日の光が窓からベッドに差し込んで、その暖かさに気づいて目を覚ました。
裸のまま毛布にくるまって、ぐったりと力なく眠っていたナヴィは、目を開いて寝転んだまま周囲を見回した。ベッドの足下には、脱いだ服が散らばっていた。体が壊れそうだ。無理に押し入られてガスクを受け入れ続けて、痛みやだるさを覚えながらも心が満たされて、ナヴィは毛布を抱きしめながら頬を緩めた。
好きだよ。
考えると恥ずかしくなって、ナヴィが毛布に顔を押しつけて悶えていると、ふいにドアが開いてガスクが入ってきた。
「おい、もう朝だぞ。まだ寝てんのか」
そう言って水を入れた桶をテーブルの下に置いて、ガスクはナヴィの顔を覗き込んだ。毛布に顔を突っ込んだまま、髪をくしゃくしゃにして耳まで赤くなったナヴィを見て、その肩をつかむとガスクは笑いながら毛布を無理矢理引きはがした。
「起きてんだろ」
「わっ、やめてよ!」
慌てて取り上げられた毛布をつかむと、ナヴィは急に迫ったガスクの目を見つめた。軽くキスをして、ガスクは毛布ごとナヴィを抱きしめた。ガスクの太い腕がナヴィの体を支えると、ナヴィは身動きが取れずに抱かれたまま呟いた。
「体痛い」
「え?」
ガスクが聞き返すと、ナヴィはガスクに抱きついてキスを返してから言い直した。
「ガスクが無茶するから、体が痛いよ。だるいし、夜が明けなきゃよかったのに」
甘えた声でそう言って、ナヴィはガスクの腕をつかんだままベッドから降りた。ガスクが毛布をナヴィの体にかけると、ナヴィはガスクを見上げてわずかに笑みを見せた。
「寺院に戻るんだろ。準備しなきゃ」
「そうだな。朝メシ食ってからな」
ナヴィの髪をちょいちょいと整えて、ガスクは床に落ちたナヴィの服を拾い上げた。ユリアネが心配してるかも。服を身につけながらナヴィがガスクを見ると、ガスクは夕べ持ってきたかごからパンを取り出しながら答えた。
「一応、遅くなるかもとは言っといたけどな」
それから返事がないナヴィに気づいて、振り向いて眉を潜める。
「何だよ、その顔は」
「ガスク、夕べからそのつもりだったんだ…スケベ」
「バカ。お前と話してたら遅くなるだろうと思って、そう言っただけだ」
赤くなってガスクが声を張り上げると、ナヴィは冗談だよと言って笑った。
二人でテーブルについて食前の祈りをそれぞれに済ませ、ガスクが水の入った瓶のコルクを抜いていると、ナヴィはパンを取り分けながら口を開いた。
「ガスク、サムゲナンに帰るんだね」
ナヴィからパンを受け取ってガスクがそうだなと答えると、ナヴィは自分のパンをちぎって口に運んでから、向かいに座るガスクを見上げた。
「あの…」
「駄目に決まってんだろ」
「まだ何も言ってないのに」
ナヴィが唇を尖らせると、ガスクはパンを噛みちぎって口の中で咀嚼しながら言葉を続けた。
「フリレーテに会いにいくつもりだろ。駄目に決まってんだろ。今度ばっかりは、行けとは言ってやれないぞ。フリレーテは王宮にいるんだぞ」
「分かってるよ…でも」
「駄目だ。それに、会って何を話すんだ。お前が何を言っても、あいつはお前を憎むことをやめないだろう」
目を伏せてコップを取り上げると、水を飲んでガスクは息をついた。
少しだけ思い出した。
夢によく出てきた赤い髪の子供。ルイカ、あれはルイカだったんだ。
本当にあいつに会いにいかなければいけないのは、俺の方なのに。
「とにかく、駄目だからな。一緒にサムゲナンに戻るんだ」
「…」
黙ったままパンを口に運んで、ナヴィは目を伏せた。分かってんのかこの野郎。その様子を見て小さく息をつくと、ガスクはナヴィのコップに瓶から水を注いだ。
|