S-9 クルトとナルツィッセ 2
【ほらほら、お口ン中、唾液が溢れてきて…ちゅパッ…くちゅっ…くちゅ……やらしいねぇ〜】
口に触手を突っ込まれ、舌を弄ばれているクルト。
【アハハハ!!おちんちんの裏側、くりゅくりゅしたらいやらしいおつゆが止まんないね!? よっぽど溜めこんでたんだね?】
地面で磔にされた美童の肉体は胸、鎖骨、脇腹から腿、足裏に至るまで、触手に舐めるように蹂躙されていた。
トロトロのパンツの中でぐちゃぐちゃに蠢く細い触手が、半勃起状態の海綿体の狭い隙間に突っ込まれている。
宙ぶらりんでエビ反りになって華奢な腰をくねらせ、喘ぎながら、尻の中では触手の先端が粘液を注ぎ込む。
「ああ〜っ…おっ…うわぁぁ〜〜〜〜!!!」
ナルツィッセのおちんちんに吸い付いた花弁が動くたび、膀胱内にまで達した先端が突き刺さり、
おっぱいまでビンビンと電撃が走り、反射的にビクビクンッ!と腰がガクガク動く。
両胸にも花弁が吸い付き、少し固くなった乳首をクリクリと刺激しているのだ。
【ははははは! 私は愛する!あふれるばかりに満ちた魂を持つために、自分自身を忘れ、一切の事物を内に秘めている者を】
「アアーーーッ」
ハイトーンの悲鳴とともに、ジュブシュブッと狭くなった尿道の先から半世紀の時を経て、
クリスという少年へと血をつないでいくことになる熱いイノチの種が垂れ落ち、名家の家紋の刺繍されたパンツを汚した。
チューチューと音を立てながら搾乳する花弁。
【あああっ、お〜いし〜〜ぃ!!んぐっんぐっ…ごっくん!と。水も滴る美少年とはよくぞ言ったものだ】
ジュルジュルジュルッ!!
「あはっ…、おまえ、そんなにぼくの精液が好きかよ…」
【そうだねぇ。きみの睾丸で分泌されているのは、はるかな昔から続く名家の守り抜いてきたエキスなのだからねぇ?】
…だてにパンツに家紋を刺繍されてるわけじゃないん…だ…ぜ…
理性で押し込めてきた、クルトの中の野蛮な部分がムラムラと心に波状攻撃を仕掛けてくる。
脳内麻薬に満たされる頭脳で、意識の糸を繋ぎとめるのも大変だった。
【じゃ、十分ほぐれたところでそろそろ、仕上げといこうか】
「仕上げだと…?」
【ボクの植物液を注ぎ込んで大腸から吸収させ、身体じゅうの体液ごと入れ替えてあげよう。
四六時中カラダが疼いて、ボクのことばかり考えるようになるからぁ】
「いっ…やっ…めろ……」
太いパイプ状の茎がぶすりと肛門に突き刺され、何か液体の注入が始まった。
同時に、前立腺を圧迫される刺激が性感となって少年の背筋を駆け上がってきて、がくっと力が抜けた。
成されるがまま養分吸われて、干からびてしまうのか。これまでか…
(そうだよなぁ、生きてても真っ暗の時代、気持ちいいまま死ぬのも幸せなのかもなぁ)
チェンバロの演奏、まだ鳴ってる。
一番上のクラリッサ姉さんは魔法は一家の中で得意ではなかったけど、
父さんに習ったピアノの名手で、ポップスからクラシック、ジャズまで何でも弾けた。
気弱な弟にはキツい姉だった……パシりにもされたし、服の洗濯もやらされた。
でもしょげ返っていると、
『アンタ、ガーベルシュタイン家の長男だろ!? しゃきっとなさい』
って怒られた。男らしくなるならと、全寮制の男子校への入学を提言したのも姉さんだった…。
チェンバロはケーニッヒ・グレーツ行進曲を弾いていた。
勇壮なマーチが、鋭くエッジを効かせる長姉の癖と相まって、澄んだチェンバロの優しい響きに乗って心に流れ込んでくる。
『クルト。男だろ? まだ、戦いは終わっちゃいないよ』
そう叱られている気がした。
(ぼく、こんな曲仕込んだっけ…)
魔法の暴走か? それとも空間を越えて姉の秘めた思いが流れ込んだのだろうか?
クルトにも想像がつかなかった。
学問とは神の摂理を解き明かしていく検証作業である。クルトはそう信じてきた。
しかし科学がそうであるように、魔法もまた、いまだ人間が解明できてないことはツークシュピッツェ山の如く、高く立ちはだかっているのだ。
「フヒッ……ア…」
触手はおっぱいをチロチロと刺激し続けている。新たな熱が沸き起こる中、チェンバロは歌い続けた。
『友達、いるんだろ? 彼らを悲しませちゃだめだよ』
巻き取られた細い腕がピクピクと動く。
そうはさせまいと巻きつくが、指の長い手のひらがぼうっと光る。
(ぼくは…まだ負けられないんだ!!)
そのとき、団子のように絡んだ触手の内側から眩惑する閃光が溢れ出た。
【この力は…!? ばかな!!】
ガーベルシュタイン家の遠い先祖がグリモワールを開発するとき注ぎ込んだ、魔道書封印の力。
父や姉ですら忘れて久しい秘術が、クルトの胸のうちで発動したのだ。
それは、ガーベルシュタイン家の遺伝子に刻み込まれた、祖先から受け継ぎし遺産であった。
誰から教わるでもなく、蝶は飛ぶことを生まれる前から知っている。
誰から教わるでもなく、鮭は生まれ育った川を遡ることを知っている。
そして誰から教わるでもなく、人は誰かを愛することを知るのだ。
遺伝子に組み込まれた、大自然の摂理で。
(そうか……分かったよ。まだ何となくだけど!)
グリモワールとはガーベルシュタイン家の魔法使いなら誰もが持つ力を引き出し、増幅させる鍵にすぎなかったのだ。
「さあナルツィッセ! この本の中へ戻れ!」
【いやだ〜っ、折角お外に出れたのに帰りたくない〜〜〜】
クルトは黒い表紙の本を開けると、水仙に押しつけた。
【せめてっ、使い魔がわりに飼ってくれたら嬉しいナーなんて…ハハハハハ…!!】
「うるさいっ、グリモワール・クローズド!!」
のちにクルトはある回想を胸に秘めることとなる。
エッチなドキドキの高揚が、一時的であれ胸の奥に秘めた、普段は気づき得ない能力を解き放ったのだと。