嗚呼青春の一頁


vi:風が吹くとき





東南西北。
風は流れ。
春夏秋冬。
季節はめぐる。
白い壁の家。
その中に住むおれたち。
なにものにも懲りることはなく。
發發。





「ローン!」
「うっ」
「あ、ゾロバカ、振り込みやがって!」
「タンヤオ、リーチ、ピンフか。まあこんなもんで。」
「・・・なあ、終わったのか?」


じゃらじゃら。
ごろごろ。


「ツモ。」
「・・・は?終わり?」
「冗談だろ?」
「・・・うるせぇ。」
「げ、マジか?」
「ありえねェよ、この安上がり!」
「うるせぇ!さっさと出せ!」
「どしたんだ?お前ら」


じゃらじゃら。
ごろごろ。


「ドーン!!」
「やられた、混一色…」
「テメェ、ウソップのくせに!!」
「おっひょっひょ、しかもリーチに門前だったりするんだよねぇー♪ さあ出せお前らー!」
「・・・おれ、もうねぇぞ?」




「・・・っつーかルフィは何してんだよ。」
「あ?」
「見せてみな。」
「なあ、できてんじゃねェ?これ。」
「・・・ロン?」
「「「遅いわ!」」」





じゃらじゃら。
ごろごろ。


どこまでも続く遠雷に、留学生は首をかしげた。
「何やってんだ?お前ら」

「「「「真剣勝負。」」」」

即答された。





長い冬の夜。
面子は四人の貧乏学生。
となれば、することはひとつ。


もちろん、金なんて賭けやしない。
目の前にある試験明けの棲家を見れば、そんなもん賭ける気も失せるというものだ。
誰かの夜食の残骸、誰かのストレス解消の名残。
そんなものが跋扈して、今GMDは荒れ放題だ。
これだけの材料を、賭けに使わず何に使う、ということで。



一番負けは、凄惨極まるキッチン掃除。
二番負けは、まだ汚れは少しマシな便所掃除。
三番負けは、どっちか好きなほうを手伝ってやる。
唯一の勝者は、全額オゴリで冬の焼肉。

そうして今日の勝負は始まったのだった。






「けどなあ、」
ごろごろしながら、サンジがはあと紫煙を吐き出した。
「何回教えても、ルールわかんねェ奴がいたりしてな。」
「そうそう、そのくせ勝負には加わりたがるんだよな。」
「上がってんのにわかってねェし、めちゃくちゃなのに上がろうとするし。」
「何だ、迷惑なヤツだなー。」
「「「お前ェだよ」」」


「何だ、おれのことかよっ!」
「ま、絶対勝たねェから、それもアリなんだがな。」
「クソ簡単に決まっちまって、つまんねぇんだよな。」
「お前、もうちょっとくらい強くなれよ。」
「失敬だな、お前ら!!」


いくら反論しようとも、ぶうっとふてたルフィの持ち点は、もうスズメの涙もかくやと言う程しかない。

さてどうしたもんか、と頭をひねった3人は、じぃっと麻卓を見据える大きな目に会った。




「チョッパー、やってみっか?」
「え、いいのか!」
「おう、どうせルフィはもうボロボロだ、一緒に組んでやれよ。」
「そうだな、多少は違うかも知れねェな。」
ほれ、と、どういうわけやら寮内常備の点数計算の本を手渡してやった。

受け取ったその本をぱらぱらぱらとめくって、

「ルフィ」
トナカイは呟いた。



「おれ、頑張るぞ。」









「三暗刻、対々和、ドラドラ。」
「・・・やるじゃねェか。」
「ルフィ、親で勝つの初めてじゃねェ?」



「三色同順、リーチ、門前。」
―何っ?
「三色同刻。ドラ込。」
―いや、あの、もしもし?
「混老頭。七対子。」
―ちょ、ちょっと待てよ。
「二盃口。全帯。」





「一気通貫。一盃口。ダブルリーチ。」

「混一色。リーチ、役牌。ドラドラ。」

「四喜和。」

「大三元。」





―繰り出される技の数々に、ぼんやりと思い出す。

チョッパーが実はものすげえ頭がいいこと。
そして。
ルフィが半端じゃなく運強いこと。







「ルフィ、テンホーだぞ」
「・・・何だそりゃ?」
「なになに、えーと・・・
"テンホー(天和):配牌を配った時点でアガリになっているもの。確率は33万分の1"」





・・・・・








カランとなったのは、点数棒の小さな断末魔。
「サンジ。」
「・・・」


「キッチン掃除、ちょっとは手伝うからな。」










ドボン。
常識の沈む音がした。









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