廻り、絡み合い。

 そして、繋がる。





Another Name For Life

第12話  再会と邂逅
〜Chapter1 幕開け〜






 が屋敷に戻ると、中が妙に騒がしかった。
 何事かと見てみると、そこには。

「……あっ!」
 あの時先に逃がした、双子の兄弟。

 思わず声を上げたに、ケイナが気づいた。
「あら、。おかえりなさい」
「あぁ、うん。ただいま…」
 扉の傍でのやり取りに、皆が振り返る。

 リューグとロッカが、はっと驚いたような顔をした。

 ――しかし、それには誰も気づかなかった。



 再開発区の辺りにいたのをフォルテが保護したのだと、かいつまんで事情を聞く。

「にしても、無事に逃げてこれたみたいで、安心したよ」
「え、えぇ……まぁ……」
 にっこり笑うに対して、ロッカの顔はどこか浮かない。

 周りの誰かが、怪訝に思うその前に。



「……!」

 場の空気が、変わった。



「……どうやら、お客さんが来たらしいな」
 フォルテの言葉が、緊張を走らせる。

――来た、か――

 が、腰に下げた剣の柄に無意識に触れた。
 その存在を確かめるように。

「マグナ達、呼んでくるよ」
「あぁ、頼む」

 短い言葉をフォルテとかわして、は応接間を出た。



* * *



 2、3度軽くノックして、部屋の主の返事もそこそこに、はマグナの部屋の扉を開けた。
 そこにはマグナとレオルド以外にもトリスにハサハ、ネスティもいた。

「お客さんが来たってさ。それも、団体で」

 表情こそ微笑を浮かべるものの、その目は全く笑っていない。
 の口から淡々と発せられた言葉に、緊張が走る。

「みんな、応接室に集合して」
 の言葉に、皆頷いた。



* * *



「あいつらが、あなたたちを襲った連中なの?」
「わかりません。とにかくあの時は無我夢中だったから……」
 窓の外を窺いながら訪ねるミモザに、トリスが答える。
 も同様に窺ってみると、確かに、見覚えのある黒鎧。

「間違いないと思います」
 最後まであの場に残っていたの言葉に、ミモザも確信したようだった。

「しかしまさか、王都の中で仕掛けてくるとは思わなかったよ。……慢心だったな」
「すいません、僕たちのせいで……」
「不可抗力よ。気にしないで」
 すまなそうに謝るロッカに、ミモザが笑ってみせた。

「幸い、敵はまだ私たちが気づいたとは思っていない。そこにつけ目がある」
「どうすんだい?」
 フォルテの問いに、ギブソンがふっと笑う。

「ひとつ、注意でもしてきてやるか。
 人の屋敷の前で何をしてるんだ、とね?」

「そんなことをしたら、先輩達に迷惑が……!」
 ネスティが声を上げたが、にっこりと微笑まれるだけだった。

「じゃあ、私はこれからアメルちゃんを連れてお散歩でもしてこようかな〜」
 ミモザも、口の端をにやりと上げる。
「裏口からだぞ?」
「ふふっ、心得てるわよ」
 このあたりのやり取りは、さすがに長く組んだコンビだと感じさせられる。

「ケイナさんもどう?」
 不意に声をかけられ、ケイナは思わず相棒を仰ぎ見る。
「行ってこいよ。オレは、旦那の護衛で忙しいからな」
「……うん、わかった」
 言われて、頷く。

「さあ、こっち!」
 ミモザがアメルとケイナを促す。

「マグナ、トリス。君たちも行くんだ」
「え、でも……」
 ネスティの言葉に、マグナが顔を曇らせる。
 はそんなマグナの肩をぽんと軽く叩いた。
「私もこっちに残るから。裏口組の護衛、頼んだよ。マグナ」
 次にトリスの方へと向き直る。
「トリスも、アメルのこと任せたよ」
 口の端だけでにっと笑ってみせたの目は、初めて会った頃の鋭さを感じさせる凛としたもので。
 マグナとトリスも、力強く頷いた。

「俺も残るぜ。……あいつらが村を襲った連中の仲間なら、ただじゃおかねえッ!」
 斧を持ち立ち上がるリューグを、ロッカが止めようとした。
「よすんだ、リューグ! 僕たちが出て行けば、それこそあいつらの思うツボだぞ!」
「今更関係ねぇだろ! 兄貴はアメルの方へ行けよな。オレはごめんだけどな!」
 リューグは耳を貸さない。

「やれやれ、こりゃ説得するだけ無駄ってやつだな……」
 この気性の荒さには、さすがのフォルテもため息が出る。

「付け加えるならその時間もなさそうだ。……連中が動き出したぞ」
 外の様子を伺っていたギブソンの言葉に、全員に緊張が走る。

「それじゃあ、気をつけて!」

 誰かの言葉で、それぞれに動き出した。







 戦いが、始まる。

 運命は、複雑に絡み合い、混ざりあってゆく。

UP: 03.10.28
更新: 06.09.21

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