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中日劇場開場50周年記念公演
中日劇場四月花形歌舞伎

2015年4月4日(土)~2015年4月26日(日)
【貸切】6日(月)昼の部、21日(火)昼の部・夜の部、24日(金)昼の部

配役

昼の部(11:00開演)

一、操り三番叟(あやつりさんばそう)

三番叟:初代 市川右近
後見:六代目 市川男女蔵
千歳:三代目 澤村宗之助
翁:八代目 市川門之助

二、雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)
市川猿之助早替り並びに宙乗り相勤め申し候)

中村雪之丞、母ゆき、闇太郎:四代目 市川猿之助
脇田一松斎:八代目 市川門之助
土部駿河守 後に土部三斎:六代目 市川男女蔵
むく犬の源次:初代 中村萬太郎
門倉平馬:二代目 坂東巳之助
中村菊蔵:初代 中村種之助
軽業のお初:五代目 中村米吉
丑三ツの次郎:初代 中村隼人
三斎娘浪路:初代 中村梅丸
広海屋藤兵衛:六代目 嵐橘三郎
侍女滝乃:三代目 澤村宗之助
おもと:五代目 坂東竹三郎
孤軒先生:初代 市川右近
中村菊之丞:六代目 片岡愛之助

夜の部(16:00開演)

新・八犬伝(しん・はっけんでん)
片岡愛之助四役早替り宙乗り相勤め申し候

崇徳院、扇谷定正、網干左母次郎、犬飼現八:六代目 片岡愛之助
犬山道節:初代 市川右近
犬田小文吾、足利成氏:六代目 市川男女蔵
犬塚信乃:初代 中村萬太郎
犬川荘介:二代目 坂東巳之助
犬村角太郎、里見義成:初代 中村種之助
伏姫:五代目 中村米吉
犬坂毛野:初代 中村隼人
犬江親兵衛、濱路:初代 中村梅丸
内儀おしま:三代目 澤村宗之助
亀篠:五代目 坂東秀調
仙女:八代目 市川門之助

口上:四代目 市川猿之助


データ

筋書

愛之助丈関連
37ページ:出演者プロフィール(舞台写真「新・八犬伝」扇谷定正、カラー)

料金

S席:15,000円
A席:10,000円
B席:7,000円
筋書:1,500円

雑誌

『家庭画報』2015年6月号

愛之助丈関連
230~241ページ:特別対談 市川猿之助×片岡愛之助 歌舞伎のためにできること
・231ページ:素顔写真(カラー)
・236ページ:舞台写真「新・八犬伝」犬飼現八
・236ページ:舞台写真「新・八犬伝」網干左母次郎
・238ページ:楽屋での写真(カラー)
・239ページ:素顔写真(カラー)
・240~241ページ:舞台写真「雪之丞変化」中村菊之丞(劇中劇「関の扉」大伴黒主)
・対談中の写真(モノクロ×2)もあり。
家庭画報 2015年 06月号 [雑誌]

『演劇界』2015年6月号

愛之助丈関連
76ページ:舞台写真「新・八犬伝」犬飼現八(カラーグラビア)
98ページ:舞台写真「雪之丞変化」中村菊之丞(劇中劇「関の扉」大伴黒主)(モノクロ 1枚)
99ページ:舞台写真「雪之丞変化」中村菊之丞(モノクロ 2枚)
100~101ページ:舞台写真「新・八犬伝」崇徳院/扇谷定正/網干左母次郎/犬飼現八(モノクロ 各2枚)
110~111ページ:四月花形歌舞伎(中日劇場)の劇評
131ページ下段:五月花形歌舞伎(明治座)の会見の様子(1/2ページ)
132ページ下段:六月花形歌舞伎(松竹座)の紹介(1/4ページ)
演劇界 2015年 06 月号 [雑誌]

感想

昼の部

11日に前方中央にて観劇。

操り三番叟

まずは千歳(宗之助丈)と翁(門之助丈)が登場して舞う。
それから、後見(男女蔵丈)が出てきて、箱から三番叟(市川右近丈)を取り出す。
後は、三番叟の軽快な踊りを楽しむのみ。
人形なので涼しい顔をしているのだが、激しい運動量なのでお顔から汗が流れていた。
改めて、歌舞伎役者さんの身体能力ってすごいなぁと思った。

雪之丞変化

※思いっきりネタバレしてます。※

お芝居を見る前、「菊之丞(愛之助丈)=雪之丞(猿之助丈)の父=冒頭で殺される=愛之助丈の出番は少ない?」と思い込んでいたが、菊之丞は雪之丞の芝居の師匠で、最後の最後まで出番があった。
BGMで歌謡曲(といっても、音楽だけで歌は入っていない)みたいなのが流れるので、それにちょっと違和感を感じた。

幕が開いたら、そこは廓。
長崎奉行・土部駿河守(男女蔵丈)らが飲んでいる。これがまた、絵にかいたような悪いヤツ。
舞台が長崎だけあって、かぴたん(段之丈)なるあやしい外国人も参加している。
雪太郎(後の雪之丞)の父は抜け荷の罪を着せられ獄中で自害、母・ゆき(猿之助丈)は土部駿河守に横恋慕された挙句に殺される。
雪太郎役の子役さんがすごく可愛かった。

時は流れ、雪太郎は菊之丞一座の人気女形・雪之丞となる。
盗人?の軽業のお初(米吉丈)とむく犬の源次(萬太郎丈)のやり取りが微笑ましい。
闇太郎(猿之助丈)の部下・丑三ツの次郎(隼人丈)が「親分に挨拶しろ」と忠告に来るが、お初は取り合わない。
毎回書いているが、米吉丈が可愛すぎる。おっとりしたお嬢さんの役もいいけど、こういう蓮っ葉な役も似合うんだな。
萬太郎丈は笑い上戸なのか、たまに素で笑っているように見えた。隼人丈は以前見た時より上手になってた。

劇中劇で『関の扉』を見ることができて嬉しかった。
土部三斎(=土部駿河守)と娘の浪路(梅丸丈)、侍女の滝乃(宗之助丈)が劇中劇を桟敷で見ている。
劇中劇の終わりで「中村菊之丞さん江、中村雪之丞さん江」と書かれた幕が引かれ、芝居の方もここで幕間かと勘違いした。
浪路は将軍の側室にあがる予定なのだが、すっかり雪之丞贔屓になったもよう。これまた毎回書いているが、梅丸丈も可愛すぎる。

場面は移り、劇中劇の舞台裏。舞台奥に先ほどの幕が反対になったものがかかっている。
菊之丞は上方弁。愛之助丈の上方弁は違和感ないのだが、大伴黒主姿での上方弁なので、なんか不思議な感じ。後方に、黒衣姿の愛一郎丈の姿が見える。

それから、雪之丞と浪路が仲良くなったり、お初が雪之丞に恋煩いしたり、雪之丞が剣の師匠・脇田一松斎(門之助丈)から一巻(実は白紙)を伝授されたり、それを妬んだ兄弟子?の門倉平馬(巳之助丈)が一巻を奪ったり、闇太郎がお初を口説いたり、闇太郎が広海屋(=雪之丞の敵の一人)から有り金を奪ったり、菊之丞一座が敵討ち応援団になったり、浪路が土部三斎の実の娘ではないとわかったり…
いろいろあって、雪之丞は浪路を連れて逃げる。駆けこんだ先が、孤軒先生(右近丈)の家。そこに、昔両親に使えていたおもと(竹三郎丈)が住んでいる。孤軒先生がすごくいい味を出していて、登場のタイミングが絶妙で噴いた。

そこへ追手がやってきて、闇太郎と丑三ツの次郎が雪之丞の加勢に現れる。
闇太郎は“江戸の闇を支配する”との触れ込みだが、その割には明るいというか、陽性のイメージ。満月をバックに登場した時は、「ドヤアァァァ!」という声が聞こえてきそうだったw
猿之助丈は戸板に隠れながら、雪之丞と闇太郎の早変わりを見せる。見事なんだけど、正面を向かなくなったら吹き替えだというのがなんとなくわかる。
結局、浪路は奪い返されてしまったようだ。

さて、門倉平馬が雪之丞を討とうとして、駕籠を止める。駕籠を止めるのは2回目。
駕籠屋1「このやり取り、前にもあったような…」
駕籠屋2「お客さん、同じ場面ばかりじゃいけねぇや。」
門倉「やかましい!」
…みたいなやり取りがあり、駕籠を開けると、中にいたのは師匠の一松斎。
一松斎は門倉の刀を打ち落とし、「いつでも戻ってこい」と言って去っていく。門之助丈はこういう渋いお役が似合う。
門倉は片目に傷があり、屈折した雰囲気がよく出ていた。

ここでまた劇中劇。
『本朝廿四孝』の「奥庭」。
雪之丞が八重垣姫。
菊蔵(種之助丈)が白い狐のぬいぐるみをあやつっている。
この場面は国立劇場視聴室の記録映像を見たことがある。でも、人形振りだったかどうかが記憶にない。(←ダメすぎる。)

舞台裏では、滝乃が菊之丞に「この次お嬢様を連れだしたら、芝居をできなくしてやる」と言い捨てて憎たらしげに去っていき、菊之丞が怒っている。
菊之丞は情の深い良い師匠だな。
孤軒先生が、警護の厳しい土部の屋敷に凧をに乗って入り込むことを発案する。菊之丞はノリノリで、雪之丞の衣装の指示まで出し、一座と盗人組が協力して凧を揚げる。
雪之丞は宙乗りで3階から退場せずに、Uターンして舞台に戻ってくる。
途中で凧を撃たれ、傘で着地するという演出がすごい。
無事屋敷に入り込んだが、哀れ浪路は土部に斬られてしまう。

雪之丞は敵を討つが、武士ではないのでお咎めを受けなくてはならない。しかし、目付け役になった孤軒先生が「“雪太郎”は討死した」ということにしてくれたので、雪之丞として役者を続けることができるようになった。
菊之丞一座は上方に戻ることになり、皆が別れを惜しむ。
闇太郎が現れないことについて、「来れない理由は雪之丞さんがよく御存じでしょう」「早変わりの吹き替えにしたらいい」などと笑いを取る。

ラスト、浪路にそっくりな娘さん(梅丸丈)が腹話術の人形(巳之助丈)を持って現れる。菊之丞が「お浪」って呼んでた気がするけど、気のせいかもしれない。実は浪路が生きてたってことならいいなぁ。
腹話術の人形はおかしすぎる。さっきまでニヒルなお侍やってた人と同じなんだから、役者さんってすごいわ。

最後は、「昼の部はこれぎり」で幕。
筋書によると、配役が決まってから当て書きしたそうで、道理で役者さんにぴったりな役ばかりだったんだと納得した。
そして、久し振りに猿之助丈のドヤ顔を堪能させていただきましたw

夜の部

11日に前方花道寄りにて観劇。
上演時間が初日より短くなっていた。

新・八犬伝

あらすじは2013年2月に松竹座で上演したものとほぼ同じなので省略する。
上演時間が初日より短くなっていた。
見ているうちに「そうそう、こんな話だった」と思い出した。
ちなみに、『南総里見八犬伝〈1〉 (岩波文庫)』(←すごく面白い)とは全くの別物。
スピーディな『雪之丞変化』と比べると、ちょっとテンポが悪く感じるかな。上演時間と休憩時間のバランスはもっと考えてほしいところ。

幕が開くと、猿之助丈が中央に座っており、少し長めの口上がある。流石にすらすらとよどみない。
崇徳院(愛之助丈)の怨霊と天狗とのやり取りの場面を経て、舞台は伏姫(米吉丈)の庭に移る。

扇谷定正(愛之助丈)は伏姫に振られた腹いせに、伏姫とそのおバカな弟・里見義成(種之助丈)を畜生道に落とす。
池に移った犬(のぬいぐるみ)が2人と同じように頭を抱えたり足を動かしているのが可愛い。
種之助丈は他の人たちが喋っている間も後ろでずーっとお馬鹿さんの芝居をしていて、役者としては当たり前かも知れないけど、個人的に好感度UP。

濱路は前回と同じで梅丸丈。
前回見た時、亀篠は秀太郎丈で、網干左母次郎(愛之助丈)に殺される時に背中が見えていたのが印象に残っていた。今回は亀篠(秀調丈)の背中は見えなかった。たぶん、衣文の抜き加減の差。

芳流閣での犬塚信乃(萬太郎丈)と犬飼現八(愛之助丈)の戦いの後、利根川で犬川荘介(巳之助丈)、犬村角太郎(種之助丈)、犬山道節(右近丈)、濱路らも現れて、だんまり。
芳流閣に乗ってたのは、名古屋名物・金のしゃちほこだったように思うけど、気のせいか?
だんまりで、愛之助丈が犬飼現八と網干左母次郎の早変わりを見せた後、崇徳院となって現れる。

崇徳院は空中を歩くように足を動かして、宙に乗って3Fへと消えていく。最後は「わははははは…」と少年漫画の悪役のような高笑いを残して、煙の中へと吸い込まれていく。
宙乗りの最中、客席から「らぶりーん! らぶりーん!!」と声を掛けている女性がいた。空気読めというか、崇徳院がどういう人物かくらい理解しておけ。

さて、遊郭で左母次郎が飲んでおり、旦開野太夫(隼人丈)を呼び出す。
最初配役を見た時「旦開野=犬坂毛野が隼人丈? 傾城の格好するの?」と驚いたけど、意外に合ってるというか、綺麗だった。立ち上がると「でかっ!」という感じだが、毛野は男性だから背を盗む必要はない。
梅丸丈は昼夜同じような非業の最期。不憫で可憐な女性が似合うから仕方ない…のか?

最後は、扇谷定正・崇徳院と八犬士が対決。
この辺りになると、吹き替えの役者さんの顔を隠してない。
メインの犬士が8人もいるので、立ち回りは豪華。
犬田小文吾(男女蔵丈)が刀を投げて、犬飼現八がキャッチするところはすごかった。次々出てくる若手の立ち回りを見るのは楽しいし、右近丈、男女蔵丈が出てくると、安心感というか安定感がある。
犬江親兵衛は声を聞くまで梅丸丈と気付かなかった。

最後は崇徳院が台の上に乗り、八犬士がずらりと並んで幕。
楽しかったけど、昼夜通しで見るのはさすがに疲れるようになってきた。
夜の部は千穐楽にもう一度見に行く。

おまけ

中日劇場は昔一度行ったきりで、売店がどうだったか記憶になかったので、名鉄百貨店の北海道展で昼夜のお弁当買ってから劇場へ。


↑昼の部の幕間に食べたお弁当。


↑場内で買った白桃ソフトクリーム。
どら焼きとか美味しそうなものがいろいろ売ってた。(次に行った時に食べようと思っている。)


↑夜の部の幕間に食べたお弁当。

夜の部(千穐楽)とおまけ


26日(千穐楽)を前方中央にて観劇。
今月2回目なので、簡単な感想のみ。

千穐楽で客席が盛り上がってたのと、夜の部だけの観劇で疲れがなかったからか、先日よりも見ていて面白かった。
改めて見てみると、愛之助丈は4役のうち3役が同じ人(崇徳院≒崇徳院が乗り移ってる扇谷定正=網干左母次郎実は扇谷定正)なので代わり映えがしないのと、主役と言うより狂言回しっぽい役なので、座頭が演じるならヒーローっぽい役の方がいいんじゃないかな、と思う。(犬飼現八はヒーロー側だけど。)
その分、若手1人1人に見せ場があって、若手が頑張ってるのを見るのは楽しい。

いくつかの場面で萬太郎丈が笑ってるように見えたが、何かツボに入ってしまったのか、堺雅人さんや小日向さんみたいに普通にしてても笑って見えるタイプなのか…
しつこいようだが、米吉丈と梅丸丈は可愛い。立ち役では種之助丈の動きがきびきびしていて好きだ。

早替わりについては、吹き替えの顔が見えてるので、替わった時の驚きが薄くなる。それがどうにかならないかな。あと、原作が長編なので、説明台詞が多い。そのあたりも改善してほしい。

最後、幕が閉まってからも結構長く拍手が続いてたけど、カーテンコールはなし。
着物姿の女性が多くて、客席も華やかだった。


↑幕間に食べたマンゴーソフトクリーム。


↑幕間に食べた生どら焼き(ショコラ)