「待ってよ、ハル。痛くない」
ヒナタの健康的な小麦色の背中や尻には、切り傷一つついていなかった。
ふたりに巻きついてたツタは切れたし、肉はレーザーに深く抉られたはずなのに。
「安全のため、人間の皮膚は切れないように改良されたんですよ」
「フリード!知ってたのか」
「やってみるまで自信はありませんでした」
フリードの手を借りて起き上がるハルは顔を真っ赤にし、プンプンに怒っている。
「きみは失敗したら!ヒナタが死んでもいいと思ったのか!?」
「いや、イチかバチか、成功しなきゃどっちみち、二人とも命はなかった」
「やってみるならせめて指先で試してからにするとか!・・・」
胸ぐらを掴んだとき、足元からヒナタの声がした。
「ああ〜〜〜仲間割れはよせ、もういい、ありがとう」
「ヒナタ!起き上がれるか?ほんとうにけがはないか!?」
「すまない。僕はしばらく動けそうにない。力が抜けて・・・」
ツルの粘液を性器の粘膜からもろに吸収したヒナタは、脱力成分を大量摂取し動けないようだ。
ハルも腹部にダメージを食らっているが、バトルスーツとカチューシャのコントロールで痛みは殆ど感じていない。
「ヒナタはしばらく寝てるといい。フリード、あとでお礼はたっぷりしてやるっ・・・て、わあああサーベスぅ!!」
ハルの目に飛び込んだのは血まみれで茎に縛られた美少年だった。
腰をくねらせ抵抗する彼のバトルスーツはあちこち引き裂かれ、胸やへそ、性器の一部が破れ目からこぼれている。
「ハル!こいつの節は僕の心臓の位置にあって・・・」
「サーベス、覚悟!」
サーベスが言い終わるより前に、レーザーナイフを手に持ち、突然サーベスに飛びかかるハル。
「わわっ、最後まで聞けハルっ・・・わああああ〜〜〜〜〜っ」
ハルは刃先を正確に、サーベスの薄い胸板の真ん中、心臓の位置に突き立てた。
「・・・ッ!!!」
赤い血が吹き出ることはなかった。かわりにサーベスの背中のあたりで大量の「養分」が吹き出た。
サーベスの身体を抜け、背中から突き出た刀身がイータープラントの節を突き刺したのだ。
断末魔の声を上げ、イータープラントは内部から破裂するように砕け散った。
力が抜け倒れこむサーベスの背中がべっとり緑色に濡れている。
「なるほどね」
ハルは八重歯を見せ笑いながら、サーベスに手を伸ばした。
「は・・・ハルに殺された」
「刺されるときのサーベスの顔、はじめて見た」
「いや、冗談でももうごめんだ。あまり気分のいいものではないね」
「僕はきみをリーダーとして敬愛してやまないが、唯一恨みがあったとすれば、いままで一度もきみに勝なかったということかな」
「僕だって完璧じゃないよ?」
まだ半勃起状態のサーベスが起き上がろうとしたとき、ハルもまたがくっと膝をついた。
「あたたたたたた・・・やっぱ・・・まだがんばるには早すぎたみたいだ」
ハルからヘナヘナと力が抜ける。
「で、隊長の僕でさえ知らなかった未公開の技術情報を、あの地球人は知ってたの?」
サーベスの目の色が険しくなった。
「ああ、戦闘実技の教本の隅っこに小さく書いてあったんだってさ。そうか、きみでも見落とすことはあるんだね」
さらりと言うハル。
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