンク色になっちゃって。
 我慢してるからかなぁ、凄いヒクヒクしてる。あ、それでか、触らなくてもこれがぴくぴく動いてたの。
 このままカテーテル弄くったらどうなるかな」
そこまで言ってから、拘束男はわざとハダレの顔を窺った。
覆面の間から覗く青灰色の瞳は、不自然なほどきらきらしている。
ハダレが苦しみ、怯える様子を見ているのが面白くてたまらないのだろう。
「……ぅ…」
それは堪らない屈辱だった。
何度と無く意にそまぬ形で抱かれ、抱いた経験のある体が――むしろ、それしかない体が堪らなく疼く。
強すぎる欲望に、頭が霞がかったようになってまたも制御が出来なくなっていくのが酷く恐ろしい。
そしてそのために起こった肉体の変化を実況中継されるのは、延々と自分の傷を抉られているのに等しかった。
「うぅっ!」
「わ、中で泡立っちゃってる……カテーテル、そんなに気持ちイイ?」
もう轡でしゃべれないと言う事を抜きにしても、まともな返事などもうできなかった。
いつもは尿か先走りか精液か、何れにせよ液体が『出て行く』場所を、細い管が『出入りして』いる。
入ってくる時は多大な違和感と押し広げられるこそばゆさ、出て行くときは媚肉を擦り上げられる快感に、視界が霞む。
その一方で、腹を襲うあらゆる痛み苦しみもハダレの理性をこそぎとっていく。
腸そのものを炙る鋭い痛みに悶え、腹痛に悩まされ、出したい出したいという欲求ばかりが募る。
「そろそろ我慢、できなくなってきたでしょ?」
拘束男に内部を観察されながら囁かれ、スコープを咥えこんだままの尻を浮かせて反応する。
――誘惑に、堕ちてしまいそうだ。

「んんんッ!」
が、ハダレは精一杯の気力を振り絞って首を振った。
今は自分の尊厳の為以外にも耐える理由があった。
(ウスライ……)
カテーテルで巧みに前立腺を刺激され、仰け反って呻きながらも、屈しない。
スコープを揺らされ、排泄と快感の両方を刺激されながらも、耐え続ける。
(ウスライ!)
声にならない叫びで、生死も疑わしい男に呼びかける。

(オレは不甲斐ない『異』で……あんたの足引っ張ってばっかで)
不意に深く、カテーテルが入り込むのを感じた。執拗な前立腺責めを止め、何をする気だろう。
訝りたくても、それを考える頭の容量は残っていなかった。
(……怪我させちゃったり、簡単に捕まっちゃったり、ひでぇこと言ったりして……
 素直に護られる事もロクに出来なかったけど。
 ……ほんとに、ちゅう一つじゃ絶対わかんないくらい…惚れてた)
遠くで、カギロイと拘束男が話しているのが聞こえる。余りに長い間耐えるハダレに、業を煮やしたようだった。
もういいから外してしまえ、と声がする。
(今もあんたが無事でいてくれたらいいやなんて、謙虚でいられないけど)
何を外すのか、と疑問に思い考える余力はなかった。それよりも痛切な想いが、狭窄するハダレの意識を強く占めた。
(……ウスライ)

不意に。
酷い解放感が全身を駆け巡り、下腹部の筋肉が妙に緩んだ。ぎょっとして拘束男を振り仰ごうとする――間も無く、
「ん゛、ん゛ぅ、んア……あぁ……っ!」
栓を引き抜かれ、管を奥まで差し込まれた肉体が勝手に排泄を始めた。
器具でぱっくりと広げられた上で栓となる中の筒を引き抜かれた後孔は、
力を込めようが込めまいがもはや排泄をとめられない。
一方で膀胱までしっかりと挿入されたカテーテルを伝って、不随意の排泄が同時に起こる。
あまりに突然の強制排泄は、信じられないほどの羞恥をハダレに与えた。全身が燃える様に熱い。
今までいろいろあったが、流石に排泄を見られたのは初めてだ。
その一方で我慢しすぎた所為か、腹筋と肛門が酷く疲れていた。
それが自然に弛緩し、伸ばされていくのはゆったりした快感であり、それに抗うのは不可能だった。
ハダレは強く目を瞑った。流石に涙が出てきた。一緒に鼻水も出てきた。開けっ放しの口からは、涎が。
怒りの幾分和らいだカギロイと、拘束男の2人に見守られて、
ハダレは体中のあらゆる穴から液体を垂れ流しながら全身を痙攣させた。

その後、大分抵抗を弱々しくしたハダレに、カギロイは更に浣腸を数回課した。
今度はいわゆる生理食塩水を用いたので、あの焼ける様な痛みは無かったが、
量はちょうど二倍の一リットルに増やされた。
注入されたそれを小便の様に勢い良く排泄させられ、それをまた数回繰り返す。
最後に少量のローションを浣腸器で注がれ、それが不純物を含むことなく戦慄く後孔から垂れるようになる頃には、
カギロイの機嫌はすっかり直り、ハダレの腹部はいつの間にか白濁が飛び散っていた。
「初めてなのに良く気絶しないでがんばったねぇ――って、自業自得なんだけど。取りあえず偉い偉い」
ぐったりとしたハダレに、拘束男が近付いて覗き込む。
ついでにいい子いい子等してやるが、ハダレは身体を震わせて呻いただけで、特に返答はしなかった。
今日のところは疲労の為大人しくなった、というのが九割九分九厘といったところだが、
明日からは徐々に精神にもダメージを与えてやって、従順に慣らしていく必要がある。

心の底からそれが楽しみだ。拘束男は覆面の下で笑った。
誘拐した時に早速使ったが、このハダレと言う青年の右眼にたっぷりと厭らしい思考を注いでやるだけで、
彼の心は重大なダメージを受ける。これは便利だ。
それに強気な獲物を苦痛や快楽を上手く調節しながら篭絡していく過程ほど、やる気の起こる仕事は無い。
この青年は初物ではないから、調教の持って行き次第で明日にも『味見』できる。
主人の言うには、自分が『味見』することが重要な意味を持つらしいが、余り自分には良く分からない。
それにちゃんと仕事を仕上げれば、主人に褒めてもらえる。

(だから今日も頑張っちゃうんだけどね)
例えばホワイトカラーの労働者が終業の後のビールを励みに夕刻の仕事をこなす様に、
拘束男はうきうきとして、今日の調教予定の項目をこなしにかかった。
掌に無色透明のローションをたっぷりと掬い、それを零さないうちに『ある物』にべたべたと塗りつける。
挿入部が清潔な白で塗装され、後は殆ど針金細工と言って良いようなその複雑な器具は、
全く知識の無いものから見れば、置物か何かと誤認するかもしれない。
だがその複雑に加工された本体は、青年の後孔の周囲の筋肉の運動だけを頼りに前立腺を突き上げる。
普通のおもちゃには、電池切れや腹圧で押し出されると言ったある種の『救い』があるのに対し、
『ある物』――エネマグラは、出したくても出せない状況を自分の体が勝手に演出する。
その時の――実際に自分がそれを使った時の感覚を思い出して頬を火照らせながら、彼はハダレの傍に立った。
拘束男はエネマグラの先端を広げられた後孔に宛がった。
「ンッ……?!」
突然の太いものの挿入に、ハダレが驚いたように身体を強張らせる。が、無視してゆっくりと挿入する。
奇妙な――握りつぶされた紙粘土のような形状の先端が、じゅぷじゅぷと呑み込まれて、やがて根本で止まった。
同時に針金細工のような部分の一端が、硬く張り詰めた会陰を押し上げ、その手前の会陰をひしゃげさせる。
拘束男はがっちりとハダレの陰部にはまり込んだ玩具を一頻り揺さぶってから、
「まぁ、こんなもんかな……」
ふむ。と顎に手を当てて、青年の全身を眺めやった。
ふと見ると、ハダレもこちらを見ていた。一体何をした、とでも言いたげな瞳で。
いや、実際に青年はそう思っている――その確信があった。それに対して、拘束男は目元を緩ませて答えた。
「ほら、今までは苦しい事させちゃったじゃない。だから今度は御褒美で、気持ち良いこと。
 怯えなくても良いよぉ、ちょーっと連続絶頂で白目剥いちゃう位だし」
「ンンッ!?」
「今は分かんないと思うけどねー。じゃ、暫く放置プレイって事でー、って、…うぁッく!?」
姿勢を低くしてハダレを覗きこんでいた拘束男の上体が、急に引き上げられた。
「ッ、ほ、ごほっ……ご、主人様……」
苦しげな表情で喉元を押さえる奴隷の姿に、ハダレはやっと
カギロイが拘束男の首輪を後ろから掴んで引き寄せたのだと分かった。
驚く2人をよそに、カギロイは最初のような穏やかな表情で――一方で、拘束男の首を絞めながら――告げた。
「ご苦労。汚物の処理までして、さぞ疲れただろう。ちょっとした褒美をやろう。
 身体を清めてから私の部屋まで来い。――どうも、欲が収まらないのでな」
「は、ッ……はぃ…ありがとぉございま、ゴホッ…」
涙目になりながらも拘束男が頷き、それを見たカギロイが満足げな微笑を浮かべて首輪を離してやる。

カツカツと、高く澄んだ靴音――勿論カギロイのものだ――が遠ざかって暫くした後も、拘束男の咳は止まらなかった。
急に引き上げられ、驚いたせいもあるだろうが、カギロイは相当容赦ない強さで
首輪を掴んでいたのだと容易に予想が付くほど。それほど、長く拘束男は苦しんでいた。
「うぇ、涎垂れちゃった……後で洗っとこ」
何分も経過してから、ようやっと拘束男がもそもそと動き出す気配が感じられた。復活したらしい。
が、それに対する恨み言などをハダレはついに聞くことは無かった。

綺麗に磨かれた床を、底の厚い靴で擦る音が聞こえる。それも、ほんの少しづつ小さくなっていく。
つまるところ、それは遠ざかっていると言う事なのだろう。
安堵すべきなのか。いや、拘束男の話を聞くところによると――いや、むしろ。
状況からしてこれから恐ろしい事がおこるのはまるきり分かりきっていることだ。
だが、ハダレにはどうしても危機感を抱くことが出来なかった。現状では危機と言う危機は感じられないからだろう。
体力の低下や、排泄を見られるという異常すぎる経験で、一時的に神経が麻痺しているのかもしれないが。

それから三十分と経たない内に、『上手く』ハダレの性感帯にはまり込んだエネマグラの所為で、
がらんとした部屋を青年のよがり泣く声ばかりが占めるようになることを、ハダレだけが知らなかった。
連続使用の限界時間――一時間半を大幅に超えても、
情交に耽っていた主従はおろか、清掃員の一人も様子さえ見にこないことも。



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