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松竹創業120周年 京の年中行事
當る申歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎
四代目中村鴈治郎襲名披露 南座

2015年11月30日(月)~2015年12月26日(土)

配役

昼の部(10:30開演)

第一、玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記(ごばんたいへいき) 山科閑居の場

大石内蔵助:三代目 中村扇雀
下僕岡平 実は高村逸平太:六代目 片岡愛之助
大石主税:初代 中村壱太郎
医者玄伯:初代 中村寿治郎
大石妻りく:初代 片岡孝太郎
大石母千寿:六代目 中村東蔵

第二、義経千本桜 吉野山(よしのやま)

佐藤忠信 実は源九郎狐:三代目 中村橋之助
静御前:四代目 坂田藤十郎

第三、心中天網島 玩辞楼十二曲の内 河庄(かわしょう)

紙屋治兵衛:五代目 中村翫雀 改め 四代目 中村鴈治郎
紀の国屋小春:五代目 中村時蔵
江戸屋太兵衛:六代目 片岡愛之助
五貫屋善六:二代目 中村亀鶴
丁稚三五郎:初代 中村萬太郎
河内屋お庄:二代目 片岡秀太郎
粉屋孫右衛門:四代目 中村梅玉

第四、新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)

叡山の僧智籌 実は土蜘の精:十五代目 片岡仁左衛門
平井保昌:四代目 市川左團次
侍女胡蝶:初代 片岡孝太郎
渡辺源次綱:初代 片岡進之介
坂田公時:六代目 市川男女蔵
碓井貞光:初代 中村萬太郎
卜部季武:初代 中村国生
巫子榊:四代目 中村梅枝
番卒藤内:六代目 片岡愛之助
番卒次郎:三代目 中村橋之助
番卒太郎:三代目 中村扇雀
源頼光:四代目 中村梅玉

夜の部(16:45開演)

第一、信州川中島合戦(しんしゅうかわなかじまかっせん) 輝虎配膳

長尾輝虎:四代目 中村梅玉
勘助妻お勝:五代目 中村時蔵
直江山城守:三代目 中村橋之助
直江妻唐衣:三代目 中村扇雀
勘助母越路:二代目 片岡秀太郎

第二、四代目中村鴈治郎襲名披露 口上(こうじょう)

五代目 中村翫雀 改め 四代目 中村鴈治郎
幹部俳優出演

第三、玩辞楼十二曲の内 土屋主税(つちやちから)

土屋主税:五代目 中村翫雀 改め 四代目 中村鴈治郎
侍女お園:初代 片岡孝太郎
落合其月:二代目 中村亀鶴
河瀬六弥:四代目 中村梅枝
西川頼母:初代 中村寿治郎
晋其角:四代目 市川左團次
大高源吾:十五代目 片岡仁左衛門

第四、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)

武蔵坊弁慶:十一代目 市川海老蔵
源義経:初代 中村壱太郎
亀井六郎:六代目 片岡市蔵
片岡八郎:六代目 市川男女蔵
駿河次郎:四代目 市川九團次
常陸坊海尊:十七代目 市村家橘
富樫左衛門:六代目 片岡愛之助

データ

筋書

愛之助丈関連
舞台写真:「碁盤太平記」下僕岡平 実は高村逸平太:4枚
舞台写真:「河庄」江戸屋太兵衛:2枚
舞台写真:「土蜘」番卒藤内:2枚
舞台写真:「口上」:1枚
舞台写真:「勧進帳」富樫左衛門:5枚
109ページ:舞台写真「勧進帳」富樫左衛門(2013年1月浅草公会堂)

舞台写真

愛之助丈は、
「碁盤太平記」下僕岡平 実は高村逸平太が6種類(扇雀丈の大石内蔵助、壱太郎丈の大石主税との3ショット1種類を含む)
「河庄」江戸屋太兵衛が5種類
「土蜘」番卒藤内が2種類
「勧進帳」富樫左衛門が5種類

料金

一等席:25,000円
二等席A:12,000円
二等席B:9,500円
三等席:7,500円
四等席:5,500円
特別席:27,000円
筋書:2,000円

雑誌

『演劇界』2016年2月号

愛之助丈関連
「二0一五年歌舞伎総ざらい」の記事の中で名前が出ている。
28ページ:舞台写真「男の花道」田辺嘉右衛門(モノクロ 1枚)
31ページ:舞台写真「鯉つかみ」鯉の精(モノクロ 1枚)
57ページ:舞台写真「勧進帳」富樫左衛門(カラーグラビア)
68~69ページ:舞台写真「碁盤太平記」下僕岡平 実は高村逸平太(モノクロ 5枚)
70~71ページ:舞台写真「河庄」江戸屋太兵衛(モノクロ 2枚)
73ページ:舞台写真「土蜘」番卒藤内(モノクロ 1枚)
77ページ:舞台写真「口上」(モノクロ 1枚)
78ページ:舞台写真「勧進帳」富樫左衛門(モノクロ 3枚)
92~94ページ:吉例顔見世興行(南座)の劇評
123ページ左側:壽初春大歌舞伎(松竹座)の紹介(1/3ページ)
125ページ上段:第七回システィーナ歌舞伎の紹介(1/3ページ)
演劇界 2016年 02 月号 [雑誌]

感想

昼の部

24日に3階前方にて観劇。

↑席からの眺め。

碁盤太平記

初めて見る演目。
大石主税(壱太郎丈)と医者の玄伯(寿治郎丈)が碁を打っているところへ岡平(愛之助丈)がやってくる。
旅の僧に扮した赤穂浪士が密書を主税に渡し、去っていく。岡平はその様子をうかがっており、いかにも怪しい。
大石内蔵助(扇雀丈)が廓から芸妓らを連れて戻ってきて、妻のりく(孝太郎丈)、母の千寿(東蔵丈)と縁を切る。
扇雀丈は綺麗な女形のイメージが強いけど、立役をしてもかっこいいし、声がいい。

玄伯と岡平は実は吉良の間者で、岡平は花道でガラッと調子を変えて玄伯と話をする。
無筆の岡平が密書を読んでいるところを目撃した主税は、岡平に斬りつける。
そこへ内蔵助が現れ、「母に悪口雑言吐いてまで本懐を遂げようとする自分の胸の内をわかってくれ」と岡平に語り、それに打たれた岡平は碁盤を使って吉良邸の内部を教える。
内蔵助、主税とりく、千寿が人目を忍んで別れを惜しむ場面は泣けた。やはり忠臣蔵はいいなぁ…

吉野山

浅黄幕が落ちると、桜満開の吉野山に静御前(藤十郎丈)がたたずんでいる。その若さに、藤十郎丈っておいくつだったかしらと思わず考えてしまった。
静御前が鼓を叩くと、忠信に化けた源九郎狐(橋之助丈)が現れる。
美しい景色と踊りを眺めているうちに、幕。

河庄

紙屋の丁稚(萬太郎丈)が小春(時蔵丈)におさんからの手紙を届けに来る。
その後、お庄(秀太郎丈)と二人で太兵衛(愛之助丈)の悪口を言っていると、当の太兵衛と善六(亀鶴丈)がやってくる。「封印切」の八っつぁんが2人になった感じだろうか。
2人とも生き生きと嫌なヤツを演じていて、息もぴったり。
善六が箒を持って三味線を弾く真似をして2人で歌うところがおかしい。(亀鶴丈は昼の部これだけ。もっといいお役がついてもいい役者さんだと思うんだけどなぁ。)

治兵衛(鴈治郎丈)がとぼとぼと花道から現れ、小春の心変わり(の振り)を見て、逆上する。
兄の孫右衛門(梅玉丈)は事情を察した上で、2人を別れさせようと腐心する。
梅玉丈は関西弁も素敵だった。(私は関西弁ネイティブでないので、特に違和感は感じなかった。)
小春に「誰からの手紙だ」と詰め寄る治兵衛には本当にムカツク。自分には妻も子供もいるくせに!
そもそも、小春は治兵衛のどこがそんなにいいのかさっぱりわからない。これ、“できた奥さんがいるから素敵に見えるマジック”にかかってるだけで、おさんに見捨てられたら治兵衛なんてそれこそ紙屑だと思うぞ。
鴈治郎丈は好きだが、紙治はやっぱり嫌いだ。(私の中で、紙治は「すし屋」の維盛と並ぶ“大っ嫌いな歌舞伎の登場人物”の2トップだったりする。)

土蜘

平井保昌(左團次丈)が舞台に登場し、源頼光(梅玉丈)を見舞う。
胡蝶(孝太郎丈)が薬を持参し、舞を舞って去っていく。
花道には、いつの間にか僧智籌(仁左衛門丈)が…(3階で見ていたから、登場に全く気付かなかった。) 太刀持(千太郎丈)があやかしであると見抜き、頼光に声をかける。
智籌は蜘蛛の糸を投げつけ、花道を逃げていく。3階席なので途中までしか見えないが、腰をかがめた姿が蜘蛛っぽいと思った。

番卒太郎(扇雀丈)、番卒次郎(橋之助丈)、番卒藤内(愛之助丈)、巫子榊(梅枝丈)、石神の和む場面を挟んで、保昌と四天王の蜘蛛退治の場面に移る。
古墳の中から土蜘の精(仁左衛門丈)が登場し、立ち回りになる。
松羽目物だからかあまり派手さはないが、土蜘の精は流石の迫力。
最後は保昌と四天王が並ぶ中、土蜘の精が糸を投げつけて、幕。

2年ぶりの顔見世を満喫した。

夜の部

23日に前方中央にて観劇。

輝虎配膳

歌舞伎を見始めた頃、我當丈の輝虎で見たことがある。
その時、秀太郎丈はお勝だったが、今回は越路。パッと見は可愛らしいお婆ちゃんなのだが、お勝(時蔵丈)を伴って花道を進む姿は威厳がある。
直江山城守(橋之助丈)と唐衣(扇雀丈)は美男美女で眼福。

輝虎(梅玉丈)が怒って着物を脱ぐ場面では笑いが起きる。3枚くらい脱いでたけど、越後は寒いから着こんでるんだろうか?
お勝(時蔵丈)が琴を弾きながら必死に取りなす場面はすごい。普通に床に置いて弾くのではなく、持って弾くのだから余計に大変だと思う。
女形は楽器のお稽古もしないといけないから大変だなぁ。
私にとっては久しぶりの“大歌舞伎”で、一幕目から満足した。

口上

ずらりと役者さんが並び、まずは仁左衛門丈がご挨拶。
女形の拵えをしているのは秀太郎丈だけだった。
時蔵丈、孝太郎丈が見慣れぬ立役の姿だったので、一瞬「誰!?」と思ってしまった。
海老蔵丈が「(義経の)壱太郎さんのお稽古を鴈治郎兄さんが見ていて、それを山城屋のおじさま(って言ったと思う)が見ていて、じーんとしました」というようなことを言っていた。ご本人はお父様を亡くされたのだと思うと、聞いているこちらがじーんとなった。
愛之助丈は「お兄さんには子供のころから可愛がっていただき、今も可愛がっていただいています」というようなことを話していた。
我當丈も列座されていたが、平伏するのが辛そうで、後ろでお弟子さんが支えていた。通常なら両手をついているのに、体を起こしていらしたのが心配だ。またお芝居で拝見したい。
藤十郎丈は短めの口上、最後に鴈治郎丈がご挨拶。舞台いっぱいに役者さんが並ぶ様子は壮観だった。

土屋主税

雪の降る中、俳諧の宗匠・晋其角(左團次丈)の屋敷に、大高源吾(仁左衛門丈)がやってくる。
久しぶりに拝見した仁左衛門丈は、相変わらず超絶二枚目で、雪も滴るいい男だった。
源吾は討ち入り前の最期の別れということを隠し、「西国に士官が決まったので旅立つ」と話す。
それを聞いた落合其月(亀鶴丈)は、「御恩を忘れて二君に仕える畜生」だの「豚」だのと源吾を罵る。
其角が源吾に句を送ると、源吾は附け句をして去っていく。

ところ変わって、土屋主税(鴈治郎丈)の屋敷ではお園(孝太郎丈)が琴を弾いている。
鴈治郎丈ご本人はゆったりおおらかなイメージなのだが、せっかちな殿様という感じがよく出ていた。
すったもんだした後、赤穂浪士が吉良邸に討ち入っていることがわかり、其角が喜び騒ぐ。
本懐を遂げた源吾が土屋邸に使者としてやってきて、其月が先ほどの無礼を詫びる。
源吾が去った後、土屋侯の「浅野殿はよい家来を持たれたなぁ…」という台詞で幕。

勧進帳

「勧進帳」を見るのは、3年近く前の浅草以来2回目。(大御所の勧進帳も見ておくべきだろうかと思いつつも、結局は果たせないまま。)
その時も弁慶は海老蔵丈、富樫は愛之助丈だった。今回の義経は壱太郎丈で、若いけど上品だった。
太刀持(福之助丈)が富樫の後ろでお行儀よく控えているのを見て、愛之助丈も子役の頃はこんな感じだったんだろうかと思った。
弁慶が帝に言及した時、富樫は少し頭を下げた。関を通すと決めた時は、一瞬苦悩の表情を浮かべる。些細なことだけど、忘れないようにメモっておく。
弁慶も富樫も熱演で、引き込まれてじっと見ているうちに終わってしまった。
終演時間がそれほど遅くないこともあるだろうが、夜の部最後の演目なのに席が埋まっており、途中で席を立つ人もいなかった(と思う)。
やはり、愛之助丈には歌舞伎に出てほしいとしみじみ思った。

おまけ

舞台写真はいくつか売り切れていたが、翌日に入荷していた。
松竹座と同じように、紙に書いて売店に注文し、次の幕間で受け取るシステムになっていた。
売り切れた写真がほしかったら郵送してくれるそうだ。(5枚で送料120円)


↑夜の部の幕間に食べた「松葉」の俵そば。
あんかけがあったかくて美味しかった。


↑昼の部の幕間は劇場で買った「花萬」の萬巻き。
保温材が入っており、幕間に開けても温かった。玉子がふわふわで美味しかった。

昼夜の短い幕間に「三笠」、「夕霧」も食べた。


↑ロビーの竹馬。


↑ロビーの竹馬。


↑お土産は「祇園辻利」の「つじりの里」「ぎおんの里」「ぎおんの小路」。
京都駅地下の「京名菓 匠味」で買った「夢の京浮橋」と「栗阿彌」。ここは有名な和菓子が個別に買えるので嬉しい。