和葉が僕に懐いている間に、壊れた部分を紘一と早月が直して、柊たちが野菜を持って現れる頃には元通りになっている。七矢はあの騒音にも負けず爆睡中で、起き出してきたらおんぶお化け化した。ふつうならふたりは抱えられないけれど、どちらも浮いているので問題ない。 僕たちはそのまま、夕食づくりに向かう。 寮の調理場はみんなで立ってちょうど良いぐらいの大きさに改装してあり、資金確保の為に売り払った自動調理器の類、専用パックを入れておけば料理が出てくる機械は戻していない。最新型のオーブンやら炊飯器やらはあるけれど、基本的には手仕事だ。 僕と和葉が手分けして鍋用の野菜を切っている間に、七矢と秀次が乾いた食器を片付け、鍋だけじゃ足りないぶんを早月と紘一が手分けしてつくっていく。そうしている間に柊がキッチン隣の食事スペースをととのえて、あっという間にご飯タイム。 「いただきます」 それを言うのは僕の役目だ。 はじめは僕がやりたがったからだっていうけれど、よく覚えてない。でも一番乗りでそれを言うのはちょっと楽しい。 僕たちは思い思いに箸を巡らせ、食べたい分を食べたいだけ食べる。誰かが誰かと話しているというよりはみんな好きなように口をひらくので、静かな食事風景なんて望むべくもない。 「にんじん、さくらにした」 「あー…、肉だけじゃダメだって」 「おい、こっちに醤油よこせよ」 「じゃあ塩ちょーだい」 「もちが余ってたから、それもいれよう」 「ビールにするか、それとも」 「熱燗だろう」 騒がしくて楽しい夕ご飯が終わったら、次はお風呂になだれ込む。 わぁわあ言いながらそれぞれのパジャマを抱えて集まり、たいして狭いわけじゃないけれど押し合いへし合いしながら入る。 便宜上、というか、利便性も考えて、ひとりひとりの部屋にユニットバスが備え付けてあるけれど、僕たちは大抵、大浴場を使う。そもそも寮のお風呂は銭湯式で、棚や鏡が並んだ脱衣所があって扉の向こうに洗い場があって、そこには壁ぞいにずらっと蛇口が並んでる、みたいなものだった。 僕たちはそれをつくりかえた。さすがにもともとの大浴場は広すぎたし、かといって一般的に普及している家庭用のものだと少し物足りないから、掃除しやすいように狭めながらも、銭湯っぽい雰囲気を残し、少なくとも7人はいっぺんに動けるようにする、というふうに直した。 「おおーいいねぇ、やっぱり一仕事終えたあとの風呂っていうのは格別だなぁ」 「柊…、おやじ…」 「あったりまえだろうが。二十歳過ぎれば全員おやじだろ」 かみ合っているんだかかみ合っていないんだか、というふたりの会話は聞いていて和むものだ。柊と和葉は体を洗うのが早くて、たいていいちばんに湯船につかり出す。 「眞冬、それ、新しいボディソープ?」 「うん。すすめてもらったの」 すぐそばの早月にこくりと頷く。女の子たちに教えて貰ったんだよね。すごくきめの細かい泡が立つんだって。 「あっ。おれもおれも。使いたいー」 七矢が手を伸ばしてくる。 3人揃って新商品のボディソープを熱心に泡立てた。あっという間に真っ白な泡だらけで、なんというか、泡団子状態。 「香りもいいね」 「うん」 「すごくしっかりした泡だー」 背中合わせの反対側にいる秀次と紘一に、使う?と聞いてみたけれど、ふたりともいらないらしい。 にやっと笑った七矢がまるめていた泡を放り投げた。それはものの見事に秀次の頭の上に着地する。 「かっ、鏡もち…!」 「に、似合うよ、秀次」 3人で泡を散らしながら笑い転げると、秀次は無言でそれを払った。 ひと笑いした後にまた泡を立て始めた僕たちの頭の上から、大量のお湯に滝のように降ってくる。あっという間に、全身から泡が流れ落ちて、少しの間僕たちは呆然とする。 「…………」 「…………」 「ひどいー。せっかく泡立てたのにー」 早月は何ごともなかったように次の作業に移る。僕もそれにならったけれど、黙っていなかったのがひとりいた。七矢だ。唇をとがらせて、はーいと手を挙げた。 「返却ー」 そのままどうするかと思えば、みるみるまにお湯の壁を作り上げて、それを押し出す。内向きにカーブしたそれは、どう見たって大波。それが派手な波しぶきを上げながら秀次の方へ滑り出していく。 けれどもそれは秀次のすぐ手前で、熱湯の中に投げ込んだ氷とけるように姿を失っていった。 分解された水が換気扇から外へと流れ出ていくのが分かる。 「水素と酸素って、体積比を合わせるとどうなったっけ」 「七矢っ、それだめっ」 浴室大破壊とかって笑えないから。化学実験でもあるまいし、そうそう合うものじゃないけど、合わせられる七矢は危険。 僕の制止に応えて作業を途中でやめてくれたのは良いのだけれども、少し勢い余ったらしい。なぜか再び頭の上からバケツをひっくり返したようなお湯が降ってきた。これは僕も早月も、秀次もその隣にいた紘一も、一緒くたに被害をこうむる。 「七矢…」 「…あー、あれ?秀次、今のはちょっとうっかり」 「うっかりもくそもあるかよ。七矢ァ」 七矢をにらむ秀次の目が完全に据わっている。 早月がそっと僕の背を押した。僕は開けっ放しだった蛇口を急いで閉め直し、柊と和葉の間に飛び込む。出て行こうにも出て行きづらくて居残っているふたりは、少し火照ったような顔をさらしながら僕たちを迎え入れてくれた。 犬の喧嘩は水でもかければおさまるらしいけれど、このふたりにかぶせたって浴びる前に消えてなくなる。 「覚悟しろ」 「しーまーせーんー」 お湯なんだかそうじゃないのか、良く分からないものが飛び交うしれつな攻防に、僕たちはまるきりよそ事で深くで広い湯船の中を泳いだり、ひよこのおもちゃを泳がせたり。 ひとり残った紘一といえば背後で繰り広げられる戦闘になどいっこうに構わず、のんびり頭を洗っていた。万が一飛び火してきても良いように、紘一の周りには薄い隔壁が作られている。 そうしてそんなふうに、いつもと変わらないお風呂の時間が過ぎていった。 「ちょっとつかりすぎた…」 のぼせ気味の顔をぐったり枕に押し当てて、ため息を吐く。 そうかからず秀次と七矢の洗い場戦闘は終了したけれど、ついつい話し込んで長風呂だ。 ごろりとまわって、うーんと天井を見上げる。 「今日はみんな?」 「たまにはいいだろ」 寝室にはいろいろ種類があって大きなベッドがある部屋に来たら、することは決まっていた。 迫り寄ってきた秀次は僕の上にまたがり、乾かせたばかりの髪をそろりと撫でる。こういうときの雰囲気を大切にする秀次は、甘い囁きを吹きつけながら、首筋に口づけ、大きな手のひらでやわらかに僕の肌を確かめていく。脇腹をくすぐった手のひらは足の間におりて、そうっと性器に触れた。 「ん、…う」 秀次が僕の上にいるとしたら、足もとにいるのは和葉だ。和葉は堪えきれないみたいに僕の足を口に含んで、唇でやわやわとはむようになぞる。僕の頭上にかがみ込んだ七矢の唇がすうっとつり上がった。僕の髪をかきあげ、額に口づけを落とす。 部屋の灯りはわずかに落としてあるだけで、煌々と、というわけでも真っ暗というわけでもない。みんなの顔ははっきり見えるけれど、ふだんは付けない灯りがともされた薄暗がりは、ただじっとしているだけでも、期待と不安で胸をざわめかせる。 「眞冬、気持ちいい?」 からかうような声は早月のものだ。僕はうっとりと頷く。 肌を通る手のひらの動きは、僕の感じるところを余すところなく知り尽くしてるもので、それは当たり前のように僕の喜びのためだけに奉仕する。 「足だけで良いのか、和葉」 ベッドの外で湯上がり酒を楽しむ大人組は、余裕の顔でそうはやしたりする。 たきつける紘一に和葉はうんん、と首を振ってすりより、黒く柔らかな髪が僕の足先をくすぐった。 そのままぬるりと這い上がってきた舌が丹念に太ももを舐め出すと、負けじとばかりに七矢の舌が耳の裏を噛み出して、吐きかけた息を思わず吸い込んでしまう。 「あ、あ…」 体中が熱を持ったみたいに火照って、肌から伝わる刺激に否応なく息があがる。 薄くあいた唇の中に秀次の舌が入り込んで息を奪うようにきつく頬の内側をなぶり、敏感な粘膜を破るようにうごめくと、体がひくりと震え出した。 ふくらんだ先端からとろりと先走りがにじみ、いとおしそうな和葉の舌がそれを舐めとる。赤く腫れ上がった口もくびれももえぐりこむように舌をまとわりつかせ、熱い口腔内にのみこんだ。裏筋から付け根を指でくすぐられると、小さな孔は次から次へ蜜をこぼして、すべて和葉の舌にすすりとられていく。 「和、葉…や…」 「いっぱ…い、でてる…。…いい…、?」 「うんん…っ」 身じろいだ体を秀次と七矢が押さえ込んで、ふくれあがる悦びを抑え込み、やり過ごさせてくれない。 いやいやと首を振るとなだめるように瞼をなめた秀次が下肢を僕の腹に擦りつけた。 はっきりと欲望の形を見せる3人のそれは、僕と同じはずなのにあきらかに違った質量と張りを持ち、押しつけられたところから燃え上がるような熱が伝わってくる。 怯えともつかないこわばりを感じ取った手がいたわるように頬を撫でて、僕の体を起こした秀次が、自分の肩に僕の片足を乗せた。そのまま硬くはりつめた先端を、ぬっぬっと押し当ててくる。そのたびに火ごてをあてられたように声を上げ、体を跳ねさせる僕を、残るふたりがいとおしそうに見下ろす。 七矢が引きちぎるかのようなつよさで胸の粒にかじりつき、くにくにと舌でこねまわすと、たんねんに仕込まれたそれは、みるみるまにぷっくりと腫れ上がって、しびれるような熱を伝えていく。 先端からぷくりぷくりともれだした先走りが下肢を汚すと、ぬるつく肌にひんやりとした感触が伝わってきた。まるでそそうをしたかのような居たたまれなさが肌を灼いて、恥ずかしさに瞼がかっと熱くなる。 縮めようとする手足をふさぎながら、たっぷりとローションをまぶした指が別々の方向からあてがわれ、ぬるりと入り込んだ。 「ひ…ぅ」 それぞれの意志のもとで、入り口を広げ敏感な粘膜をめくりあげるように指がうごめく。小さく閉じようとする入り口を指の腹でなぞられると、口に出来ないような違和感と鈍い快感とが背筋を突き抜けた。 僕のそこは与えられる喜びを覚え込んでいて、ひらかれていくごとに大きくうねり、爪の冷たさや指の節がもつかすかな凹凸まで、事細かに感じ取っていく。 秀次が体をずらして僕の腰を持ち上げると、入り込んだ指は更に数を増して、奥へとすすんだ。たっぷりもみほぐされていくごとに僕の声は湿り気を帯びて、指先が白く変わるほど力がこもる。 熟れきった粘膜は悲鳴をあげながらふたりの指をすっぽり包んで絡みつき、煮え立つような波が繰り返し頭の先から足の先にまで広がっていた。 ふるふると震え、限界までそりかえった先端は、波にさらわれる寸前できつくいたぶられる。焦らされわだかまる欲望が、僕を苛んでいた。 「やだ…も…、っ」 「まだ平気でしょ?指でこすられるのが本当に好きそう」 「ぎゅうぎゅ、うって、うれしそう、だよ…」 「眞冬。良く見て。感じてるだろ?」 うごめきまわる指はいつのまにか増やされて息苦しいぐらいのなのに、僕の体が逃げ出すと咎めるように烈しくばたつき、敏感な入り口や奥のしこりを狙ってきつくなぶられる。辛さにわめきだしたいのに、極めることなく塞ぎ戻された先端は悦びにひくついて、どろどろに濡れていた。 入り込んだ指の形がくっきり分かるほど過敏になった内膜はローションのぬめりに助けられ、やすやすと指を飲み込んでいくけれども、僕の息はそれに比例してあがっていく。 「だめ……ダメ…っ」 「すごいうねってるぜ、眞冬」 「…っ、…う」 抗った体がうまくすり抜けけるとやすやすと引き戻され、きつい動きで体ごと揺らされる。指と自分の動きとで潤みきった内側をえぐられては堪らない。ふくれあがった快感が背筋を侵し、繰り返しせき止められた先端の穴から、はくっと空気が漏れた。 「れて…はやく…いれてよ…っ」 「がまん、がまん。よい子だから、もう少しね」 小さなつぼみは時間をかけて拡げ、やわらかくほぐしていく必要があるのだと何度も教えられてはいるけれども、焦らされ追い立てられては、はき出せないまま透きとおった蜜を滴らせるのはあまりに辛かった。 けれども、ぐるぐると胸の底でわだかまる気持ちは、優しく触れられると嬉しさに泣き、撫でられるとほっとして、わきあこる甘い痺れにほどけていく。それぞれに対するいとおしさが僕の恨み言を甘やかなものに変え、ただ涙をあふれさせる。 次第に誰の手のひらか分からなくなって、すがりついているのか、抱き寄せられているのか分からなくなっていくと、頃合いを見計らって指とはあきらかに違う重みと熱をもったものがあてがわれた。 全身がたわむような衝撃に背筋が弓なりにしなる。 「あ、あああー…、…っ」 「やっぱ、最高」 それでも楽にイかせてはくれないのだ。のびてきた指が精の道を狭め、もがきながらも圧倒的な大きさに嬌声をあげる僕を烈しく突き上げる。ぎりぎりまで圧し入れられる怖さと腹の中を埋め尽くす息苦しさにわめきながら喘ぎ、抑えきれなかった分だけのわずかな精をもらす。 そうしてひとりめが済んでも、すぐに次の腕が僕を捉える。 秀次の腕を離れてすがりついた相手は七矢で、双丘をやんわりと撫でたあとはすぐに欲望を突き立てられた。僕が逃げればいったんは腕を放すけれども、すかさず掴まえて追い詰められ、赤くむき出しになった鈴口に爪を立てたり、根本を指で締め付けたりする。 痛みにこわばる僕の首筋に舌を這わせながら、七矢は烈しい動きで僕を責め立てた。 「ゆる、ゆるめて…七矢、ゆるめて…っ」 「眞冬はイきすぎると、すぐに眠くなるしー」 その通りではあるけれど、決定的な刺激を与えられる前にそれをかわされる身になってほしい。 ふっふっと息を吐きながらなるべく快感を流そうとするのを見過ごしたように、絡む腕が僕の抗いを塞ぐ。 「ああぅ…ん、ぅ」 ぶるんと震えたふくらみが精を吐き出そうとしたのに、やはりそれは阻まれて、僕はすすり泣きながら与えられる快楽に身をゆだねる。 結局、僕は精を吐き出すことができないままのぼりつめ、和葉の腕へと移った。 和葉は誰よりもそうっと僕の中へ入ってくるけれど、敏感なところを余すところなく弱く浅く、丹念にいとおしんでくる。それは心地よさを通り越して苦しいぐらいのきつさで、つよくして、と望めばどれもこれもきつく責められ、よわく、と言えば、焦れったさに悶える。 それが下手なら、まだいい。和葉に触れられる度に新しく目覚めさせられていく悦びは、恐ろしいぐらいに僕をとろけさせ、何もかもつくりかえられていくような錯覚に陥る。 僕のものはこれ以上はないぐらいに反り返り、けれど、ほんのわずかなところで精を吐き出すことが出来ない。僕の体は和葉によって、じぶんではどうやっても達することが出来ないようにされていた。 何度も何度もこいねがってようやく、ゆるしてもらえる。 泣き濡れた顔を舐められ、あっけないぐらいの指技で僕が精を吐き出すと、和葉たちはいったんベッドから下りた。それはお終いの合図と言うよりは、まだまだ終わらないのだと僕に伝えるもので。 「さて、行くか」 カウチからのったりと体を起こした柊が服を脱ぐ。そのままベッドの上に上がってうち伏す僕を抱き上げ、あやすように膝の上で揺らされるとほっとひと息つけるけれども、節が目立つ柊の指で後ろに下りていくと、不安がこみ上げる。柊のものは誰よりも重く硬い。当然、それを体の中に受け入れるときは覚悟がいった。 ただもうすでに、僕のそこは柊を受け入れられるように拡げられていて、それを知っている柊は、まったくちゅうちょしない。 ぐう、と内臓を押し上げるようなつよさで入り込み、1度あぐらをくんだ柊の上に持ち上げられてから、手を離される。 僕自身の重みで柊のものを受け入れると、あまりの張りと硬さでめりめりと引き裂かれる気がする。倒れ込みそうになったところをどうにかこらえ、涙で濡れそぼった頬を柊の肩口に押しつけた。 「よい子だ。動けるな」 むり、なんて言えば、下腹が張り裂けそうに大きなそれがどんなふうに動くかを知っているから、すすんで足に力を込めなければいけない。ぐっと力を込めて体を浮かすと、恐ろしいぐらいくびれたふくらみがさんざんなぶられた内膜を圧し拡げて、足先がぴんとそりかえる。電流のように流れた愉悦が、いっとき僕の息を止め、涙をあぶれさせた。 息をととのえて思い切ろうとしても、少し動くだけでも頭の芯がばらばらになるような衝撃が走って、怯えが先に立つ。ぶるぶると震えながらすがりつく僕に、柊の口もとがすうっとつり上がった。 「…、っッ」 「そんなに欲しいのか、ン?」 「ぃ、ぅ、…ッ、…ーっ」 柊の腕が腰をとり、ゆっくりと僕を下ろす。 のみこんだままぐっぐっと揺らされるだけで、ぽたぽたと先走りが滴った。鍛え抜かれた腹に限界を訴えるふくらみをつぶされ、僕自身のものからあふれ出したねっとりとした蜜が糸を引く。あげ続ける悲鳴に息を忘れると、重なり合った口から柊の呼気が肺の中に満たされた。 柊が抜け出た後の後ろはぽってりと縁がめくれあがって、たっぷり注ぎ込まれた精をだらりともらす。 「かわいそうに。眞冬、さっぱりしようね」 そう言って柊から僕を受け取った早月は、湯に通したタオルで顔や体をいったん拭いてくれて、僕の息がゆっくりと落ち着くまで、そうっと髪を撫でてくれる。 やがて僕の涙がおさまって、穏やかな吐息がこぼれだすようになってから、早月は動きはじめた。 抱き起こした僕とぴったり密着したまま腫れ上がった後ろを小さく円を描くようになぞり、自然ともとに戻っていく様をたっぷり眺める。 そのままくったりと垂れ下がった袋をいたわるよう撫でて、やわやわと揉み込み、疲れ切っていた体が疼きだすのを辛抱強く待った。僕のものがしっかりと持ち上がるまで丁寧に撫でて、いたぶられてきた胸の尖りも泣きすぎた瞼も、癒すように舌を乗せてから、早月はゆったりと微笑む。 「…。……ッ」 はじめは爪を立てられた小さな棘がささったような痛み。それが心地よさの中にときおり混ぜ込まれ、それはやがて鮮烈な痛みとなってあらわれる。心地よさを覚えた僕が精を漏らそうとすれば、むごたらしく握りつぶして痛めつけ、そうっと触れられるだけでも甘くしびれる胸の粒を、ぎりっとひねり上げられた。 穏やかさの後の、嵐のような烈しい責めが僕を襲う。 「ぁあ…っ、ぁぅ…っ」 僕はもがき苦しみながら逃れようとあがき、そのたびに早月の手によってどろりと澱むような絶頂の中に引きずり下ろされる。精をしぼりとるような残忍さで繰り返し極めさせられたかと思えば、こそばゆいぐらいのやわらかさでそうっと舐めねぶられるのだ。 「相変わらずえぐいな」 そう柊に言わせるぐらい徹底的にいたぶり尽くす早月は、そうやって僕を愛しんでいた。 早月を受け入れているときは、僕は与えられる快楽と苦痛だけを追いかければ良くて、体中がばらばらに壊れるような痛みも苦しみも、沸騰しそうなほどの悦びも、わめき、叫びながらただ感じてゆくだけでいい。 僕のすべては早月にゆだねられ、そうできることが嬉しくて、嬉しいと感じことも融けて見えなくなってしまうぐらいの烈しさが、僕をおかす。 早月はそうやって僕に悦びを与えるのが好きなのだ。よがり狂わせるためになら、手段も方法も選ばない。 僕はそういう早月のことが好きだし、恐ろしく感じるというよりは、ただ圧倒されている。早月は決して、度は超えない。早月は決して僕を壊さないと分かっているから、安心してゆだねられた。 とはいっても、早月との後は消耗が激しくて、僕はぐったりとベッドに倒れ込む。 かいがいしく水を含ませたり、痛めたところがないか確かめる早月のそばで、ベッドにあがってきた紘一が僕の髪をくしゃりと撫でる。 紘一たちの顔を見上げながら、僕にはもうすぐ終わりだという達成感と、疲労感に包まれていた。 早月がベッドから下りると、紘一は僕を抱きしめてふんわりと唇を合わせ、さんざん出し切ったふくらみに手を伸ばす。 管に残った残滓を拭うようにしおれたものをしごいて、先端がわずかに濡れ出してから、すっぽりと口に含んだ。 暖かな舌に包まれすすられると、次第に力を取り戻していくのが不思議だった。もうなにもでないと思っているのに、僕のそれはまだつやつやとした滴りをこぼす。すっかり硬さを取り戻すと紘一は満足そうに目を細めて、後ろに指をあてがった。 わずかに外気が触れただけでも物欲しげにひくつく後ろが、ぐっと指でひらかれる。体の中でかきまわされ、ぬるまった大量の精が、紘一の指を伝ってもれだしていた。 「たっぷりあるな」 「……っ、…」 下肢が濡れていく独特の感覚は、どうしたって慣れない。恥ずかしさに顔を灼かせながら必死にこらえようとするものの、それは逆に腹にためこんだ白濁を押し出してしまうことになる。 「いちばん多いのは誰のだろうな。眞冬は欲張りだから、こんなにいっぱい貰っても、まだ足りない」 「…ぅ、…」 違うと言いたいのに、耳もとにささやきかける紘一の声は僕から言い訳を奪っていく。 ぐずぐずと泣き出した僕をあやしながら、欲しいだろう?とまるで僕がすすんで選んでいるかのように囲い込んでくる紘一には、やさしい笑みがうかんでる。 羞恥と諦めとがない交ぜになった泣き顔を嬉しげに見つめて誘導し、気がつけば自分で自分の中に指をのみこませて、懸命に精を掻き出す僕がいた。 さんざんいたぶられた粘膜はびっくりするほど熱っぽく、そしてやわらかい。 僕はねちねちと指をまわして、そのあまりの物足りなさに唇を噛む。 「して…、かきまわして…」 「どうやって?眞冬」 「こういちの、紘一の、…で…して…、…」 堪えきれずに紘一の硬くそりかえった欲望に倒れかかり、ゆらゆらと腰を揺らす。体を持ち上げて挿入するだけの体力が残っていないので、それが精一杯だった。 必死にのし掛かってみせるのに、紘一は薄く笑って身じろぎもしない。先端からはただ薄い水みたいなものがにじみ出て、僕はうめいた。擦りつけているだけで満足できるかといえばそうでもなくて、焦れったさだけが募っていく。 「…ん、…ぅ…、てつだ、て…よ」 「どうして欲しいんだ。言ってみろ?」 「…、これ、いれ、る…っ」 「入れて欲しいと言うんだな」 こくこくと首を頷かせると信じられないほどの張りを誇った紘一のものがぬっと入り口を圧しひらいて、熱く硬いものが僕の中を埋め尽くす。 奥に精を残した後腔が音をたててうねり、全身へ悦びを伝えた。満足げな吐息をもらした僕をせき立てることなく、紘一は時間をかけて僕の中を楽しんでいく。ほんの少しの刺激だけでも悦びを感じてしまう僕にとっては、それは焦れったいぐらいのものだったけれども、実際にはちょうどよい。 一気にのぼりつめる感覚や、背筋が反り返るほどきつい衝動がないのに、ぱっくり割れた鈴口の先からは、快楽のしるしがもれだしている。それはさらさらとして濁りもなく、先走りとさえ言えないような物だったけれども、うっとりとした気持ちよさに僕は身をゆだねた。 やがてそのまま眠りに落ちていたらしい。 いつのまにかきれいに体を洗ってもらい、清潔に整えたベッドの上で僕は眠りについていた。 |