ハリハリノ 玻璃の器の裏方話・平安時代にまつわることなど
 

13 文を書く紙

平安時代では、何かっちゃみんな文を書きます。消息とも呼ばれて、人物を見るのにとても重宝されていました。現代のメールのような感覚でしょうか。

第二章5で馨君が水良に文を書くと言いだして、それに対して若葉が「それなら氷かさねでよろしいですわね」と答えてますが、この氷重というのは冬に使われる色で、表が鳥ノ子色(卵の殻のような柔らかなアイボリー色)、裏が白のかさねです。薄物なので恋文にも使えないことはないですが、宮さま相手に家臣の子息も洗練されている所を見せよう、子供同士の季節の挨拶にしては雅びな感じでいいのでは…という若葉の思惑です(笑)
主に挨拶や機嫌伺いなどのやりとりに使われるものでは、ぽてっと分厚くて色気もへったくれもない白い紙が使われることもありましたが、これが恋文や雅びに通じた人の文ともなると、趣向を凝らした薄くて季節に合わせた色とりどりの紙が使われていて、これを中に書いた歌に合わせた季節の花や枝などに結んで贈ったようです。
この紙の色の取り合わせや、文字の書き方、墨の濃淡、どんな時にどんなかさねの紙を使うかとか、どんな花を添えるなどなど色んな要素が絡まって、この人はセンスがいいとか野暮ったいとか、そういうことが判断されたそうです。
この辺りもやっぱり現代人に通じるものがありますね。どんな顔文字を使うとこういうカンジの人とか、文で個性を表していたんですね。

有力者の家には、やはり紙も珍しい唐の紙などが集まりました。それに香を薫きしめて文使いと呼ばれる使者に渡して意中の家へ持って行かせるのですが、他の男の文使いとかち合ったり、文を間違えて別の家に運んでしまったりということもあったそうです。

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