227様作■「姫君の憂鬱と王様の杞憂」環ハル // 5

 << 4 // 6 >>


 ロワグランホテルのスイートルームにて―――。
 一人きりでソファーに腰掛けたハルヒは、無言でアイスティーを啜っていた。
 流石は須王グループ所有の有名なホテルだけあって、調度品の全てに一流の物を使っている。
 普段のハルヒならば、ウェルカムフルーツを物色したり夜景を眺めたりするところだが、
 今は緊張で何をする気にもなれなかった。
 シャワーを浴びる前にルームサービスで夕食を摂ったが、味も素材も一流だった筈なのに、
 どんな物を食べたのかさえよく思い出せないほどだ。
 先にシャワーを浴びた自分と入れ替わりでバスルームを使用している彼が戻って来たら、
 どんな顔で出迎えればいいのかと考えると、それだけで頬が紅潮してくる。
 これから、この部屋で環と結ばれるのだ……。
 知識として、だいたいどんな事をするかは何となく分かっているつもりだが、
 実際にするとなると、想像とは違ってくるだろう。
 好きな相手と結ばれることに特別な嫌悪感があるわけではないが、
 期待よりも不安のほうが断然大きい。
 まして、生まれて初めてのことならば、尚更だ。

 やがて戻ってきた環がベッドに腰掛けると、ハルヒの緊張感はより高まった。
 「……ハルヒ、こっちにおいで…」
 呼びかけに応じて移動し、彼の隣に座る。
 ハルヒが震えていると知った環は、そっと抱き寄せて愛おしげにその頭を撫でた。
 彼の指先が髪を梳き首筋をなぞる度、少しずつ鼓動が早くなる。
 その音を聞かれるのではないかと思うと、恥ずかしかった。
 「…ハルヒ……」
 名前を呼ばれて顔を上げれば、愛しい人と目が合う。
 彼の瞳に映る自分の姿は恋をしている一途な少女そのもので、その想いを自覚する前とは別人のようだ。
 恋に気付いたとき、自分を変えてみせると誓ったものの、
 まさか醸し出す雰囲気まで自然に変わっていくのだとは知らなかった……。

 そんなことを考えているうちに二人の距離が更に近付いていき、
 きつく目を閉じるとほぼ同時に、唇に暖かいものが触れるのを感じた。
 それは数日前に彼にされたのと同じく僅かな間のことだったが、
 胸の奥が痛むのではなく満たされていく感覚に、同じ相手に同じ事をされたのに、
 心構えひとつで全く印象が違うのだと驚いた。
 そのまま何度も繰り返される触れるだけのキスに身を任せていると、
 ほんの少し緊張の糸が解れていくような気がしたが、
 何度目かで環の舌が口腔内に侵入してきたせいで、再び心臓が跳ね上がる。
 彼の熱い舌が絡み付き、貪るように口中の粘膜を刺激していく。唾液が混じり合い、
 それが…つぅ…と唇の端から毀れていく。
 その行為に頭が朦朧としたハルヒは、いつの間にか押し倒されていたことにさえ、
 直ぐには気付かなかった。

 環は、珍しく殆ど無言でハルヒの唇や首筋にキスの雨を降らせている。
 普段は感情の起伏が激しく騒がしい彼でも、やはりこんなときは静かなのだなと思い、
 それと同時に大人っぽい真剣な面持ちにときめく。
 ハルヒの緊張が解れてきたことを確認した彼は、次の段階に行動を移した。
 バスローブの帯を解き、前身ごろの合わせ目に手をかける。
 その腕が微かに震えているのを確認したハルヒは、
 落ち着いて見える環もやはり自分と同じく緊張しているのだと悟った。
 そんなハルヒの僅かな抵抗を軽く受け流し、彼は一気にバスローブを脱がして、
 全て取り去ってしまい……。

 「……うあぁっっっ!!!」
 ……一瞬、ハルヒは何が起こったのか分からなかった。
 環が声を上げたのとほぼ同時に、自分の胸の辺りに生温い液体が降りかかった。
 何事かと思い環を見上げると、彼は非常にばつの悪そうな表情をして、
 利き手で鼻から口にかけてを覆っている。
 それに続いて、胸元を汚したものを掬い取ってみた。指に、ぬるりとした感触……。
 「…何ですか、この白っぽいぬるぬる……?」
 それを聞いた環の目が激しく泳ぎ出す。
 次いで彼はハルヒの上から降りてサイドテーブルからティッシュを取って
 ゴソゴソと後ろ向きで何かした後、その場に膝をついた。
 「……環…先輩?」
 「…ああああぁぁっ!俺のバカバカバカっ!!!興奮していたとはいえ、
  ハルヒのバスローブを脱がせただけでイッてしまうなんてっっ!!何ということだっ!!」
 そう叫んで、大理石の床に頭を打ち付ける環。
 「…あ、あの、そんな事したら危ないですよ!」
 ハルヒがそう言うと、彼は起き上がって指を突きつけ、捲し立てた。
 「だいたい、おまえも悪い!…どうして、バスローブの下が下着ではなくていきなり…
  は、裸なんだっ?!!」
 そう言う自分も同じじゃないのかと言うのを堪え、問いに答える。
 「どうせ脱ぐなら、最初から着けなくていいかと思って……」
 「お、おまえには、男心というものが分かっていませんっ!!こういうのは、
  プレゼントの箱を開けた後に品物が包まれている薄紙のようなものなんだ!
  バスローブの帯を解きながら、可愛いハルちゃんはどんなパンティーを穿いているのかな〜
  …とか思いつつもその更に下に隠された秘密の花園に思いをはせていた俺の気持ちは…!!」

 すっかり普段の調子で喚く環を見て、ハルヒは思った。
 ああ、そうか。先輩が少し前まで大人しかったのは、極度の緊張からで、
 今はそれが解けたから、いつもの調子に戻ったんだ……。
 そう考えると、全て納得出来る。

 …それと同時に、今時変な漫画でもあるまいし、
 女の子の下着をパンティーと言うのもどうかと考えたが、それは言わないでおいた。
 「…はいはい、先輩の男心とやらを分かってあげられなくて、すみませんでしたね」
 「ハルヒィ、本当にすまないと思っているのか、そんな素っ気ない態度で…」
 「はいはい、どうせ可愛くないです」
 やや上目遣いで言うと、彼は慌てて首を振る。
 「…い、いやいやいや、そんなことない!素っ気なくても可愛い、可愛いぞハルヒッ!!
  …だから、早いところ続きをしようではないかっ!!」
 言うが早いか、彼は再びハルヒを押し倒した。

 片腕を掴まれ、一糸纏わぬ肢体をろくに隠すことも出来ずに、ハルヒは身じろいだ。
 先程のやりとりの時にはすっかり忘れていたものの、環の視線を意識した今は、流石に恥ずかしい。
 最初こそ驚いていた彼だが、行為を再開してからはすっかり開き直ったらしく、
 むしろ臆することなく観察するようにじっくりとハルヒの身体に見入っている。
 単に見られているだけならまだ耐えられるが、興奮して自制がきかないのか、
 そういう性質なのかは知らないが、環はいちいちコメントをするのである。
 好きな人に裸体を見られているだけでもドキドキするのに、
 胸の形がどうとか腰の括れがこうとか言われると、彼の顔を見ることも出来ない。
 「…ハルヒのお肌はキレイだな。ほら、こんなにすべすべだ」
 環の指が鎖骨の辺りに触れ、ゆっくりと撫で回しながら胸元に降りてくる。
 「…あっ……!」
 「おおっ!!…ぷにぷにだ!こ、こんなに柔らかいものだったのか、
  女の子のおっぱいというのはっ!!」
 恐る恐るハルヒの胸に触れた彼は、甚く感動したらしく、弾力を確かめるように何度も指で突いた。
 「ハ、ハルヒ、どうだ?くすぐったいか?」
 「……っ…」
 ハルヒが無言で羞恥に耐えていると、環は両手で包み込むように胸を揉みしだき始めた。
 「ハルヒのおっぱいは、小さいけど柔らかくていいぞ!手触りも最高だ!」
 ―――…小学生か、この人は!しかもさり気なく酷いこと言ってるし!
 今まで自分の控えめな胸のサイズに特別な引け目を感じたことはないが、
 好きな相手に改めて指摘されると、些か気にかかった。
 「…あのー、遊んでないで真面目にやってくれませんか?
  それに、そんなに言われると、すごく恥ずかしいんですけど……」
 「す、すまん。何しろ女の子のおっぱいを直に触ったのなんて初めてだから、つい……」
 そう言いつつも彼は、揉むのを止めない。そればかりか、今度は乳首まで刺激してくる。
 「…ちょ、止めてください、そこ……んぅっ…!」
 敏感な部分を刺激され、ハルヒは微かな喘ぎ声を洩らした。
 「おおっ!ここが気持ちいいのか?」
 反応の違いに気付いた環は、そこを重点的に弄りだす。
 ハルヒの反応を観察しながら、乳首を指で摘んで小刻みに擦ったり、口に含んで舌先で突付いたり……。

 大概のことを万能にこなせる彼だけあって、最初こそ拙かったものの、
 早急にコツを掴んで徐々にハルヒの性感を高めていく。
 「あ…あぁっ…いや…ぁっ!」
 「おっぱいの先をこんなに硬くして、嫌なわけないだろう?
  …それにしても、悶えるハルヒは可愛い!すごく、可愛いぞっ!!」
 執拗に責められて快感に喘ぎながらも、未だ頭に残る冷静な部分で考える。
 ―――うわ、また“おっぱい”って言ったし…。環先輩の使う言葉って、
 子供っぽいのか露骨なのか分からないのが結構あるなぁ…。他にも、ちゅーとかパンティーとか……。
 正直、言われると少し恥ずかしい……。
 …などとハルヒが考えているうち、環はいつの間にか胸への愛撫をやめていた。
 次の瞬間、太腿に彼の手がかかる。
 「…や……っ…」
 瞬時に、次に何をされるのか悟って内腿に力を入れたが、男の力に敵うわけがない。
 抵抗空しく両足を持ち上げられ、あっさりと広げられてしまった。
 ハルヒの未だ誰にも見せたことのなかった秘密の場所が、晒されていく。

 「…な、なるほど!女の子のここって、こうなっているのか…!」
 どこか感嘆したような環の声に、ハルヒの羞恥心が高まる。
 自分でもしっかり見たことのない場所を、好きな人に見られているという恥ずかしさ。
 それだけでもギュッと目を閉じたくなるのに、彼は更にそこを指で広げて、
 秘裂の奥まで確認しようとしている。
 「おおっ!な、中までキレイな薄いピンク色だ!それに、こんなに濡れて…。
  …んー、おっぱいを弄られて、感じちゃったのかにゃ、ハルヒ?」
 それを聞いて、恥ずかしさに僅かな苛立ちがプラスされた。
 一度暴発して開き直ってからの、環のこのデリカシーのなさはどうだ。
 普段の接客時のように比喩表現をふんだんに用いたセリフを多用されても迷惑だが、
 興奮で我を忘れかかっているとはいえ、あまりに直接的で恥ずかしくなる。
 初めての行為に緊張している自分を、もう少し気遣ってくれてもいいのでは……。
 そこまで考えて、ハルヒはハッとする。
 まさか、環はわざと自分を恥ずかしがらせて楽しんでいる……?
 …いや、最初の頃の彼の余裕のなさを思い出すと違和感がある。
 それとも、恋心を自覚するまでは彼の表面的な部分しか知らなかったが、
 もしや、環は意外にイヤラシイ性質なのでは……?
 そして、普段は自分でもそれを自覚していないとか……。
 そう考えると、先程のねちっこいディープキスや胸への愛撫の仕方も肯ける。
 「…そ、そんなに、見ないでください……」
 「な、何を言う?!ハルヒの大事な所が、あまりにも可愛らしいから……」
 「…環先輩の、エッチ……!こんなにイヤラシイとは思わなかったです……」
 「……なっ……!!」


 刹那、環の動きが止まる。
 てっきりいつものようにショックで項垂れるかと思ったが、彼は直ぐに復活して言った。
 「大好きな女の子と結ばれようかという時に、いやらしくて何が悪いっ?!!
  何しろ、ずっと可愛い愛娘のように思って大事にしてきたハルヒに、
  これからあんな事やそんな事ををするのだ。そういう気持ちになるなというのが、
  無理だというものではないかっ!!」
 「でも、恥ずかしいです……」
 「ええい!そんなことを言う子は、こうだっ!!」
 「…ぁ…、ひゃうっ…!」
 双方一歩も引かないやりとりに業を煮やした環は、いきなりハルヒの陰核を摘んだ。
 そして、指先を小刻みに震わせて弄り始める。
 「やっ…!何する…んっ…ぁああっ!」
 胸を弄られるのとは比較にならないほど強い刺激に、鳥肌が立つ。
 前に彼を想って自分でしたときよりも、ずっと気持ちいい。
 楽器を扱う人間には指の動きが鋭敏な者が多いというが、彼もその類に漏れないらしい。
 強弱をつけて巧みに陰核や花弁を刺激していく初めてとは思えぬ指技に、
ハルヒは的確に追い詰められていった。
 「…ハルヒは…俺が好きか?」
 秘所への愛撫を続けながら、環が耳元で囁く。
 敏感になった身体は、彼の熱い吐息が耳朶にかかっただけでゾクリと震える。
 「…好きで…すぅ…ああっ!」
 「だったら…、恥ずかしがらずに、もっと俺に身を任せてほしい。
  …俺だって、こんな気持ちになるのは…ハルヒだけなんだ」
 環の指が秘裂を探り当て、緩やかに侵入してきた。
 すっかり潤ったそこは、彼の指を難なく受け入れ、その動きに合わせて収縮する。
 「ふぁっ…あ、はあぁ…んんっ!」
 「ハルヒの中、狭いけど…ぬるぬるであったかい…」
 そう言って、彼は奥まで中指を突き入れた後、内壁を擦りながら同時に親指で陰核を刺激する。
 そうされることで、溢れる蜜が絡み付き淫猥な音をたてた。
 その音がハルヒの羞恥心を煽り、更に意識を昂揚させる。
 掻き出された蜜は太腿を伝い、白いシーツを濡らしていく。
 「ん…ああっ!…ぁぁあんんっ!!」
 やがて、環の指が与えてくる快感にその身を強張らせて、ハルヒは達した。
 環が何か言いながら優しく頭を撫でてくれるのを、朦朧とする意識の中で微かに感じていた。


 << 4 // 6 >>