都築新斗(つづき しんと)は自宅の部屋で、数日前の「ドーハの悲劇」を分析したスポーツ記事を読み返し、落胆していた。
1993年10月28日。カタールで行われたアメリカW杯最終予選のイラク戦において、
日本代表はロスタイムに同点ゴールを決められ、W杯進出を逃したのだった。

今日は兄は公開収録イベントの仕事で家を留守にし、父と母も車で出かけている。
新斗も例年は友人やサッカーチームメイトと遊びに出かけるのだが、
先日の決勝戦で捻挫した足がまだ完治しておらず、ギプスが外れていない。
両親に「家で安静にしていろ」と言われ、ただ一人留守番で残されたのが新斗というわけだ。

風に乗って、遠くからアマチュアバンドの野外演奏が聞こえてくる。
DEEN「このまま君を奪い去りたい」、CLASS「夏の日の1993」・・・
夕方になるとバラード系が多くなり、なおさら寂しさが倍加する。

「いいことないよなぁー」

あまりに悔しかったので、兄の部屋から無断で拝借した「コブラトップ」を苦労して自室に持ち込み、
CHAGE & ASKAの「YAH YAH YAH」をフルボリュームで流し、自分を慰めていたりする。
1993年3月発売の同曲は「SAY YES」に続くミリオンヒットとなった。

そういや半年前、兄にこのCDを買ってきてくれるよう頼んだら、
間違えてZOOの「YA-YA-YA」のほうを買ってきて口論になったこともあったっけ。




「もうー、新斗がちゃんと言わないのが悪いんだよ!?」

「兄貴ならヒットチャートぐらい知ってるだろうと思ったけど、意外に疎いんだね。テレビに出てるくせに」

「僕は音楽番組に出てるわけじゃないって」

「ふーん、お色気系はしっかりチェックしているのにね。誰だったかな?
 僕に『ギルガメ(ッシュナイト)』や『トゥナイト』を教えてくれたのは」

「あっ・・・もぅ〜そんなこと言うなら、新斗には2度と教えてやらないからね!」

    ・
    ・
    ・
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嫌な思い出が浮かんでしまった。
結局、綾太がCDを返品して替えてくることで仲直りしたのだが、以来、二人の間ではあまり、音楽の話題は出ない。

あーあ、つまらないなぁー。

新斗はコブラトップの電源ボタンを押した。
ピッと電子音が鳴ると、カセットデッキの上部についた操作盤が電動でゆっくり倒れ、インジケーターが消えた。

ふと窓の外を見ると、一匹のカラスが急降下してくるのが見えた。
何やら銀色に輝くモノをくちばしにくわえていて、窓の前まで来ると、屋根の上へ置いていった。

「んー? あれって最近、兄貴がしていてた腕輪じゃないの? 
 落としモノを届けてくれるなんて、頭のいいカラスもいるもんだね」

腕輪をよいしょっと腕を伸ばして取り、ウェットティッシュで汚れを拭いてやる。
すると、女の子の声が頭に響いてきた。

(あなた、綾太の弟さんよね!?)

「腕輪がしゃべった! ・・・ああ〜、僕もついに気が狂っちゃったんだろうか?」

自分の額に手を当て、熱を確かめる。どうやら平熱らしい。

(綾太も・・・あなたのお兄さんも、私の声を最初に聞いたときはそう言ったわ)

綾太が「女の子の声がしないか?」と訪ねてきた、あの夜を思い出した。

「兄貴はうそつきでも病気でもなかったというわけか」

(さっすが綾太の弟、話が分かるぅ〜)



鬼の腕輪は事情を急ぎ足で説明した。
綾太が悪魔と戦う兜童子であったこと、今、悪魔と戦い破れ、大変な状況に陥っていること・・・

「たしかに最近疲れてたり、夜怪我して帰ってきたり・・・不思議な行動多かったけど、それで説明がつくな」

(お兄さんを助け、世界を救うには、あなたの力が必要なの。協力してちょうだい。
 綾太とほぼ同じ遺伝子を持つあなたなら相性的にも問題ないわ。何より可愛い顔をしてるしねぇ)

「え?顔も関係あるの?」

(大ありよ。バイオアーマーの能力(=あたしの本気)を最大限に引きだすためには)

「ふぅん?」

(・・・えーと、コホン。とにかく協力してくれるかしら?)

「そりゃ兄貴の命がかかってるんなら、喜んで協力するさ。で、僕も変身すればいいのか?」

(そうよ。腕輪を手首につけて、数回ほどこするの。服は脱いでね)

「う・・・うん」

(パンツも)

上眼遣いに恥じらいを見せる新斗。
数年前、コーチにパンツを脱がされた記憶が蘇ってくる。
が、意を決してトランクスを下げると、形良い包茎おち◎ちんが元気に姿を現した。

基本的に新斗の顔は首筋まである長い髪も含め、ほとんど綾太と同じなのだが、スポーツしている分だけ肌は日焼けしている。
背丈・骨格も変わらないが、その裸体は未発達ながら筋肉がついているぶん、むしろ新斗のほうが兄に見えることがある。
事実、体重も新斗のほうが少しだけ重い。


(あら、足を怪我してるの?)

小麦色の全裸に唯一、白いギプスの巻かれた左足。

「こんなの平気さ。もう痛くも何ともない」

本当はまだズキッと痛むことがあるんだけど、がまんがまん。

(また強がっちゃって。まあいいわ、変身したらあたしが治してあげる。ちょいとあなたからもエネルギーを借りるけどね)

「ほんと? じゃあ、こするよ?」

(合意は得られたわね? ふふふ)

新斗は左手首に引っ掛けたリストバンドに埋め込まれた石を数回、こすった。

緑色の石が光を放つ。腕輪から溶け出すように出てきた厚さ1ミリ足らずの白色の「膜」が、日焼けした裸身を包んでいく。

「うわっ・・・」

膜は左手首から細い腕を舐めるように覆い、やや筋肉質な肩から脇の下へ。
左脇腹あたりから胴の前後に分かれ、胸板を這うようにピンク色の乳首を隠していく。
続いて背中から回りこんだ膜と合流してくっつき、未発達な腹筋の上部に直径10センチほどの、
空色の半透明なレンズ状の半球が浮かび上がった。
続いて膜は下へ伸び、股間の香りをまさぐるように、綾太の敏感な部分をぴっちりと、かつ優しく包み込んでいく。

「ひゃっ・・・アッ・・・!」

(新斗くん、いいカラダしてるぅ〜)

さらに両フトモモ、脛から爪先にいたるまで、細くも筋肉質な肉体を隙間なく包み込んだ白色の膜は全身タイツのように、
少年の発育途上な凹凸を余すところなく浮かび上がらせていた。
その膜の中から、胴、腰、肩、膝、肘、手足の外側など、衝撃を受けやすい部分をサポートする、
光沢あるブルーの合金の装甲が、表面に浮かび上がるように出現し、全身の面積の7割ほどを覆った。

一方、上は首までで止まり、装甲と同じ材質でできたヘルメットが頭に覆い被さる。
目鼻は黒いカウルで覆われ、わずかに口元だけ素肌が覗く格好だ。
両耳のあたる部分にはアンテナのような突起が斜め後ろに突き出ていた。

最後に背中から巨大な羽根が2本生えてきて、ようやく「変身」は止まった。
全ての変身に要した時間、わずか5秒。

やや汗ばんでいたため、肌に密着した膜がもっとベタつくかと思ったがそうでもなく、
むしろサラサラに乾いた風に包まれて、草原に立っているかのような爽快感があった。


「なんか兄貴とは色が違うみたいだけど」

(性格だとか、好みだとか、肉体の性質だとか・・・様々な要素がバイオアーマーに影響を与えるのよ。
 じゃあまず、足を治すから、エネルギー借りるね)


股間部に配置されたイソギンチャクが新斗の幼いおち◎ちんに巻きつく。

「う・・・あっ・・・・もしかしてパワーって・・・」

(そうよ? 性エネルギー)

綾太と同じ按配で刺激してみると、たちまち膨らんでくる幼い性器。
感じてる感じてる。性感帯の位置は兄弟でほとんど同じのようだ。

「兄貴も同じふうに?」

(当たり〜。怖くないから安心して)


新斗は自分でオナニーをしないわけではないが、回数は多くない。
普段サッカーで消耗しきって帰ってくると、精力が残っていなかったというのもあるが、
勉強のことや試合のこと、後輩の指導のことで頭が一杯で、それどころではなかったのだ。
また先日の決勝戦以来、足を怪我していたから、オナニーを控えていたのだった。

綺麗なペニスを触手に強烈に揉みしごかれる新斗。

「くあっ・・・ア・・・こっ・・・こんなに・・・気持ちよかったなんて・・・アァァッ・・・」

幸せな表情を浮かべつつ腰をくねらせ、綾太よりややハスキーがかった高い喘ぎを上げる新斗。

少年の未発達な胸板に突き出た、桜色のかわいい乳首にも刺激が加わり、股間の触手は仮性包茎の皮の裏側にまで入り込み、
くちゅくちゅと透明な粘液にまみれて動いている。

「しっ・・・死にそうなぐらい気持ちいい!僕、死んじゃうぅぅううううう!」

(死んじゃダメよ、綾太を・・・お兄さんを・・・救い出しにイクのよ!)

「あ・・・兄貴・・・」

ふっと脳裏に兄の美しい顔が浮かんだ瞬間。
どぴゅっ・・・どくどくっ・・・どくっ・・・どぴゅるるっ・・・
細い腰を痙攣させペニスを上下に撥ねながら、イソギンチャクの掌の中に、どろりと濃厚な子種が溢れ出た。


(はぁ〜〜おいしいー、十分よ)

治癒エネルギーに変換し、左足首のあたりに供給する。

(これでもう痛くないはずよ)

兄を・・・自分の顔を浮かべながらイッてしまった背徳感に襲われながらも、
自分の性エネルギーがじわっと優しく、左足首に伝わっていく不思議な感覚を味わう新斗。

(じゃあ新斗、準備はいい?)

「うん!」

兄貴・・・僕が必ず助けるから。待ってて!

こうして誕生したもう一人の兜童子は、2階の部屋の窓を開け放つと、細い腰をかがめて羽根を広げ、飛び立った。




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