「どうせこんなところに幽閉しておくなら、なんでぼくを助けたのさ。ハンブルクで撃墜された夜、あのまま放っておいても息絶えてたはずだ」
「べつに、命を助けようとしたわけではないがね。
ただ…ナチのことだ、魔法使いの家系に遺伝で受け継がれる"魔法因子"を人工的に合成し、
魔法使いの兵士を人工的に作り出そうとしかねないと思ったのだ。
…エリクの遺体すらも、奴らに回収させたくはなかったのだよ」
「ふっ、あの業火に焼かれりゃ消し炭になってたのだから、その必要はなかったと思うがな」
「いや…たとえば皮膚にだって汗腺、各種神経、保湿、抗菌…様々な器官が備わっている。
吹っ飛んだ腕を調べて、魔法を発動させるための器官を調べるようなことだってするかも知れんからな。
…それより、良かったのか?弟を残してきて」
「ジークベルトなら大丈夫さ。いい仲間がいる。よく育ってくれた…
それに人間同士の戦争に魔法が使われないよう、まずはぼくがそのルールに従う先駆者たろう。
ぼくは規律を重んじるドイツ人だ」
「筋を通すのか、結構なことだ。にしても、いつ見てもかわいいな、その格好」
残ったほうの腕を揉むように掴む。エリクは今、黒い魔法少女のレオタードを着せられている。
鋭いハイレグがキュートに締まった尻肉に食い込んでいる。
「こっ、これは、ぼくがぼくだとナチにバレないようにと…」
「それとわたしから逃げないようにな」
抵抗はできなかった。
暴れようとすると足枷が魔法でくっつき、首が絞まるから。
今度は尻を触った。フトモモを這っていく。
「二次性徴がはじまりゃ男は皆、だんだん少年らしさを失い、逞しい大人になっていくものだと思っていたが、
例外がいたとはな。ますます可愛くなっていくとはどうしたことだ」
「何度も言ってるが、ぼくは男だぞ!?
どういうことか、分かってて…」
「古今東西、美少年好きの例は枚挙に暇がないだろう。ときにエリク。地下室でこんなものを見つけたんだ」
懐から取り出したのは本だった。
表紙に書かれた題名は今のエリクの視力では判読できなかったけれども、金の縁取られた、どぎつい表紙のピンク色には見覚えがあった。
『禁断の秘術大全 〜これであなたもベッドの魔人〜』
「うわあああっ、やめろ〜〜〜〜!!」
逃げようとしたとき、エグゼキューターは指を鳴らした。
足枷がひっつき、倒れこむエリク。
「いやだっ、ぼく、やっぱりジークベルトのケーキを食べに家へ帰る!!」
「さあ、サバトを楽しもう!! なぁに。フランスのジル・ド・レエ候がやったみたいに、
子供の手と心臓と目玉を悪魔バロンに捧げたりするようなミサをやりたいわけじゃないさ!もっと平和的、友好的にだね…」
たちまちベッドに寝かされると服を脱がされた。
フェリクスの長い手指がエリクの綺麗な裸体を這い、香油が塗り付けられ、尻の割れ目に怪しげな草を挟みこまれた。
「小鳥に餌をやらないと…」
「んー? キミにはお仕置きが必要だろぉ…?? 」
手のひらがぼんやり閃き始める。
「うわあああ助けてくれぇぇぇ!!」
その夜は一晩中、ブロッケン山にこだまする絶叫が消えることはなかったという。