悪魔は空からビームで街を破壊し、人々の恐怖のシャボン玉を吸い取っていた。
「やめろ!」
太陽を背にした新斗が悪魔に向かって突入しようとした、その時。
(新斗!2時方向右上!)
「あ・・・あれって・・・!?」
濃い紫色のピチピチタイツと黒光りする合金を身にまとい、黒い羽根の生えた、もう一人の兜童子が迫っていた。
黒い少年の体当たりを間一髪でかわし、向かいあう二人。
身長はほぼ同じくらいの痩せ型。顔を覆うカウルの隙間から、白い肌と八重歯の輝く口が覗いていた。
「まさか・・・!」
(こんなことって・・・・!)
「そのとおり!」
悪魔が叫んだ。
「そこにいるもう一人の兜童子は、綾太だ」
ショックを受ける新斗。
「そんな・・・おい兄貴、僕は新斗だ!助けにきた」
だが、黒い兜童子は何の反応も示さなかった。
「何を言っても無駄だ!そこにいる綾太には心はない。俺様に従順な戦士でしかない」
空からビルを破壊しながら続ける。
眼下では逃げまどう人々が蠢いていた。
(・・・・新斗。覚悟はいい?)
「ねえ、これってどういうことなの?」
(綾太の意識は悪魔に消されちゃったみたい。つまり今、あそこにいるのは魂の抜けがらでしかない)
「つまり操られてるってことか?」
(こういう事態も予測しておくべきだったわ!)
「そんな・・・折角会えたのに!」
(ちょっと新斗、どこ行くつもり?)
「兄貴の目を覚まさせる」
綾太に近づく新斗。
「兄貴!僕の顔を思い出すんだ・・・」
予告もなしにいきなり、綾太の振り上げられたスレンダーな足が新斗の腰にめり込む。
ばしっ!
「うげっ・・・」
<腹部装甲板15%損傷>
続けざまに兄のパンチが、キックが・・・新斗の全身に炸裂していく。
綾太がこんなに強いはずはない。
「痛いじゃねぇか兄貴!」
新斗も負けじと、綾太の顔をぶん殴り返した。
黒いヘルメットにヒビが入り、細かな破片が飛び散った。
「兄貴!目を覚ませよ」
「うおおおおおおおおお!」
お互いパンチやキックを繰り出し合う。
そのたびに合金装甲が凹んでいく。
(修復のためのエネルギー、もらうわよ!)
サディスティックな快感が新斗の幼い包茎性器をもたげ始め、そこにイソギンチャクが絡みつく。
既に菊門では突き上げるかのように、触手の束が腸内に入り込みぐちゅぐちゅといやらしい音を立てている。
綾太の息もまた荒くなってきた。漆黒のバイオアーマー内部でも同じ事が起こっているのだ。
綾太は新斗の右肩の青い合金装甲を掴み、引き剥がしにきた。
新斗も負けじと綾太の胸部の漆黒の装甲を掴む。
「くおおおおおおおおお!!!」
「はああああああああああ!!!」
べりっ。
べりっ。
ほぼ同時に引き剥がされる合金装甲。
中から白い肌が、
小麦色の肌が露出する。
11月の冷たい風に鳥肌が立ち、ふわっと揮発した汗がいい匂いとともに風に乗っていく。
「やりやがったな!兄貴」
「そっちこそ!」
格闘技というよりは運動会の競技のように、バリバリとお互いの装甲を引き剥がしあう。
(ちょっと・・・あたしを壊す気〜〜〜!??)
隙を見て、新斗は自分のマスクのカウルを上げた。
「僕の顔を・・・自分の顔を忘れたのか!?目を覚ませ!!」
新斗が綾太のマスクのカウルをひったくるように上げると、無表情な顔の中に、
二重瞼の栗色の瞳がロボットのようにこちらを見ていた。
「兄貴・・・」
「僕から、離れろ」
冷酷に言い放つと、装甲を引き剥がされた、小麦色の腹の露出した新斗のへそのあたりに綾太の拳がめり込んだ。
「ぐはっ・・・ごほっ・・・」
バイオアーマーの自動飛行システムが作動して落下することはなかったが、腹を押えてぐったりする新斗。
(新斗!)
「・・・平気。なんだかもう一人の僕と戦ってる気分だよ。僕の悪い心とね」
八重歯を見せ、しかめ笑いの新斗。
下腹部からピュウピュウと射出された精液がへその下を濡らしていた。
綾太もまた、腿や腰、尻に開いた穴から覗く白い肌を、自らの白濁液で汚している。
「綾太は何をやっておるのだ」
その光景はまるで兄弟げんかだった。
揉み合いになっている二人を、遠巻きに、イライラしながら見ている悪魔。
悪魔は掌をかざし、新斗に狙いを定めた。
新斗は気付いていなかった。
巨大な火の玉を出現させ、新斗に放たれようとしていた。
(ちょっと・・・悪魔が・・・新斗!よけて!)
「うわっ、間に合わない・・・!」
新斗に向かってビームが放たれた時、綾太の身体が新斗に覆い被さってきた。
「えっ・・・」
次の瞬間、凄まじい光が兄の背中をかすめ、通過していくのが見えた。
綾太を伝って衝撃が伝わる。
「兄貴・・・・!?」
カウルを開けた綾太の美しい瞳が弱弱しく新斗を見た。
「はぁっ・・はぁっ・・・危なかったね、新斗・・・」
「兄貴・・・!」
直撃は免れたものの、黒いバイオアーマーのえぐれた肩から白い素肌を露出させている綾太。
「僕から離れて!」
新斗を突き飛ばす。
頭を抱え、苦しんでいる綾太。
「うぅ・・・あぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁああ!」
「兄貴・・・そんなつらそうな声を出さないでくれよ!僕まで悲しくなるじゃないか!」
(綾太の様子がおかしい。綾太もバイオアーマーの中で、必死に戦ってるのよ!)
遠巻きに見ている悪魔が首をひねった。
「どうした? まだ都築綾太の心を制御しきるには暗黒のパワーが足りないのか?」
(綾太のバイオアーマーの修復が止まっているわ。きっと、もう綾太には精エネルギーが残っていないのよ。
エネルギーが低下することで、綾太の脳への支配力も弱まっている)
「ふん・・・数日前にしこたま出して、使うには早すぎたか。」
一方、綾太のバイオアーマーでは、男性の電子音声が綾太の脳内に響いていた。
(もう力がなくなったか! えーい、パワーだ!もっと精液を!!!)
「そ・・・そんなこと言っても・・・、出ないものは出ないし」
「アーマーよ、綾太を殺してもかまわん。こうなったら兜童子2人をまとめて始末してくれるわ」
悪魔が叫んだ。
<イエッサー、マスター>
黒いバイオアーマーの内側から、綾太の睾丸に爪を立てられた。
ぶしゅっ。
「がぁあぁあぁっ、ああああっ、やああああああああ!!!」
細い腰を突き上げるように痙攣させて、悲痛なボーイソプラノがあたりにこだまする。
続いて尻に突き刺された触手の先端に爪が生え、腸を食い破って精子管に向かう。
(出ないのなら、そのたまたまから直接吸い尽くすまでだ!)
それはもはや苦痛でしかなかった。
あまりの激痛に口から泡を吐き白目を剥いた後、綾太は再び黒いバイオアーマーの支配下におかれた。
綾太は再び剣を右手に、新斗に向かってきた。
「仕方ない・・・僕も剣で兄貴と戦う!」
(オーケー)
だが、2人とも剣術の心得があるわけではない。
空中で飛びながらの戦いだから相手の剣を避けるのは容易で、剣を振っても届かなかったり、当たらなかったり。
そういや昔よく、こうやってチャンバラごっこして、遊んだっけ・・・兄貴。
その剣を振る手つきも癖も、あの頃と何も変わってない。
冷静に見ていると、綾太は剣を振りながらも、お互いの生身を傷つけまいと振舞っていることに気付いた。
意識を失ってもなお、綾太は新斗のことを忘れていなかった。
(それは新斗も同じよ。まるで自分に自分の心を傷つけられるのを怯えるかのように、無意識的に間合いを広めに取ってるもの)
けど・・・きりのない遊びはそろそろ終わりにしようかっ!
新斗は5歳の時にそうしたように、突いてくる綾太の右腕を左手で掴み、手首を捻って剣を落とした。
「おにいちゃん・・・・・!!!」
新斗は綾太を思いきり抱きしめた。
お互いのヘルメットがぶつかり合って砕け、同じ顔が向かい合う。
バイオアーマーの穴から露出した乳首がこすれ合い、
お互いの穴から垂れ出した精液が飛沫を上げ、同じ遺伝子が繋がって二人の間に白い糸を引いた。
「兄貴・・・!」
「新・・・斗・・・・すまない」
抱きしめる綾太の腰あたりに、ぬるっと生温かいものを感じる新斗の手。
「はっ・・・兄貴・・・これ・・・血・・・」
悪魔の手刀が綾太の背を覆う合金装甲を砕いて突き抜け、刺さった背中からドクドクと血が流れていた。
残された力でバイオアーマーの耐衝撃防御を最大化させることで、腹部までの貫通を防いだのだった。
「はっ・・・ああっ・・・」
力なく呻きながら、新斗を突き放す綾太。
「2人まとめて楽に殺してやろうと思ったのに〜!」
悪魔が叫ぶと、手刀を伝って綾太の全身に高圧電流が流れた。
ばりばりばりびりびり〜!!
「あああああぁぁぁぁあああああ!」
悪魔の手から抜けた綾太の身体が、地面目がけて落下していく。
頭から道路に叩きつけられ、ヘルメットが完全に砕けた。
自分を狙って悪魔の放ったとどめの一発の火の玉が、目の前の銀行ビルに当たった。
それは父の勤務する銀行だった。
ちょうど店から出ようとしていた父の頭上に、コンクリート片が落下しようとしていた。
「お父さん・・・あぶない!」
父をかばい突き飛ばす綾太。
二人は間一髪でコンクリート片を避けることができた。
「綾太なのか!?」
目の前には真っ黒な装甲に所々開いた穴から白い素肌を見せ、精液を滴らせている我が子の姿があった。
うつぶせに倒れそうになって抱き抱えた背中からは血が流れ出ていた。
「お父さん・・・元気で」
最後にもう一度会うことができて良かった。気をつけて逃げて。
立ち上がったとき、背後から聞き慣れた声がした。
「その腰つき・・・綾太なのね!」
制服姿の宮脇だった。乙女の観察眼とは恐ろしい。
「ああ綾太、ひどい怪我して・・・」
駆け寄ってきた宮脇の身体を、胸の穴から桜色の乳首の露出した胸が受け止めた。
股間から滴らせた栗の花の香りがほんのり鼻を突いたけど・・・これが綾くんの、男の子の性・・・。
綾太は宮脇をきゅっと抱きしめるなり、チュッと唇にキスした。
え・・・!
「ありがとう。これはお別れのキス。さよなら」
僕はもう汚れてしまった。
君を不幸にするわけにはいかないから・・・ここでサヨナラする。
そんな・・・あたしを置いていかないで!
綾太は振り返らずに、再び戦場に飛び上がった。
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