隆也の意識がふたたび戻ったとき、頬を撫でるふさっとした毛の感触があった。
「リュウッ!! 起きろ!!」
はっと目を開けると、すぐ前に長い栗色髪の首筋があった。
「あれ、カケル…」
隆也は駆の背中に覆い被さるように座っていた。おち○ちんがふにっと、駆の柔らかなおしりに当たってるのが気持ちいい。
透明なよだれの雫を青いパイロット・スーツの肩に垂れ落としてしまったのは、言わないでおこう。
「ぼやっとしないで、リュウ」
汗ばんだ細身が熱い。駆のいのちを感じる。
むくもりに乗ってやさしい、いい匂いが清涼に薫る。
前に何度かお邪魔したことのある、カケルの部屋と同じにおいがする。
「あれれ?ここはどこ……」
一瞬、感覚が混乱し戸惑う。
「何寝ぼけてるんだ? いまは戦闘に集中だよ!」
優等生のはきはきした口ぶりが現実に引き戻す。
目の前のモニターには目が黄色に光るプテラが映し出されてて、クィーンセイバーがそのくちばしを両手で掴んで押さえているのが映っていた。
「ああ〜〜〜!!ぼくらっ…ぼくら生きてるよ、カケル!!」
華奢な肩に抱きつく。駆の小さな背中。浮き出た肩骨が綺麗。
「あ〜〜もうっ、何言ってんのさ? 狭くって仕方ないよ。いま、自爆攻撃を仕掛けてきたプテラを食い止めてるから。
ぼくが押さえてる隙に、はやく自分の席に戻って!」
はじめてだった。隆也が戦闘中の、駆のコックピットに入るのは。
「ぼく、なんで上にいたんだろ・・・」
胸部ハッチのレバーをずらすと、半ロック状態となった。子供一人、辛うじて通れる隙間ができる。
駆の身体をよいしょっと跨ぐとき、その椅子の上で隆起したテントの上に、透明な液体が染みでてるのを見逃さなかった。
苦労して下部の自分の席に戻ると、男の子っぽい汗の爽やかな香りが漂っていた。
今まであまり意識したことのなかった、自分の匂い。
ハッチを閉めると隣のモニターに相方の横顔が映った。
『その……さっきはありがとう。リュウ』
駆は凛とした中性顔でそれだけ言うと、穏やかに笑った。
『準備はいい? 今度こそ、負けないよ』
まずは二人で力をあわせ、掴んでいたプテラのくちばしをへし折る。
地面に叩きつけるように掃うと、倒れたプテラの頭が大音響とともに吹っ飛んだ。
「さあ、反撃開始だ!」
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