外はまっくらですが、まあるい月はずいぶん柔らかく光っています。空が夜明けの準備をはじめたのでしょう。
ころんとチョッパーは、ブランケットから出るように転がりました。
すると、昼間教会でみかけたある子のひとみと、そこでぱちんとかち合いました。「!」
その子は驚いて、とすんと尻餅をつきました。
かぶっていた分厚い布がぱさりと落ちました。
月明かりに照らされて、その子の鮮やかなみどりいろの髪がかがやいていました。
かたいまなざしが、ほんの少し揺らいだように見えました。
チョッパーは動かないひとみで、その子をじいと見つめました。その子も驚いたまま、じいっとチョッパーを見つめていました。
すると、ふわりと小さな声が聞こえました。
『生きてるのかと思った。』
その子の切れ長の目が、少し柔らかくなりました。その子のかたい表情は変わりませんでしたが、それでもさっきよりずいぶん安心したように、その子はチョッパーを見つめて座っていました。
一番鶏の声がすると、その子はふうっと息をつきました。
そしてもそもそと布をかぶり、ブランケットに潜り込みました。
まもなく、安らかな寝息がひとつ、広々とした教会の中に加わりました。
チョッパーももう一度、まどろむことにしました。
静かに交じり合う夜と朝の匂いの中、チョッパーは、隣の子の寝息を聞きながら、意識を閉じていきました。次に目覚めたときには、ステンドグラスの柔らかな光がチョッパーとルフィをつつんでいました。
ルフィはぱっと身体を起こし、ぐるりと教会の中を見渡します。
「人、増えてるな。」
きっと夕方出かけた路上のこどもが、夜更けに眠りに来たのでしょう。
すぐ隣に来たあの子のように。
「行くぞ、チョッパー。飯が待ってる!」
そう明るくいって、ルフィはがばっと立ち上がりました。
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