12月24日。
それは、笑い声に溢れた、おだやかな一日でした。
ゾロもナミも、働きには出かけませんでした。
院の子どもたちはみんな、いつもより少し特別なごはんを食べました。
路上で生きる子どもには、温かいミルクとおいもの料理、そしてサンジたちが作ったビスケットが配られました。

クリスマスプレゼントは、どの子にもありません。
けれど子どもたちはめいめいに、特別な遊びで子ども同士、この特別な日を祝いました。

同じようにルフィたち6人とぬいぐるみは、色んなあまりものをかき集めて一日中パーティーをしたのでした。

「これ、わたしが作ったのよ」
「・・・ねェビビ、これ何?木炭?」
「びすけっと!」
「・・・ヘェ。」
「ほらあ、みんな食べて!」
「「「「うっ」」」」
「ハイ、どうぞ、召し上がれ」
「「「「えっと・・・」」」」
「おう、おれ食うぞ。いただきまふ(もごもご)」
「ねえ、ルフィさん、どう?」
「(むしゃむしゃ)ビビぃ、これなんか変な味するぞ。酸っぱくって甘くって、なんか苦い。」
「何味だよ・・・」
「ルフィ、やめなさい、いくらあんたでもおなか壊すわよ」
「(ぼそり)ほらゾロ、食えよ!男を見せろ!」
「おれはゴミ箱か!クソコック食えよ、監督として。」
「おれはお前より繊細な胃袋してんだよ!おらナガッパナ、男を上げて来い!」
「うっ、不審なかたまりを食ってはいけない病が・・・」

院内に響き渡る泣き声に降参して、苦々しい顔で黒ずんだ小麦粉のかたまりを食べて。
口直しに、とサンジが作ったおさとうメイクつきのビスケットは、ほくほくと食べて。
どこまでも楽しく、ルフィたちはパーティーを過ごしました。



ふわふわと、飾りつけられたツリーが風に揺れています。
それに乗り響き渡るのは、所々の泣き声も怒声、けれど多くは、笑い声。
表の灯が輝きだしても、それはずっとずっと、続いていました。

「チョッパー、もう動くだろ、行こうぜ!」
「職員さんたち、もういないみたいよ」
「クリスマスだしな」
「よーしチョッパー、今日はどっちが早いかかけっこだぞ!」
「まけた奴は?ばつゲームする?」
「ビビのビスケット。」
「「「絶対勝つ」」」
「ひどいわっ!」
「おらあ、テメェらひでェぞ、ビビちゃんがせっかく作ったんだろ」
「じゃぁテメェが食えよ、アホコック」
「あ?!なんか言ったかコラ」
「ねえそれなら、鬼ごっこしましょうよ。」
「なあ、チョッパーはどっちがいい?」
「カルーはしたいって。どう?」

笑い声、笑い声、そして歌声。
ルフィたちばかりでなく、院に残ったほかの子どもたちの声も
さざなみのように、時にはつむじ風のように、それは院内を駆け回っていました。






がたがた、ぎしぎしと、風がまたいつものように荒れ始める刻でした。
笑い声はやむことはなかったけれど、いつの間にか、夜風にところどころ紛れてゆきます。
生活棟での追いかけっこを一休みしていたルフィたちのもとに、ほかの子どもの、はしゃぐ声が飛び込んできました。
「ねえ、とっても星がきれいよ!」
「おつきさまも、すっごくきれいよ。」


見に行っておいでよ、という楽しげな声に、6人はぱちり、目を合わせました。


「なあ、ルフィ」
「見に行こうぜ!」
足は返事を待たず、外へ向かってゆきました。


「おう!」

もちろんチョッパーも、ルフィに手を引かれて飛び出しました。







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