「リュウ?・・・リュウ・・・?」


背後から呼ぶ声に気がつくと、隆也は一糸まとわぬ素っ裸で、真っ白な光の中にいた。

「リュウ……」

振り返ると、頭上に黄色い輪っかの浮かんだ天使が立っていた。

(いっ…誰??)

「どうしたの、リュウ?ぼくだよ、カケルだって」

言われてみれば、出撃前にいつも更衣室で見ていたのと同じ身体が立っていた。
駆は時々、見る角度と光の当たり方でとてつもなく綺麗に見えることがある。

「カケル!無事だったの!?」

人間、あまりに嬉しいと、条件反射的にぱぁーっと満面の筋肉が引きつって、笑顔ができてしまうものである。
走り寄って手を握る。でも、その手は氷のように冷たかった。

「カケ……」

視線を落とす。駆のおち○ちんも隆也のおち○ちんも、真冬のグラウンドでソフトボールやった後みたいに小さく萎んでる。
そのさらに下で、毛も生えてないすべすべの脛から下が半透明に透けている。

「まさか…ぼくは死んだの?ぼくら、二人合わせてユウレイになっちゃった!?」
「そうみたい。その…」

駆は口ごもったまま目に涙をため、隆也の身体を抱きしめた。

「巻き込んじゃって、ごめん!」

そのまま、堰を切ったように「うわああっ」と嗚咽を始めた。
普段あまり涙を見せない駆を見慣れすぎてた隆也には意外だった。
触れ合う胸板がふたりの体つきの違いを際立たせる。
隆也の発育した胸筋と、ぺったんこながら少しオトナの男に目覚めかけたように、薄く厚みのつきはじめた駆。
互いに鼓動は感じない。

「ぼくこそ力不足で悪かった!せっかく、体張って守ってくれたのに」

隆也もつられて泣いていた。

「ぼく、知ってたよ?カケルの身体にアーク星人の血が流れてること。こないだ司令の机に置いてあった資料を盗み見してたんだ」
「…そっか、黙ってて、ごめん」
「ばかやろう、自分だけで抱え込んで」
「ほんとうのことを話したらリュウから疎外されるんじゃないかって、こわかったんだ」
「そんなことがあるか。カケルはカケルだよ。一生懸命に戦うきみを見てたら、ほっとけなかったよ」

頭上の黄色い輪っかに指を触れようとするけど、ホログラムみたいにすり抜ける。
こんなに明るい空間なのにお互い、瞳孔は開いたまま動かなかった。

「カケル。これから二人ぼっちなのかな?」

残してきた家族を思う。
まだあんなことも、こんなこともやりたかったのに。

「ぼくがぼやっとしていたせいだ!茜ちゃんから大事なお兄ちゃんを奪っちゃった!!」

ぼろぼろと目から雫のあふれる隆也に駆は黙って首を振り、日焼けした逞しい肩をポンと叩いた。
また二人で抱き合って泣いた。




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