S-5 納屋にて


アンディは赤軍に追われ、放棄された畑の納屋へ追い詰められた。
何人もの屈強の兵士に囲まれ、銃剣を突きつけられ、両手を壁につけた格好をさせられている。
綺麗な凛々しい碧眼で睨みつけると、ソ連人の大男どもは小ばかにしたような顔でアンディの腹を蹴り上げた。

「ごほっ…ゲヘッ…ゲヘッ…」

逆流してきそうな胃液を飲み込みながら咳き込む。

護身用に懐に隠しておいたワルサーP38も見つかってしまい、没収されてしまった。
留守中の父の部屋からくすねておいたものだったのだが。

(ああーオレ、このまま捕虜になっちまうのか? それとも殺されてしまうのか?)

戦うと決めた日から、いつかこうなるかも知れないとの予想ぐらいはしていた。
でも、何の戦果もないままこうなってしまったのが情けなかった。

『まさか本当にいたとはねぇ、ブロンドの魔女ならぬ、魔法少年が』
『ふんっ…薄汚いナチのガキが…SSの卵どもは全員嬲り殺しだ』

兵士たちが話しているのを、ロシア語を知らないアンディは意味を理解していない。
きっと、どうやって殺すかの相談でもしているのだろうと思った。

「へっ、イワンのバカどもが…オレのケツでも舐めるか!?」

精一杯の挑発を言ったつもりだった。
言葉が通じなくとも、手でお尻をペンペンしたら理解できるだろうと思った。
すると髭のソ連兵どもは一瞬目を見張り、顔を見合ったあと、指差してまた話し込んでいる。

『…いいのかな?』
『ナチは同性愛を禁止している。去勢の上でゲットー(強制収容所)行きだぜ』
『そりゃ可哀そうだ…でもわれらがスターリン同志は『戦地妻』を容認してくださったのだし…』

(ん? 何か様子がおかしい…)

兵士の一人が近づいて、少年魔道士の顔の泥を拭った。
すると女戦士を思わせるような、ブロンド髪の凛々しい中性顔があらわれた。

「ウラァァァァァァァーーーーッ!!」と兵士から口々に歓声が上がる。

『スターリン同志、ウラーー!!』

「ちょっ…あっ…ひっ…ナニすんだよう」

アンディは納屋の中に敷かれた、干し草の上に押し倒された。
毛むくじゃらの手が伸びて外套をひん剥かれ、長ズボンも脱がされると、
中から露わになったのはヒトラーユーゲント夏服姿…カーキ色シャツに濃紺のハーフズボン、濃紺のタイ…だった。
少しでも厚着したかったものの適当な服が見当たらず、冬服の下に夏服まで着込んできたのだ。

『おおーっ、か・わ・い・い』
『いただいちまおうぜぇっ、戦地で美少年と出会うとは…いやはや、これも人生かなあ』

首筋からタイをスルッと抜かれ、シャツのボタンを外されていくたび、白い下着に浮き出た鎖骨や、未発達な胸板が露わになっていく。

「ああ…やめっ…」

ハーフズボンからはみ出たフトモモに手が伸び、揉まれた…その適度に弾力のあるスベスベの触り心地を試すかのように。

『綺麗な顔してんじゃねぇか…そこいらの売女よりもよっぽどいいぜ』
「おおおっ、オレ男だぞ!?何か間違ってないか!?」

頬を掴まれたアンディの高い鼻にウォッカ臭い舌がチロチロと這う。
別の男の手はフトモモの付け根を握りしめる。

「あああっ…やめぇ…ソコ…触るなァァッ……アアア〜〜ッ」

声変わりを迎えていない高い声が響く。
ムクリ、とズボンには血流が流れ隆起しかけた幼いペニスがテントを張り始めている。
カチャカチャと「SS」と書かれたバックラーのベルトが外れ、ズボンをずり下ろされると、
ボクサーパンツのゴムの部分にはお母さんに刺繍してもらった"Andy"の4文字。

『発育しかけの筋肉、たまんねぇ!』

肢体は男になりかけているのに、女性より美しい綺麗な肌に浮き出した胸筋がピクピクと上下する。
舌なめずりするのは迫り来る野獣と化した、自分の父親かそれ以上の男たち。中には魔族のように憎悪を込めた瞳の男もいた。
戦役参加記章の略綬リボンをいくつか身につけた兵士が、元気なピンピンの男根をアンディの頬にあてがった。

シャツが引き裂かれ、ヴァルトラウトという異性を何度か包み込んだ、幼い胸板が露わになる。

『おおー、きれいなつるつるの肌だ』
『少年のニオイ…真冬なのに日なたのいい匂いがするぅ…』

あたかも少年の無垢な鼓動を聞こうとせんばかりに頬擦りする、チクチクする髭面が桜色のおっぱいを傷つける。
寒い中、人肌を求めるには、少年の高めの体温は熱いくらい若さが燃え上がっている。

「やめっ…かぶれそうだろぉが!!」

『おい、お前ら順番に並べ!!』

ロシア語で、機関短銃を手にした中尉が叫んでるが、あまり意味を成してない。

『引き締まって弾力あるすべすべの男のコのカラダ、最高〜』

チロチロチロ〜ッ

ちゅぱっ…ンッ…くぱぁ〜〜

『ほっそりした腰から伸びる長いおみ足ぃ…』

蹴飛ばそうにも押さえつけられたまま、腿の内側までしゃぶられる気色悪さ。
腿を舐め、膝小僧を舐め、ピクピク揺れるすべすべの引き締まったお腹は真ん中で割れかけ、へそが揺れ踊る。
その上をつきかけの薄い腹筋を毛むくじゃらの手が撫でる。

「オレ、男なんだぜ!? 立派な兵士だっ…」

アンディは自分のことを、鍛え抜かれた屈強のチュートン戦士に憧れを持って重ねていた。
魔女がキリスト教に迫害されたのも遠い昔の話、アンディ自体キリスト教徒の家だし、
かつてチュートン騎士団が魔女狩りに加担した歴史について、何か特別な思いを馳せるほどの感覚がない程度には「いまどきの子」だった。
だが年相応の体格は、いかにもサッカーか野球のユニフォームが似合いそうな、ごく普通のスポーツ少年としか見分けがつかなかった。

『ガキのくせに抵抗しやがるッ』

倍ほどもある太さの腕で地面にねじ伏せられ、パンツをズリ下ろされ、ピンピンに勃起した包茎ペニスがプルンッと揺れる。

(ああっ、オレがあと10年…いや5年ほど早く生まれてたら、こんな奴らなんか一網打尽にしてやるのに!!)

ふわり玉袋の裏側にまで指が這い、傷一つない引き締まった綺麗な尻肉に、触手のような手が伸びる。

「おいそこにいる上官っ、やめさせろよ!」

ドアの前に立ってる小太りの口ひげをはやした男にまくし立てる。
しばし首をかしげていたが、アンディの訴える意味が分かったらしい。
ボソリとドイツ語で言った…

「…わが軍は皆健康だ」

そして好色な眼差しで意地悪そうにニヤついていた。

「くそうっ、こいつらヘンな病気持ってないだろうな!?」

敬虔なプロテスタントである両親の下、育ったアンディは基本、オナニーは殆どしない。
本人の心がけというよりは、両親の躾が禁欲的なベクトルでなされることが多かったせいで、性的な目覚めにも自ずと禁欲が反映されていた。
だから精通は迎えていたが性の知識も少なかったし、ヴァルトラウトとの恋もエロティックは一切なくて、ロマンチックに満たされていた。
けれど今、己の純潔が奪われつつある嫌悪感だけは本能的に感じていた。

『おお〜、まだ毛も生えてない』
『ボッキしてるぞぉっ…鋭い切れ味のナイフみたいな、カッコいいおちんちんだぁ』

ご開帳された股間に大男が顔を埋める。
ざらついた舌が包皮の中まで入り込んできて粘膜を弛緩し、おちんちんから電撃のように突き上げる性感に身を委ねてしまいそうになっていた。

「はっ…はなせ! やめっ…」
『嫌がってるようだが、もうこんなに大きくして…ハァハァ』

激しく揺れ、乱れる美しい少年兵の髪が光沢に波打つ。
納屋にはヒトのオスの匂いが充満していた。

『おおーーっ、ピンク色の粘膜だ… ヤリマン女の汚い穴よりよっぽど綺麗だぜ』
「うああああああああっ……」

おちんちんを吸引されたまま仰向けにされ、お尻にペニスがあてがわれた。
おっぱいにも別の男根を擦られ、ピクンと立ち始める。

『オレはここだぁ…』

ワキの下や脛、手のひら、足の裏まで。
軍事教練で鍛えられた、しなやかな美少年の肉体のあらゆる部位が獣どもを満足させる性器となった。

(お父さんっ、お母さんっ… 助けて!!)

『ああぁぁ〜イイぜっ…ハァッ…ハァッ…』

お腹を裂かれ、内臓が血潮とともに飛び散るより、アンディにとってはボリシェヴィキに臓器を抉られるということのほうが屈辱だった。
身ばかりか、心までほじくられ、犯されていくような嫌悪に、すべすべ肌に鳥肌が立つ。

『ああっ…アンディ…アンディきゅぅんっ!』

細い腰がメリメリと肉棒を飲み込み、ずちゅっ…ずちゅ…とピストンが始まった。

「ア゛ア゛ア゛ーーーアア〜〜〜〜ーッ」
『ちょっと、静かにしてもらおうか』

アンディの口に男根が突っ込まれた。
吐き出そうにも、喉の奥まで引っかかっているようで抜くことはできなかった。

『あいにくわが国はジュネーブ条約に調印しておらんのでな』

先の小太りの髭男が言った。
女子の憧れの視線も受けた少年兵のあらゆる神経はいま性感帯となり、脳のとろけるような電気信号を発し始めた。

『締まりのいいケツだ…奥へ奥へと吸引してきやがるッ』

ゴリゴリと直腸を擦られ、最初は痛いだけだったおちんちんの裏側が猛烈に熱を伴って、背筋を電撃が突きあがるようになる。
人は身に死の危険が及ぶとき、平時とは比べ物にならぬほど能力を搾り出し、また神経が研ぎ澄まされるという。
それは性感にも反映されるに違いないのだ。

シュッ!シュッ! と乱暴に口マンで扱かれるギンギンのペニスの裏側で、前立腺が押しつぶされるような圧迫。
真冬なのに湯気で曇るほどに、淫猥な営みの続く納屋。

(やっ!…はぁっ…ンッ!…ウッ…ンッ…!!)
『イクぜっ、小僧〜!!』

どぴゅっ…びゅううっ・・・ぴゅるるるぅぅぅぅ〜!!

お腹の中に生暖かいモノが注ぎ込まれるのが分かった。
破瓜した紅混じりのドロドロの汁が、小さなおしりの割れ目から垂れ下がる。

(ンン〜っ…アアアッ…ウァァァァァァッ!!)

大男の口の中で、アンディもまた精を放った。
溜め込んだ濃い精液は飲み干しきれなかった分が飛散し、別のソ連兵の頬をねっとり汚す。

するとニヤリとし、ぺロッと舐め取ると、ペニスをしごきながら言った…

『血には血を パンにはパンを…精液には精液を!!』

今度はビューッとアンディが顔射される番だった。

(もうこうなったらっ、オレが犯されてるあいだのほんの一分でも一秒でも、一兵でも敵の進軍を遅らせることができたらいい…
 ヴァルトラウト、今のうちに逃げて!)

かつて祖国の守り手を夢見た幼い兵士は、繰り返し犯され続けた。

『ハハハッ、気持ちいいだろう? ジトラーのガキが』

ソ連において、ナチのゲッベルスの役割を果たした作家、イリヤ・グリゴーリエヴィチ・エレンブルグは、ドイツを「ブロンドの魔女」になぞらえた。
彼の煽動によって、赤軍兵士は『ファシストを見たら殺せ、高慢なドイツ女を犯せ、そして戦いの疲れを忘れよ』と強く吹き込まれていた。
そして目に留まるドイツの子供は全てファシストであることも忘れるな、とも。

同じ連合国の米軍さえ震撼させたといわれる、赤軍兵士によるドイツ市民への行き過ぎた陵辱の原因の一つは、
かようなアジテーションの産物であったと言われているが、根底にある、ドイツの東欧・ロシア占領地域における、
一部ドイツ兵による住民虐殺に対する怒りを炊きつけたのである。
またポルノを禁止し、性的欲望を抑えられてきたソビエトの体制、人間性を奪う宣伝が、
戦場での極限の緊張がもたらした、男どもの野生的な闘争本能と結びつき、原始的で暴力的なエロスを増幅した。

(ああっ、だめだ…耐えるんだ…)

それは年端の行かないアンディにはまだ、知らないことだった。
いずれにせよ、今この不運な少年兵がその身に焼き付けている恥辱こそ、大戦末期、多くのドイツ人女性が晒された暴力であった。

(ジーク・ハイル(祖国ドイツに栄光あれ))

心の叫びも空しく、アンディは少しずつ、尻を割り裂かれる快感に身を委ねていった。
体の奥深くまで何度も突き刺さる、怒り狂った野獣の蠢きを受け止めながら。

 

(※筆者注 ジトラー…ヒトラーのロシア語発音)



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