くれはに見送られて、秋風の吹く、野菊の揺れる小道を、トナカイはヒルルクとともにゆきました。
道すがら、ヒルルクのおじいさんは、ゆるやかなリズムのやさしい歌を、ときどき調子っぱずれになりながら歌いました。
お前には
未来があって
力があって
翼がある
私には
目があって
耳があって
お前を感じる
振り返ることなく飛び立つがいい
お前の翼で 力で
お前の未来へ
私のことなど忘れて行け
どこにいようと
お前の息吹を私は感じているのだから
「ここだ。」
ヒルルクは、ある大きな門の前でつぶやきました。
大きくひとつ息をして、チョッパーのほっぺたを撫でながら、ヒルルクは話しかけました。
「ここでお前は、きっと誰かの力になれるはずだ。」
ヒルルクに抱かれて、ピンクの帽子をかぶったぬいぐるみは、赤い屋根のある建物に入っていきました。
薄汚れたその建物は、孤児院と呼ばれていました。
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