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総司に再び会うまでの一ヶ月間、歳三はたびたび昼間にここを訪れていた。 もちろん、人の姿で、である。 だが、やはり総司の言うとおり、昼にはここにはいないらしく、一度たりとも出会うことは叶わなかった。 がっかりして帰ることも度々である。 その代わりといっては何だが、総司の塒に何度か足を踏み入れた。 わずかな期待をして。 総司から聞いたように、近くの滝の裏に洞穴があり、そこに足を踏み入れると、確かに人の生活している形跡はある。 ただし、それほど生活感を感じさせない場所であったが。 特に目を引くものもなにもなかったが、ただひとつ目を引いたのは、鷹と思しき鳥の羽がそこかしこにあることであった。 夜になれば総司はここにいるが、歳三が狼の姿ではどうしようもない。 それでも、どこか人待ち顔に見える総司の姿を見るだけで満足して、帰らざるを得なかった。 だが、月が巡りようやくひと月が経ち、夜の大部分を人の姿になれる時期になった。 今日ほど、それが嬉しかったことは、歳三にはない。 夜目の利く歳三は星明りのみを頼りに、嬉々として出かけていった。 着いたそこには、この会えぬひと月の間見たように、総司がひざを抱えて座っていた。 約束のとおりに待っていてくれたと思えば、嬉しさもひとしおだ。 歳三が近づくと、総司は顔を上げ、嬉しそうに微笑んだ。 隣に腰掛け抱き寄せながら、 「待ったか?」 歳三が聞けば、素直に身を凭せ掛けてきて、総司はいったん、 「ううん」 と首を横に振ったが、思い直したように言い直した。 「うん。会いたかったから、待ってた」 そっと、歳三の袖を掴んだ仕草が幼い。 伏せた総司の顔を上げさせ、歳三は口を啄ばんだ。 初めは優しく軽く。 だが、それでは足りなくなり、唇を割り舌を忍び込ませ、深く絡めて吸った。 初めてのときは逃げ回るだけだった舌が、総司のほうから絡んでくるようになっていて、そんな変化に歳三は有頂天になりそうだった。 それに、いつしか総司の腕が背に回っているのもよい。 こうなると、歳三はこれ以上理性をとどめておけず、本能の赴くままに総司をその場に押し倒した。 |
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情を交わせば、二人朝寝を楽しみたいというもの。 月が昇ってしまえば歳三は狼に変わるが、日が昇ってからそれまでに、今日はしばしの時間がある。 それを大いに利用しない手はない。 前のときは総司に逃げられ果たせずにいたが、今回はそうはならじと、手段を考えてきた歳三だった。 単に腕に抱きこんでいただけでは、総司に逃げられてしまう。 ならば、と歳三が講じた手段は、総司と己を紐で結びつけるというもの。 総司が寝入った後、幅の広い帯状の柔らかい紐で、傷をつけぬよう細心の注意を払い、しかし簡単には解けぬようにしっかりと結びつけた。 |
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いやーん。べろちゅうですよー。皆様!! 絵に大興奮。 しかも、こんな短い区切りに挿絵を描いていただいて、ホントに果報者ですv |
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