ま、まずはとにかく謝らなきゃいけねえ。 ええと。 「すまねえ勇さん。今まで黙っ・・ひっ!」 俺の謝罪は、途中で声を上ずらせて宙に消えた。 「そっ、宗次、手を退かせ!」 襟もとに侵入した宗次郎の手が、俺の体を慣れた動きで弄りだし。 (この、) 勇さんたちの見ている前で、これ以上何する気だよ! 「宗次っ!!」 俺が抗うのも構わず、宗次郎は俺の襟もとを大きく開きあけた。 「貴方がそう言って、俺が」 宗次郎はそのまま俺の胸元へ顔を沈め。 「素直に退いてやったことなんかあった?」 両の手首が抑えつけられる痛みに、軋み。 「宗っ・・」 諦めな。 そう語るかのように。 俺の肌からつと顔を上げ、向けてきた宗次郎の眼に。 「・・っ」 俺は、射竦められた。 「やっ・・」 こいつ、 本気だ。 「宗次、やめ・・っ」 「やめろ・・?」 俺の耳朶を擽るように噛みながら宗次郎が囁く。 「こんな美味しい状況で、やめられるわけねえじゃん」 「馬鹿、い、勇さんたちが、見てる・・!」 「だから、だよ」 執拗な刺激を受けて、俺の乳首はじんじんと熱く。 「うんっ・・、や、宗次・・!」 「諦めなってば」 覆い被さる宗次郎の体は、密着したままじりじりと下り。 すでに感じ始めている俺を、宗次郎はさらに煽るように舌を這わせてゆく。 「あ・・ぁ・・・ん」 堪らず嬌声が、勝手に俺の喉を過ぎて。 「もう、誰の前であろうと、貴方は俺のものなんじゃなかった?」 「それ・・は、こんな時のことじゃ・・ねえだろ・・・ああッ!!」 宗次郎の手が突然、着流しの裾を割って。俺の萌しを攫った。 「ぁあ・・は・・あ・・っ」 「そ、宗次、おい・・」 漸う勇さんのおろおろした声が、俺の耳に僅かに届いた。 「若先生、」 己の吐息の合間に、続いた宗次郎の声を聞き。 「こうしてる歳さんは、どうです、普段の数倍艶っぽいでしょう」 俺の羞恥心を逆撫でるような台詞を、 まるでわざと選んだかのように、 「それに数倍、綺麗だ」 喉奥で薄っすらと、哂い。 「あっ、やだ、あっ・・」 「そしてこんなに、可愛い」 「ぁあっ・・宗、次っ・・」 俺の、感じる位置など知り尽くした宗次郎の手が容易に、俺を高みへ引き上げてゆく。 勇さんも源さんもいる前で。果てるわけにいかねえのに、俺の体は止まりようもなく。 「ぁあッ・・宗次、やめっ・・」 俺は最後の足掻きを努めて。なお留まろうとした。 「・・歳さん、」 果てたいんだろ? 俺の閉じかける瞼に口づけて、宗次郎が囁く。 「我慢なんぞしてねえで、果てなよ」 「っ・・・」 眼で笑っている宗次郎を。 「・・ぁ、あ・・はぁ・・・・」 霞のなかで見上げながら。 宗次郎の激しい手の動きに、与えてくる指のなぶりに、 俺は身を反らし悶え。 「ぁ・・あぁッ・・あああッ」 堰を切って背筋を駆け昇る快楽を、 もはや、為すすべなく許した。 「宗、宗次っ!!ぁあああ・・・!!!」 白濁を宗次郎の、広い手の平に吐き出した俺は、 身に蘇る溢れんばかりの羞恥に、傍で息を詰めているだろう勇さんたちを見ることができず。 「・・・歳、」 かけられた声に、びくっと己の体が強張ったのを感じた。 「すまん、その、」 (え・・?) 俺は目を瞬いた。 勇さんの声の調子が、妙だった。 それは俺が瞬間に覚悟した、侮蔑や嘲笑の声音ではなく。 「勇、さん・・?」 思わず勇さんを見上げた俺の目に、 勇さんが顔を真っ赤にしてこちらを見るさまが映り。 (あれ) 「源さんは」 勇さんの隣に映るはずの源さんの姿はいつのまにか消えていた。 「あ、ああ、見てられないとかで出て行ったよ・・」 勇さんの答えに俺はほっとするとともに、再び顔を紅らめた。 勇さんにはばっちり全て見られているのに変わりはない。 「・・・・」 押し黙ってしまった勇さんに、俺もどう言葉をかけたらいいか分からず。 一瞬目を逸らしたものの、様子が気になってすぐに覘き見れば、やはり顔を赤くしたまま俺を見つめる勇さんが映り。 (どうしたんだ・・?) 勇さんが、やっぱり変だ。 俺のあまりの醜態に完全に呆れきってしまったのか・・? 「・・まだ居ますか、そこに」 不意に宗次郎が、愕くほど凄みの利かせた声を、勇さんに投げた。 (宗次・・?!) こいつが、勇さんにこんな声で話すところなど一度たりと聞いたことがない。 「あ、いや、悪かった、」 ただでさえ俺と宗次郎の仲を知って、度肝を抜かしている勇さんは、その言葉に慌てて。 「よ、宜しくやってくれ」 と、俺がぎょっとするような台詞を残して、勇さんは回れ右をした。 同時に、俺は菊座に、宗次郎の指を感じた。 (待っ・・勇さんが行ってからにしろ、馬鹿っ) 身を捩ってその指を避けようとした俺の腰を、だがこいつはがっしりと掴む。 掴むとともに。 「やっぱりいいですよ、先生」 振り返った勇さんに、先程の凄みなど消し去った声で、 にっこりと。 「そこに居てくださっても」 微笑んだ。 「ええ?!」 何だって?! 「宗次、おまえなっ!」 俺たちの情事を見せ付けられて勇さんがこれ以上気分を悪くしたらどうするんだ! 勇さんに謝るんだっ、 「宗・・」 「我慢できなくなったらそこで抜いてくれて結構ですし」 俺は目をいっぱいに見開いていた。 ぬ、抜いてくれて結構?! (何言ってんだ、こいつは?) 「宗次・・歳・・・」 ほら見ろ、勇さんは困ったような顔をしてる。 もう、すっかり呆れちまってんじゃねえか。 「い・・いいのか?」 ほらっ、・・て、 ・・・・・・・あ? 今、勇さん、何て答えた? 「いいですよ。見るだけならいくらでも」 「わ、悪いな。歳、おまえも、い、・・いいか?」 「いいんです、歳さんは。見られてることなど、そのうち忘失するだろうから」 「そ、そうか??じゃあ・・」 何・・だって? 「そ、宗、」 何、だって? 「ま・・待・・・」 片手で、俺の腰を捕らえたまま。 宗次郎のもう片方の手が、俺の菊座を本格的に貪りだし。 「っ・・宗・・ッ!!」 ・・それは、 いつもどおりの、性急に迸る快楽で。 「ぁあッ、宗次、待っ・・あっ、あ!!」 宗次郎の前で、俺はいつもどおりの俺で。 唯一いつもどおりじゃないのは。 「若先生、」 「綺麗でしょう、歳さんのこの姿」 「っ・・」 勇さんが真っ赤になって、俺を見つめている、事。 「やッ!!」 俺の脚を掴み広げて。 宗次郎がまさに、勇さんに見せ付けるように、 ゆっくりと。俺のなかへと、腰を押し潜らせ。 「あっ、あ、ぁああッ・・!!!」 その緩慢な侵入に。 迎え入れる喜びに。俺の中は打ち震えて。 「宗、次・・!!」 宗次郎が俺の最奥まで達した時。 視界の端で、勇さんが胡坐をかいて裾を捌いたのが見えた。 (・・・?) 「ッ!!」 ずっ、と一旦引くなり一気に突いてきた宗次郎に、俺の意識はすぐにそっちへ攫われ。 「んっ、あん、あっ・・」 息つく間もくれず揺さぶられて、 感覚が理性の狭間を、行ったり来たり彷徨い始めて。 「あぁ、あっ、ああ、宗次・・ッ」 宗次郎を求めて伸ばした手をこいつの首に絡めた時、 僅かに、勇さんの一声を聞いた気がした。 その方向を見やった俺の視線の先、勇さんが俺を見つめて、自身のものを梳いていて。 「・・・!!」 驚愕に。 今まで彷徨っていた俺の意識が、一気に戻った。 「驚くことじゃないだろ、べつに」 俺の様子に、宗次郎がにやにや哂いながら俺の耳奥へ囁く。 「こんな歳さん見せ付けられたら誰でも起つよ」 「っ、ああッ・・!!」 言うなり宗次郎は俺の最奥を深々と突き。 「淫乱な歳さん・・見せてやりなよ。若先生に、」 ”今まで若先生に黙ってた事の、侘びとして・・?” (な・・?!) 俺の耳元に囁いたまま薄く微笑を浮かべている宗次郎を、俺は唖然として見上げた。 「貴方の、その乱れる姿を見せて、先生を悦ばせてやればいい」 (まさか・・?) 俺は宗次郎の囁きに、はちきれんばかりに目を丸くした。 まさか本当に、勇さんは俺が乱れてるのを見て、梳き始めたというのか?! 俺を見て感じているというのか?? 「ほら・・」 ぐっと、宗次郎が腰を押し進め。 「っあん!!」 俺は仰け反って、走り抜けた快感に嬌声を零し。 「ほら、もっと・・」 「っあぁ!!」 俺のなか、宗次郎が急所を狙って掏り上げる。 宗次郎の動きに、俺は己の嬌声を抑えることができず。 「ああっ、あ、宗っ・・ぁあッ」 「・・いい声だ」 「あぁっ、宗次ぃ・・!!」 「もっと」 「あッ、あ・・、ぁあっ宗次っ、は、果て・・!!」 その、度重なる強烈な刺激に、 身も世も無く喘いで俺は昇りつめて、宗次郎の腹に思いっきり吐き出した。 「・・っ・・ぁ・・はぁ・・・はぁ・・」 俺は幾度も胸を上下して。だが、 「まだ、だよ」 「アアッ・・!!」 乱された息が整わないうちに再び最奥を擦られて、俺の体はびくんと跳ねあがった。 「宗っ・・あんッ、アッ、あぁっ・・」 蕩けるように己の意識が崩れてゆくのを防ぐすべを知らず。 「やだっ・・お、おかしく、なっ・・ちま・・あッ・・!!」 「なって、いいよ・・」 やもすれば閉じてしまう瞼を上げて俺は、笑みを浮かべて俺を見下ろす宗次郎を見つめ返す。 「・・綺麗だ、歳さん」 本当は、誰にも見せてやりたかないけどね・・ (宗次・・?!) 俺の耳朶を柔く噛んで、 「今回だけだ」 宗次郎が囁く。 「それでこの先、十分だろうから」 「十、分・・?」 「ああ、十分。」 これだけ見せつければね 宗次郎が一瞬、切れるような眼差しを灯し。 「誰だろうと。貴方は俺のものだと、嫌でも思い知る」 「・・・・」 耳元に限りなく低く囁かれた、その言葉に俺は頬がかっと熱くなるのをおぼえた。 同時に、再びせり上がるような快楽の波に、呑まれて。 「ぁ、ぁ、あ・・あ・・んっ、宗、次、宗次ッ・・!!!」 目の前を覆う光の渦に、俺は包まれながら再び己を解放し、 刹那に感じた宗次郎の熱を、うっとりとした心地で内に飲み込んで。 「嗚呼、宗次・・!」 俺はもう勇さんの視線も忘れて、がむしゃらに宗次郎の首に抱きついていた。 快楽の余韻に心身を委ねながら。 優しく抱き返してきた宗次郎の首もとに幾つもの印を口付けた。 (宗次、) これが俺の所有の証だ。 おまえもまた、俺のものだという証だ。 ・・見上げる俺に、宗次郎は心得たように、笑い。 「ご馳走さん・・」 (うおっ) 不意に傍らでぽつり呟かれた台詞に、俺はどきっとしてそちらを見やった。 勇さんの苦笑いが、見やった俺の目に映って。 勇さんは懐紙で手を拭いながら立ち上がった。 「宗次、いいものを見せてもらったよ」 顔は苦笑ったままだが、勇さんはそんな台詞を残して部屋を出ていった。 (いいものって・・) 「暫くは、」 宗次郎が閉められた障子をおもむろに見やった。 「若先生、今日の歳さんを思い出して、ひとり慰めるんだろうな」 「・・・・」 俺の複雑な気分に追い討ちをかけるように、 宗次郎がそう言って喉で哂ったのを。 俺は返す言葉も持ち合わせぬまま、 どうしようもなさに。呻いた。 |
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葵さまコメント:甘エロと御指定があったため、二人のらぶらぶっぷりを 見せつけられる損役で勇さんに友情出演してもらいました。が・・ 管理人(葵さま)、エロの意味を履き違えてるかも・・・(汗) |
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