こんな時なのに、バカみたいだ。
アントニアの唇や舌を首筋に感じながら、荒い息を吐き出してフリレーテはアントニアの背に腕を回した。
政務室のソファに押し倒され、裸のまま抱き合っていた。一度、衛兵が様子を見にノックをして、ドアを開け、ソファの背からアントニアの髪とフリレーテの細い足首が覗いているのを見て慌ててドアを閉めた。こんな時なのに、何をしてるんだろう。バカみたいだ。なのに遮ることができない。アントニアの顔を見上げて、そのはしばみ色の目をジッと見つめると、フリレーテは微笑んだ。
今さら気づくなんて。
この男を愛してしまったことに。
「フリレーテ?」
アントニアがかすれた声で名を呼ぶと、フリレーテはアントニアの腰に足を絡めた。さっき王妃が言ってたけど。いたずらっぽく笑って言ったフリレーテを見ると、アントニアは怪訝そうに眉を潜めた。
「このまま心中するのも、いいかもな」
「私と? それは不本意だろうに」
苦笑してアントニアが答えた。足を抱えられて、フリレーテはんっと声をもらしてからアントニアの頬に手を伸ばした。この男はどこまでバカなんだ。こんなことになっても、まだ気づいていないんだ。
愛してるんだ。
俺は、ルイカとは違う心で、いや、ルイカの延長線上かもしれない、俺はお前を愛してる。
でなければ、今こんなにも穏やかな気持ちでいられるはずがない。
「アントニア、もっと抱いて」
フリレーテが目を細めて囁くと、アントニアはフリレーテの肩を右腕で抱えて体を密着させた。そのまま腰を押しつけると、自身をフリレーテの中に徐々に押し込んだ。あっというフリレーテの乱れた声が上がると、アントニアはフリレーテの両足を抱えてその表情を見つめた。
その目に焼きつけるように。
広い政務室は少し寒くて、抱き合って触れた肌だけが温かかった。何も言わずに互いを抱きしめて、夢中で体を繋いだ。今、この時だけは全てを忘れて二人きりでいたかった。アントニアがフリレーテの膝をつかんで腰を突き立てると、フリレーテはアントニアの手に触れたまま息を乱してアントニアを受け入れた。
|