綾太はステージ上で白く美しい裸を晒し、悪魔の紡ぎ出した魔法の糸で磔にされていた。
まるで十字架に架けられたかのような格好を強要された少年の全身を、なおも舐め続ける観客。
へその下に垂れ下がった、もはや子種の尽き果てたペニスの先から、なおも透明な液を垂らしていた。
その幻想的な姿にパシャッパシャッと、盛んに焚かれるフラッシュの一つ一つの閃きが、身体に撃ち込まれる弾丸のように痛かった。
時折菊門からは腿を伝って白い液体がトロトロと垂れていた。
どうやら観客のそそり立ったイチモツを、その細い体内に何本も受け容れたらしかった。

空中に静止しながら、その光景を満足げに見下ろす悪魔の巨体が見えた。


「兄貴・・・なんてことを」

新斗は上空から兄の置かれた現実を見て、うっと眼を背けそうになった。
一緒にお風呂に入った兄。ベッドでいつまでも抱きしめ合った、あの甘く切ない夜・・・。
数々の記憶と共に、悪魔に対する怒りがこみ上げてきた。

「・・・・悪魔、許せない」

(背後から回りこむわよ)

「了解!」


悪魔の背後から、右手に現れた剣で斬りつける。
狙いは左脇腹のやや下、悪魔の核(コア)!

悪魔め、覚悟しろ!

寸前のところで悪魔に気づかれ、巨大な羽根に阻まれてしまった。

「まさか・・・もう新しい戦士を探し出したとは!」

突き刺すことはできなかったものの、腰にかすり傷を負わせた。
悪魔の体勢が整わないうちに、鍛えた細く筋肉質な右足から繰り出されるシュートが立て続けに放たれる。
構えを崩した隙を狙い、剣で悪魔に切り傷を与えていく。

不敵な笑みを浮かべる兜童子の口元。
同時にあの晩、お風呂場で目覚めたサディスティックな快感からか、
バイオアーマー内部では勃起が始まっていた。

(いいわよぉ新斗、あなたお兄さんより戦士の素質あるわ)


悪魔は「ちっ」と舌打ちすると、オタク男や痴女の群がる綾太のほうへ飛んだ。

(まずいわ、綾太に何かするつもりかも)

「お兄ちゃぁぁぁん!」

悪魔を追い、新斗も綾太のほうへ飛ぶ。
弟の声に気付いた綾太の、虚ろに開けられた目が新斗のほうを見た。

「兄貴!今助ける!」

(誰・・?)

声を振り絞る体力さえ無くなった綾太の目が呟いた。

「僕だよ!新斗だよ!!」


悪魔は今にも壊れそうな人形のように細い綾太を、太い毛むくじゃらの左腕に抱いた。
綾太の身体を盾にして、自分の核(コア)を塞ぐように。

「ふははははは!余興が長すぎたわ。そろそろ決着をつけることにしよう・・・おっと、それ以上来るな兜童子。綾太が死ぬぞ」


「くそっ!」

綾太まであと10数メートルというところで停止する新斗。
綾太の目が新斗に叫んだ。

(僕のことはいいから・・・悪魔を倒せ!)

「そんなことはできないよ。畜生、僕はどうすればいいんだよ!?」

ニヤリとする髭面の悪魔。

「悩まなくて済むように、すぐに答えを出してやろう」


悪魔は下に右手をかざした。眼下に群がったオタク男や痴女の群れからシャボン玉のような、
小さな光の玉が無数に浮かんできて、手のひらに吸い込まれていく。


「何・・・あれ!?」

(観客が綾太をレイプしたことで得た、どろどろした欲望を吸っているのよ)

シャボン玉を吸収するたびに、悪魔の肉体がみるみる膨張していく。

(やばいわ新斗・・・奴のエネルギーが普段の何十倍にも上がってる!)

声を振り絞る体力さえ無くなった綾太の目が新斗に叫んだ。

(逃げろ新斗!今の奴には、君は勝てない)


「動くんじゃないぞ兜童子!1メートルでも動いてみろ、綾太を絞め殺す!」


そんな・・・だめだ、僕、兄貴を見殺しにして逃げられないよぉ!

(新斗。どんな攻撃が来ても、あたしがあなたを守るから。動いちゃダメよ)


バイオアーマーの動きが再び活発化した。
おち◎ちんを包み込む触手が新斗の皮を揉みしだき、菊門に触手が入り込み前立腺を刺激する。

<耐衝撃防御全開。前面バリアフィールド展開>


ゆっくり、悪魔の右掌が新斗に向けられた。

(新斗!ビーム攻撃で来るわ!前面バリアを全開にするから、早く、もっとエネルギーを!)

「ハァッハァッ・・・うおおっ・・・あとちょっとでイきそうなんだけどっ・・・だめっ・・・間に合わない〜〜〜」

悪魔の掌の中が光り輝き始めた。


(間に合わない〜〜〜〜〜!!!)
「死ね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「おにいちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!」
(新斗〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!)


悪魔の手から砲が放たれようとしたまさにその瞬間。


「ちょっとーーー!綾くんはあたしのなのよ!返して!」

小圷優子が手に持っていたコンパクト(携帯用化粧箱)を悪魔目がけて放り投げていた。
悪魔の放ったビームが開いたコンパクトの鏡に反射した。
コンパクトは粉々に砕けたが、ビームのエネルギーの大部分が青空目がけて逸れた。


衝撃波が新斗の全身を襲い装甲板を何枚か吹き飛ばし、小麦色の筋肉質な肌が露出したが怪我はなかった。

どくどくっ!ピュッ!ピュッ!ビクッピクンッ!

アッ・・・アアアッッ・・・・

股間に遅れて射精した白濁液が、装甲板の吹っ飛んだ穴からチョロチョロと垂れ流れた。
しかし性エネルギーの大部分はバイオアーマーの修繕に使われ、すぐに穴が塞がれていく。


(今よ!悪魔に攻撃して!)

少女の声が言うより早く、悪魔との距離を詰める新斗。
右手に出現させた剣で悪魔の左腕に突き刺す。

「痛ええ!!」

動揺した隙を見て、綾太を奪おうとする。

「ちっ、私もだいぶエネルギーを使い果たしてしまった・・・また会おう、新しい兜童子!」


「おいっ、逃げる気か!?待てーーーー!!!」


手を伸ばしたけど、悪魔は綾太を抱いたまま、消え去っていった。



「くそっ・・・逃げられたか・・・」

(仕方ないわ。でも綾太はまだ死んだわけじゃないんだし)



「あれ? 俺達・・・何してたんだ?」

眼下では、悪魔によるコントロールの解けた観客達が正気を取り戻しつつあった。

あら?やだ私ったら・・・何やってたのかしら?そういえば10番さんは?

小圷優子は顔についた白い乳液をハンカチで拭き取ると、マイクを持った。


「えーっと、10番さんが消えていなくなっちゃったようなので、次、11番の方どうぞー
 ・・・って、あれ?綾太くーん? どこに行っちゃったのぉー?」




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