「プテラの自爆攻撃です…クィーンセイバー、胸部破損。…いやあああ〜〜〜!!駆くん!!隆也く〜〜〜ん!!」

基地司令室のメインモニターに大写しされた爆発を見て、オペレーターの女性が泣き崩れた。

「もはやこれまでか……」

腕を組んで映像を見つめていた松岡司令が指で目を拭った。

「司令、クィーンセイバーの回収及びパイロットの救出命令をッ…」
「いや、まだだ。」
「ええっ!?」

進言を突き放す司令の一言に、司令部スタッフたちの顔が引きつる。

「クィーンセイバーはまだ完全には停止しておらん。今、アメリカ支部から二号機が応援にこちらへ向かっておる。
二号機が着くまでは戦うか、せめてマトになってもらう」

二号機。クィーンセイバーの設計図を流用し、アメリカで建造された同型の無人ロボットである。

「そんなっ…まだ試運転もろくに済んでない二号機を投入するなんて危険すぎます!」
「カケルちゃんは…リュウちゃんはどうなるんだい?」

制服スタッフたちの中から現われた、白衣を着た白髪交じりの女性職員が眼鏡の奥から睨みつける。
ふたりの少年パイロットの健康管理を担当するトレーナー、木村タヱ。
少年たちが初めて基地に呼ばれたその日に、パンツの一丁も履かせず真ッ裸で、全身に色んなセンサーの糸をつけ、
ランニングマシンの上を何十分も走らせた鬼トレーナーである。
パイロットスーツの採寸をしたのも彼女で、節くれだった指でおち○ちんの先っちょや尻の割れ目の深さにまでメジャーを当てる几帳面な性格。
くすぐったさに震えようものなら「ちょっとカケルちゃん、動かないでよ!」と、パチン!とフトモモを叩(はた)いた。

厳しさの一方で、トレーニングが終わったあと、二人のためにおいしいパンケーキを焼いてくれる優しい側面もあった。
そんなときは松岡司令やスタッフたちも仕事の手を休めてテーブルを囲み、ちょっとしたお茶会で雑談に花が咲いた。
それが駆にとって甘えられるぬくもりを教わった、貴重な時間でもあった。
駆と隆也からは「木村おばちゃん」と慕われてきた。

「そうですよ、二人の成長を一番楽しみにしてこられたのは、松岡司令だったのではありませんか!?」

若い女性職員も同調すると、司令はかつてなかった口調で怒鳴った。

「黙れ!わたしはガキどもの教育のためにここにいるのではないぞ!人類をデッドカイザーの侵略から守るためにおるのだ」

思いがけぬ一言に、司令室の空気が凍りつく。

「いままで優しく振舞ってたのも、手段だったってのか!?」と若い男性整備士。
「いいか? デッドカイザーが地球に来襲してからというもの、これまでも大勢の人が死んだ!
今さらパイロットの一人や二人の命がどうだと言うべきじゃあない」
「ばかなこと言うなっ!!」

若い整備士が殴りかかり、グーが司令の頬にめり込む。
ふらついた松岡司令も整備士の胸倉を掴み、口泡を飛ばして怒鳴り返す。

「わたしの弟も死んださ、デッドカイザーとの戦闘でね!! お国のため、地球のためという大義に死ぬのが人生の価値だ」
「死者に捧げるストーリーと、今まだ生きている命を履き違えるんじゃねえ!」
「だったら…だったらこれからどうやって地球を守るというのだね!?」

まわりのスタッフたちが「やめてください!」「落ち着いて!」と二人を引き離し、腕を掴んで取り押さえる。
そのときオペレーターが叫んだ。

「二号機、アラスカ上空で消息を絶ちました! システムトラブルで墜落したものと思われます!」
「なにぃぃぃ!?」




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