落下した兄を追おうとした新斗は、悪魔に行く手を阻まれた。

「おっと、貴様の相手はこの私だ」

「よくも兄貴を・・・」

悲しんでいる暇すらなかった。

(新斗!綾太の仇、取りに行くわよ!)

「でやあーーーーっ!」

再び手にした剣で悪魔の腰を狙う新斗。
悪魔の手刀は兄の剣のようにはいかなかった。
近接戦闘で新斗の剣が悪魔の皮膚に傷をつけていくが、
悪魔もまた、綾太の鮮血で赤く汚れた手刀で新斗の小麦色に灼けた肌を切り裂いていく。

あのサッカーの決勝試合以来、大量に分泌されるアドレナリン。
僕はあの時、確かに命を賭けた。けど・・・今日の戦いは一瞬の気の緩みが即ち死に繋がる。
サディスティックな快感が呼び覚まされ、再び勃起を始める新斗の幼いペニス。
自分の身体が傷つけられる痛みも忘れ、無我夢中で剣を振りまくった。

だんだん息が上がってきた。
気がつくと、腕や足、腰など、引き裂かれた小麦色の健康的な肌から流れ出た鮮血が、
タイツ状の薄く白い膜に染み込み、全身があちこち真っ赤に染まっている。
悪魔もまた、全身についた切り傷から体液を滴らせていた。

(新斗!エネルギーを傷の治療に回すわよ)

「だめだよ!エネルギーは全部剣に回して。たとえ刺し違えても悪魔を倒す!・・・ウッ・・・ハァンッ・・・」

ビクンッ!という痙攣とともに、また細い腰で射精が行われた。
その全ての性エネルギーが剣に送り込まれ、剣の輝きが増す。
おち◎ちんに絡まったイソギンチャクが吸収しきれなかった白濁液が腿を伝い、膜にあいた穴から鮮血と一緒に滴り落ちた。

「たあーーーーっ!」

悪魔の急所をひと突きにしようと攻撃を仕掛ける新斗。
だが完全に動きが読まれており、右腕を掴まれてしまった。

「捕まえたぞ都築新斗!」

腕をあらぬ方向へ捻られ、ボキッという音とともに激痛が走った。

「ぐああぁぁぁぁぁぁ!」

右腕からポロリと剣が滑り落ちた。
悪魔はもう一方の手で、新斗の尻を覆う合金装甲をべりっと引き剥がした。
穴から精液と鮮血が垂れ落ちると共に、日焼けしていない白く美しく引き締まった尻が露わになった。
悪魔の手はさらに尻肉の割れ目をまさぐると、菊門に深々と突き刺さっている触手を引きずり出した。

「うああぁぁぁぁぁぁ!」

(新斗ーーーーー!!!)

<生命エネルギー供給部破損>

まだピクピクと動いている、腸液の絡まった触手型のエネルギー供給部を引きちぎり、スルメイカのように食べる悪魔。

「やあぁぁぁぁぁぁ!ああぁぁっ!」

バイオアーマーから新斗の肉体がエネルギーを受け取る基幹接点を破壊され、初めて自分の命の危機に恐怖を感じた新斗。
さらにビキニパンツから出た悪魔のイチモツが、新斗の尻にあてがわれた。

「くくく・・・白い兜童子よ、悪の精の中だしをもって、悪魔との契約は完了する。兄のようにな」

「いやだぁぁああああああぁぁあ」

僕も兄貴みたいに操られてしまうのか?
いやだ・・・死にたくない!
涙目の新斗の菊穴に、悪魔の亀頭の先が突っ込まれそうになった、まさにそのとき。



(嫌よ・・・綾太に続いて、新斗まで失いたくないの!!!)


新斗の左腕の、鬼の腕輪が輝いた。

「ぐぅおおおおおおおおおおおおお!この光わあああああああああ!!!」

悪魔が苦しみ始めた。
それは真に人を愛することを知った鬼の腕輪の、聖なる光であった。
あまりの強烈さに、ついに悪魔は新斗の腕を放した。
(悪魔・・・・もう終わりにする!)

だが剣を落としてしまった新斗には武器はなかった。
何か武器になるものを目で探していると、背後から声がした。

「新斗・・・落とし物」

「兄貴!」

新斗に剣を手渡した綾太は顔面蒼白だった。
左手で剣を受け取った新斗を見た綾太が言った。

「右手・・・怪我したのか?」

「いや、ちょっと痛めただけだ」

本当は骨が折れてそうで、痛くてたまらないんだけど。がまんがまん。

「そう・・・?」

虚ろな目で、新斗の血まみれの全身を見た。

「僕が悪魔を捕まえて押えこむから、新斗はその間に悪魔の核(コア)を突き刺して・・・ごほっ」

吐血する綾太の美しい顔から血管が浮き出ていた。

「兄貴、もうしゃべるな!」

綾太は苦しそうに呼吸すると、瞳が新斗に語った。


(いいか新斗、悪魔の核を突けば悪魔を封印することができる。けど、それだけではまたいつか、復活してしまう)

(歴史はまた繰り返す)

(だから・・・僕が残った力で悪魔の邪心を中和してやる。最悪でも、悪魔と一緒に封印されて向こう側から復活しないように押しとどめる)

(じゃあ兄貴・・・まさか)

悲しい目が肯いた。

(僕は悪魔に契約され、支配されてしまった。それにこの傷じゃどっちみちもう助からない。
君には兄としてなにもしてやれなかった・・・ごめん)

(そんな・・・死ぬなよ兄貴)

グスンと涙のこぼれる新斗の肩を、ポンと叩いた。

(人間、いつか死ぬんだよ?)


(兄貴、僕も一緒に行く!)

綾太の腕を掴む新斗。

(だめだ!)

振り払う綾太。

(新斗・・・もし君まで死んだら、残されるお父さんやお母さんはどうなるんだ)

泣き出す新斗。

(あの晩、どこにもいかないって・・・約束したじゃないか!)


(ただひとつ、約束を守れなかっただめな兄だ)

綾太も大粒の涙をこぼし、弟を抱きしめた。

(君は生きろ・・・悪魔と行くのは僕だけでいい。いつになるか分からないけど、きっと必ず・・・
別の時代、別の世界で君と会おう。そのときはまた、僕の弟でいてほしい)


(・・・わかったよ、兄貴)

涙に濡れた、同じ顔が向き合った。

(心にいつも新斗が一緒にいると思えば、寂しくない)

(僕も都築綾太の弟だったことを誇りに思う)

(新斗、僕も君の兄で良かった。短い間だったけど楽しかったよ。また来世で必ず会おう)

(次に生まれ変わるときは、いつまでも一緒に、幸せに・・・)

そこまで瞳が言うと、どちらからともなく口と口が接近し、数秒間、熱くキスした。
いつも一緒に生きてきたもう一人の自分との、お別れのキス。

(僕がチャンスを作るから、その間に新斗は悪魔の核を突いてくれ)

(分かった。僕に任せて。絶対外さない)

名残惜しそうにお互いの身体を離した。



(じゃ・・・ 新斗!僕はいつも君とともにいる!僕の意志を継いでスターになれ!)

綾太は悪魔の胸に飛び込んで行った。
太い悪魔の胴に絡むように抱きつく。
悪魔の筋肉質な腕が細い脇腹をぎゅうと掴み、引き離そうと乱暴に力を入れる。

「離れろおぉぉぉぉぉぉお!」

「うああああああああ」

背中からぼたぼたと血が溢れ、バイオアーマーの砕けた穴から流れ出す。
だが、綾太はもう離さなかった。
股間部のアーマー装甲を自ら引き破ると、睾丸に食らいついた爪が玉袋の傷口を引っ張って、血が滴った。
菊門に食い込んだ触手を引き出すたび、腸液とともに血が流れ出た。
そこへ悪魔の肉棒をくわえこむ。
大きすぎるような気もするが・・・一度は呑み込んだ棒だ。入らないわけはない。


「さあ悪魔、僕と一緒に死ね!そして2度と復活するな!」

細い腰をゆっくり振る綾太。
ドチュッ・・・ズチュッ・・・と、骨盤が悲鳴を上げる。

「綾太・・・何をするっ・・・・・やめろぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

「僕にはあなたの本当の気持ちがわからないかもしれない。けど・・・もうみんなを困らせるのはやめて」

はっとする悪魔。

「まっ・・・まさか・・・私を救済するつもりか!?」

綾太の腰は早くなった。

(新斗や宮脇の未来のために・・・)

(兄貴〜〜〜〜〜〜〜〜!!!)

(そして・・・輝く地球の明日のために!)

どくんっと腹の中で爆発が起こったとき、ばしんっと黒いバイオアーマーの装甲が砕け散るとともに、綾太の腕輪もまた粉々になった。
綾太の腹の中で果てた大量の白濁液が、背中の傷口から血液とともに飛び散った。


(さあ今だ新斗!)

「ぐおおおおおおおおおお!」

両手でしっかり握られた新斗の剣が、悪魔の「核」に突き刺さる。
新斗の鬼の腕輪が光り、それに呼応するかのように綾太の白く美しい裸体も輝いていた。
間もなく砕け散らんとする宝石の、最後のいのちの輝きであった。
まばゆい光の中で、体長2メートル半の醜い悪魔の姿が、長髪で袴姿の美しい青年に変化していった。
同時に、立ちこめていた悪魔の怨念も消えていくのが分かる。

悪魔の面影が完全に消え去ったとき、青年の声が響いてきた。

『ありがとう・・・都築綾太。最後に出会った兜童子が君でよかった』

青年は生まれたままの姿になった綾太を抱き、長い口づけをした。
やがて青年はだんだん金色に輝く無数の光の粒となり、龍を形作って大空に舞い上がっていった。



スターアイドルを夢見た少年、都築綾太。
彼は今まさに、光り輝くスター(星)になったのだった。





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