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天崎空也による東條海都の考察
俺とまったく同じ顔をしていながら、俺と違う人間。
性格はいったって温和。大抵のことはあの、つかみ所の無い笑顔で流してしまう。許すのでもなく、怒るのでもなく流す。
なににも本気にならず相手にしていない。
どこまでも、自分の世界にはいっていて、どこまでも他人を立ち入らせない。
究極の自己中だ。
そんな海都にちょっとイラつくこともある。
けど、そうかと思うと妙に人に気を使ったり、遠慮したりすることもある。・・・たまに。
つまり、よくわからない、そんなヤツだ。けど、やっぱり双子だからかな?
海都といると、なんだか安心する。それは、啓一に感じるのとは違う安心感で、ちょっとくすぐったい。
海都の変なところは、いつも青い浴衣を着ているところ。絵柄はその時々で違うけど、いつも決まって青。
どうして浴衣なのかって聞くと、あの笑顔で趣味だっていってた。
変な趣味だ。
それから、あんまり授業には出てない。・・・というか、寮を空けることも少なくない。夜遅くに帰ってきたり、朝方だったり、3日も4日も帰ってこなかったり。
最初は心配してたけど今は、またか。って思うくらい。
海都はかなり、特化クラスの特権を活用している。
手首の傷について。何気なさを装って聞いてみた。
そしてら、傷を見せてくれた。普通そういうのって隠したいものじゃないのかな?
中1の時に、切ったらしい。詳しい事情は聞けなかったけど、もぅ吹っ切れたって言ってた。
吹っ切れたなら、まぁいいか。ってそれ以上追求しなかった。
海都はお金持ちの家に養子に出されたって言ってた。義父さんも義母さんも義兄さんもとっても優しいって言ってた。
何不自由ない家に行った海都。
俺の小学生時代とは比べ物にならないくらい幸せだったであろうことが、海都の話から想像できた。
けど、そんな海都だって幸せだけじゃなかったんだ。って思うと安心した。
安心して、その後自分の醜さに嫌悪した。けど、啓一はそれでいいって言ってくれる。その言葉に救われた。
海都、よくわからないヤツだけど、嫌いじゃない。
だから、だから君に知られたくないことがあるんだ。
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