vi;うまれる




きらりと、ひとつ。
大きな星が、教会の手前、構内でいちばんおおきな木に宿りました。
職員のひとたちと元気な子ども何人かで、教会はクリスマスのための飾り付けをしたのでした。
星にリース、十字架にオーナメント、小さなものが教会のあちこちに飾られるたび、元気な子たちは楽しそうに笑いました。
もちろん、ルフィたちも一緒に、誰よりもたくさん飾り付けをしました。

「わあ、みんなの顔のオーナメント!」
「ウソップさん、じょうずね。」
「あははは、ゾロ、おっさんみたい。」
「似てるー」
「オイ待て。」
「へへ、サンジといっぱい作ったんだ。な!」
「おう。」
「おれも作ったんだぜ、ほら!」
「・・・えーっとルフィ、それは・・・」
「・・・赤い髪ってことは、これは」
「ナミ!」
「ひどっ!あたしもっとかわいいもん!」
「ひどいって、お前ひどいぞ!」
「ウソップさん、サンジさん、じゃあこれはあのてっぺんに飾って。」
「おう、まかせろ・・・って、ぎゃぁぁぁ、高ぇ、怖いこわいコワイ助けてサンジ君!」
「うわっ、引っ付くんじゃねェウソップ!落ちる!」


いちばん大きな木をクリスマスツリーにしたときは、これまでにない大騒ぎになりました。
「てっぺんはおれが飾る!」
「ルフィは不器用だから絶対ダメだ!ほら、おれに貸せよ。」
「何言ってんの、そういうところは女の子に譲りなさいよ。気の利かないやつね」
「おれがやる!」
「おれにやらせろ!」
「あたしにさせて!」
「あたしも飾りたい!」「おれも」「ぼくも!」
「だぁっ!うっさいわ!
もういい、おれがつける。」
「「「ケムリンはダメッ!」」」
「大体チビどもには危なすぎるんだよ。」
「「「大人げねェぞ!」」」

冷えた青空の下響く声は、どこまでも朗らかでした。


ますます厳しくなる院の冬を、ほんの少し、クリスマスが暖めているかのようでした。
いつも静かな子や、かなしい目をした子たちがそっと飾りに近づいていくのを、チョッパーは何度も見かけては、少し幸せになるのでした。


その横で、いつもルフィたちの笑う声がします。
6人の子どもは、気付けばお互いのそばにいるようになっていました。
そして毎日一度は必ず、6人が2つのぬいぐるみといっしょに顔を合わせていました。
教会の中だったり、グラウンドのベンチだったり、街のそばの公園だったり、とにかくどこか。
ナミとゾロがお仕事に出かける前、お昼ごはんのすぐあとくらい。
それが、6人と2つのぬいぐるみがどこかで集まる時間になっていました。

「クリスマス、楽しみだな!」
「楽しみだなぁ、なあサンジ、なんか作らないのか?」
「おう、調理部屋のおばちゃんに聞いてみるよ、安くて作れるものはねェかって。」
「わあ、ケーキはあるのかな?」
「肉食いてー!」
「楽しみだな!な、ゾロ?」
「・・・何が楽しいんだ。子どもの遊びじゃねェか。」
「む、違うぞゾロ。上手いもん食う日だ!」
「いや、それも多分、ちょっと違う。」
「やれやれ、ゾロみたいな田舎モンは知らねェんだ、クリスマスの伝説を…」
「ねえぶしどー、すごいのよ、クリスマスは!」
「いや、聞けよ」
「戦争だって、止めちゃうのよ!」

クリスマス休戦。
あと数日したら、南で起こっている戦は1月の半ばまで攻撃がとまるのだそうです。
「ソカイグミは、クリスマス休戦にあわせて家に帰るんだって。」
親元を離れてこの地にやってきた子ども達は、この機会に家に帰ります。
もう何年か、ずっと続いていることでした。
だからクリスマスの頃には、この国のあちこちが少し、ほっとするのでした。
このあたりも、少しだけさみしくなって、おんなじくらいほっこりとしているのでした。

「よかったじゃねェか。」
にっと、ルフィは笑いました。
「あいつらは家族と過ごす。おれたちは仲間と過ごすってわけだ。
・・・んん、どっちもいい感じだな。」

5人の子どもは目を見合わせて、同じようににーっと笑いました。
「そりゃそうだ。」


 路上で稼ぎ、院には屋根だけ借りに来る、ナミ ゾロ。
 帰る場所をなくして院に預けられた、ルフィ ウソップ。
 生き延びるために、かくまわれる様に預けられた、ビビ サンジ。
6人とぬいぐるみは、話したり 遊んだり 眠ったり はしゃいだり
時には 何もしなかったり。
そんなふうにいつの間にか、ずっといっしょにいるようになっていました。



風は寒かったけれど、ぬいぐるみのチョッパーはちっとも寒くありませんでした。
抱いてくれる腕がたくさんありましたから。
自分を抱いてあたたかくなってくれる体も、たくさんありましたから。








v目次vi-2