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第八回 永楽館歌舞伎

2015年11月4日(水)~11月10日(火)
第一部(11:30開演)/第二部(16:00開演)
※10日(火)は第一部のみ
※11月3日(火・祝)14:30~「お練り」が行われます(予定)

配役

第一部(11:30開演)/第二部(16:00開演)

一、星雲の座 出石の桂小五郎

桂小五郎:六代目 片岡愛之助
幾松:初代 中村壱太郎
甚助:初代 中村寿治郎
おすみ:六代目 上村吉弥
堀田半左衛門:四代目 中村鴈治郎

二、お目見得 口上

幹部俳優出演

三、蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)
片岡愛之助五変化相勤め申し候

小姓寛丸、太鼓持愛平、座頭松市、傾城薄雲太夫、蜘蛛の精:六代目 片岡愛之助
確井貞光:初代 澤村國矢
坂田金時:二代目 片岡千次郎
源頼光:初代 中村壱太郎

データ

筋書

16ページと17ページの間の折込(すべてカラー)  舞台写真「義賢最期」木曽先生義賢、プロフィール(舞台写真「神の鳥」中鹿之介幸盛、舞台写真「百合若丸弓軍功」百合若大臣)
 裏はポスター:舞台写真「もとの黙阿弥」河辺隆次
17ページ:舞台写真「鯉つかみ」滝窓志賀之助、舞台写真「車引」梅王丸(すべてカラー)
32ページ:『愛之助が案内 永楽館ものがたり』のチラシ

料金

11,000円(全席指定)
筋書:1,000円

雑誌

『演劇界』2016年1月号

愛之助丈関連
68ページ:舞台写真「蜘蛛絲梓弦」蜘蛛の精(カラーグラビア)
100ページ:舞台写真「出石の桂小五郎」桂小五郎(モノクロ 6枚)
101ページ:舞台写真「口上」(モノクロ 1枚)
101ページ:舞台写真「蜘蛛絲梓弦」小姓寛丸/太鼓持愛平/座頭松市/傾城薄雲太夫/蜘蛛の精(モノクロ 各1枚)
117ページ:永楽館歌舞伎の劇評
113ページ上段「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の紹介(1/3ページ)
演劇界 2016年 01 月号 [雑誌]

感想

感想


7日昼の部を前方中央で観劇。
例の胡蝶蘭を見たファンの微妙な空気を愛之助丈に届けられないのが残念だ。
お花に罪はないのに、さらし者みたいで可哀想。お花が。
ファンというのはお金や時間と引き換えに劇場に行く、いわば消費者なんだから、最低限の消費者ニーズくらいは把握しておくべきだと思うよ。

星雲の座 出石の桂小五郎

今回は花外の一部の席が仮設舞台になっていた。
まず、場内が暗くなり、昔の映画(だと思う)の映像が流れる。永楽館が映画館だったことを考えると、なかなか面白い演出だと思う。(ちょっと映像が長いなぁとも思ったけど。)
池田屋事件の映像に合わせて、仮設舞台から講談師が語っている。
映像から劇中劇のようになり、新選組隊士が「桂小五郎がこの劇場に逃げ込んだ」と客席でご用改めを始める。
仮設舞台から幾松(壱太郎丈)が現れ、屯所に連れていかれそうになるが、観客(永楽館のスタッフさんか大向こうの会の皆さんだと思う)からの「やめてやれ!」の声で難を逃れる。

舞台は変わって関所。 小五郎(愛之助丈)と甚助(寿治郎丈)は怪しいやつだと止められる。
ここで小五郎(孝助と名乗っている)が懐から出石のそば手形を出したりする。
そこに堀田半左衛門(雁治郎丈)が現れ、半左衛門の口利きで関所を通してもらえる。
半左衛門は小五郎の手に竹刀だこがあることに気付くが黙って通してくれる。
雁治郎丈が登場すると、やはり空気が変わる。

ところ変わって出石。 小五郎は甚助の妹・おすみ(吉弥丈)と結婚している。 そこへ半左衛門がやってきて、小五郎と碁を始める。

碁を打ちながら、
半左衛門「わしの贔屓の歌舞伎役者を当ててみよ」
小五郎「成駒屋の中村鴈治郎でございましょう?」
半左衛門「わしはあんな役者は大嫌いだ」
小五郎「私は好きでございますが…」
半左衛門「わしは松嶋屋の片岡愛之助が好きだ」
小五郎「あんな役者はだめでございます」
半左衛門「最近世間を騒がしておるが…」
小五郎「おめでたいことだからいいじゃないですか」
半左衛門「汗をかいておるな」
小五郎「汗をかいております」
みたいなやり取りがある。(うろ覚えなので、細かい部分は違うと思います。)
「ちっともめでたくないわい!」と毒づいたのは私だけではないと思う。
半左衛門小五郎の正体を見抜き、追手が出石に迫っていることを告げて手形をくれる。

小五郎はおすみと城崎温泉へ逃げる。
そこへ宿屋の娘・おたき(純弥丈)がやってきて、小五郎に「お子ができたのに、不注意から水子にしてしまいました」と告げたり、幾松がやってきて、おすみに「小五郎はんと別れてください」と告げたり、現代だったらド修羅場間違いなしだが、“上方のをんな”は誰もかれも健気で聞き分けがよい。
この芝居の一番の見せ場は、この場面のおすみの嘆きだと思う。
吉弥丈が演じる耐える女性は素晴らしい。
おすみは潔く身を引き、小五郎は志を果たすべく、幾松と長州へと旅立つ。

ご当地ネタとマスコミで話題のネタで受けをとってはいるが、物語としてはイマイチ。
愛之助丈も前半の“二股男”らへんの芝居はイマイチな感じがしたが、後半の志を取り戻すあたりから持ち直したかな。
物語としてきれいにまとまってるんだけど、パンチが弱いかな。逃げてる最中の話だから仕方ないと言えば仕方ないんだけど、おすみを主役にした方が面白くなるのではなかろうか。

そうそう、小五郎が幾松に説得された後、おすみのことをほとんど気にかけてないのが不満。
もっと申し訳なさそうにしろ。ってか、感謝しろ。
おすみみたいに綺麗に健気に身を引く女性ばかりだったら、男は苦労しないんだぞ!(って、演じている方は骨身に染みていると思いますがね。懲りてないけど。)


口上

上手から雁治郎丈、壱太郎丈、愛之助丈、寿治郎丈、吉弥丈。寿治郎丈が震えてるので具合が悪いのかと心配したが、笑いを堪えてるだけだったw

※一言一句↓の通りに喋っていたわけではありません。大体こんな感じのことを喋っていた程度に思っていただければ…

愛之助丈。
口上が一番の人気演目になりました。
「毎回1つは初役を」ということだったが、8回目になるとだんだん出し物がなくなってくる。
雁治郎兄さんが襲名披露中に、来月南座で襲名披露があるのに、襲名の前の月に出て下さって嬉しい。
皆さま、顔見世もぜひご覧ください。

壱太郎丈。
父と最古参の寿治郎さんが一緒で嬉しい。
そして、いつも通りお土産の紹介。
懐や袂から玄さんやコーちゃんのグッズを取り出し、「皆さま、ぜひ、どちらかを連れて帰ってください」

雁治郎丈。
前に出た時と名前は変わりましたが、壱太郎の父ということは変わってません。
「出石では私よりせがれの方が有名で、歩いていると(指をさしつつ)『壱太郎さんのお父さん』『壱太郎さんのお父さん』… 雁治郎です」
1回や2回でなく、8年も公演が続くのは皆さんのお力があってこそ。

吉弥丈。
「星雲の座」は実際にあった話をもとにしていて、史実のおすみは14歳。
私と10くらいしか違いませんが、14歳をどう演じようかと考えていたら、台本ができてきたら姉さん女房になっていました。
「いかがだったでしょうか?」(場内拍手)
「この拍手を胸に千秋楽まで頑張ります」

寿治郎丈。
去年は意地悪ばあさんでした。
今年で後期高齢者、77歳です。

毎度のことながら口上はとにかく面白くて、役者さんもうつむいて笑っていた。


蜘蛛絲梓弦

永楽館仕様のダイジェスト版というか簡易版という感じなので、猿之助丈の「蜘蛛絲梓弦」と比べると物足りないが、永楽館の舞台装置で全く同じものを上演するのは不可能だし、あの狭い舞台でよく工夫して早替わりをしていたと思う。

貞光(國矢丈)と金時(千次郎丈)にお茶を持ってくるのは童ではなくて小姓(愛之助丈)。まあ、座敷童みたいな童よりは、小姓姿の方が見た目的にいいよね。
それから、舞台上で太鼓持(愛之助丈)に早替わり。
座頭(愛之助丈)は普通に花道からやってきたが、セットが組めないだろうから仕方ない。
三味線は弾く振り。猿之助丈は自分で弾いていたような気がするんだけど、別の演目だったかなぁ。ちょっと覚えてない。
貞光と金時があやかしを取り逃がし、「面目次第もございません」と客席に向かって謝る場面はなし。

源頼光(壱太郎丈)の寝所に、薄雲太夫(愛之助丈)が現れる。
舞台がせりあがってくるのだが、永楽館では人力で動かしている。
痩せたからか、傾城姿は似合っていたし、仕草もおかしくなかったと思う。
若い頃習ったことや覚えたことは身になっていることが多いというが、女形修業が染みついているのかな。
ただ、えび反りがなかったのが残念。

蜘蛛の精(愛之助丈)が本性を現し、頼光、貞光、金時らと葛城山で対峙する。
最後は客席まで蜘蛛の糸が飛んでくる。
押し戻しはなく、台の上で幕。

拍手が鳴りやまず、幕が開いて蜘蛛姿の愛之助丈がお辞儀。壱太郎丈、國矢丈、千次郎丈も舞台に呼ばれる。
愛之助丈が「本来、歌舞伎にカーテンコールはないのですが、ずっと拍手をしてくださっているので、幕を開けてもらいました」とかなんとか言ってご挨拶。
壱太郎丈は「出石を楽しんで帰ってください」
國矢丈は「初めて康楽館(←永楽館ですw)に出させてもらいました。お蕎麦大好きなのでまた呼んでください」
千次郎丈は「大好きな永楽館で大役をいただけて嬉しい。千秋楽まで精一杯勤めます」

いろいろとゲンナリすることが多いけど、永楽館の雰囲気がいいこともあり、楽しめる公演だった。

<ここから下は完全に余談です。>
歌舞伎座スペシャルナイトの「雨の五郎」を観た人が口をそろえて「下手になった」「お稽古不足が丸わかりだった」と話していたのが気になった。
私は見に行っていないし、踊りのことはわからないが、検閲のかかったブログのコメントに褒め殺しされる前に、軌道修正していただきたい。

役者殺すにゃ刃物は要らぬ、ものの三度も褒めりゃいい。

おまけ


↑「湖月堂」のワッフルと酒種饅頭。
幕間に食べた。ここのお菓子は本当に美味しい。


↑お土産。
「湖月堂」のお饅頭詰め合わせと栗むし羊羹、「招月庭」の栗納豆と黒豆煮、黒豆グラッセ。


↑「山下」の皿そば。
永楽館歌舞伎のチケットを見せると、割引してくれる。
小屋から近いので、開演前に駆け込んで、お蕎麦を食べてから観劇している。


↑このカレンダーも売っていた。缶バッチ付き。
永楽館で買うと消費税がかからないのでお得。