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 俺とリッカの間にできたスペースに体を割り込むようにしてミズホが近づいてきた。
 新体操の練習着なのか、大きめのTシャツとスパッツ姿という軽装だ。

「大井くん大丈夫!? 副部長に何かされなかった? ちゃんと意識ある?」

 軽く息を弾ませながら彼女はとても不安そうな表情をしていた。
 人差し指を一本立てて左右に振ってみたり、俺の体をペタペタ触ってみたり。
 ちょっとくすぐったいのを我慢して答える。

「何かされたって訳じゃないけど……」

 いきなりここへ連れ込まれて実技指導が入ったことや、『専用』という言葉を教えてもらったことなどを話した。その途端ミズホの顔色が変わった。

「副部長、彼を独占しようとしたの?」
「いえ、それは可愛の流れというやつで」
「ふぅん、どんな流れなのかなぁ。リッカ……後で少しお話し合いしましょうね」
「ヒイッ!!」

 ミズホは右斜め後ろにいる副部長へ顔を向けている。
 どんな表情をしているのか俺には見えない角度だが推して知るべしだ。

 かくして、リッカは慌てて部屋を飛び出していった。
 ミズホは一息ついてから、ベッドの上にちょこんと正座をして頭を下げた。

「ミナトくん、ごめんなさい」
「別に謝られるようなことはなかったと思うんだが」
「ううん違うの! ミナトくんの体、自分じゃわからないとは思うけどちょっと深刻かも」
「え……」

 冗談を言っている顔ではなさそうだ。ミズホが続ける。

「少しの時間とはいえ、副部長と……リッカと肌を重ねたよね」
「あ、ああ」
「バトルファックは初めて体験でしょ」
「たしかにそうだが、あれくらいならどうってことな……」

 俺が大丈夫だと言おうとする直前、ミズホは俺の耳元に軽く息を吹きかけてきた。

 生暖かい吐息だ。ただそれだけのはずなのに、急に背筋がゾクゾクしてきた。

「んはあああっ!」
「ほら、敏感にされてる。気づけないだけで、副部長に色んな事されてるんだよ」

 ヒクヒク震える俺の背中を見ながら、ミズホはゆっくりとシャツを脱ぎ始める。
 と言っても、スパッツは残したままだしブラもまだ――

 おい、なんだよこれ……!

(で、でけえええっ! 副部長より断然大きいおっぱいだぞ!)

 ミズホのバストが目の前で揺れる。
 吸い寄せられるように俺の視線が釘付けになる。
 ピンク色のブラに締め付けられて窮屈そうにしてる双丘は、まるで小ぶりのメロンみたいだった。

「な、なっ!」
「……ちゃんとデトックスしようね」

 言うが早いか、ミズホは少し照れた表情のまま背中に手を回しホックを外す。
 抑圧から解放された魅惑のおっぱいが俺の目の前にさらされた。
 彼女が前かがみになっているせいもあって、清らかな胸が申し訳無さそうにふるふると揺れ続けている。

「私が性感をリセットしてあげる。
 今のままじゃミナトくん、リッカに会うたびにドキドキしちゃうと思うから」

 両手を広げ、少し微笑みながら彼女は言う。
 ぶっちゃけ俺はさっきまでよりも興奮していた。

(綺麗だ、それに可愛くて、女の子らしくて!)

 エッチとは無縁と言えないまでも、清純そうに見えていた彼女が積極的に俺を誘惑しているのだ。にっこり微笑んだまま彼女が近づいてくる。
 黒髪が柔らかそうに揺れ、甘い香りを放つ。
 ミズホはゆっくりと距離を詰め、目の前10センチまでおっぱいが近づいてきた。

「ま、待ってくれ! 俺はお前に聞きたいことがいくつかあ――うぷうっ!!」

 俺からの質問は許可されなかった。
 透き通るように真っ白な肌が顔に密着した瞬間、目の前が真っ暗になり、俺はいい匂いに包まれた。

「じっとしててね。ゆっくり息を吸って」

 続いてやってきたのは天使の囁き。
 逆らわず言われたとおりにする。
 気持ちが徐々に和らいでいく。
 俺の両手は既に脱力している。

「今度は息を吐いて。できるだけエッチなことは考えないで」

 だらりと腕を下げたまま意識を集中する。
 この状態でエッチなことを考えるなと言われても難しいが、懸命に努力する。

 穏やかな湖の水面などを思い浮かべる。
 さらに気持ちが和らいでいった。
 膝がカクンと崩れ落ちる。

 すっかり脱力した俺を優しく押し倒すミズホ。

「スーハーしながら私の声を聞いて。あなたは強い男の子だよ」

 頭の中で彼女の声が何度も反射する。

 強いと言われても漠然としすぎているが、悪い気はしない。

「ミナトくんは普通の男の子、女の子と同じ立場だよ……」

 諭すように彼女は言う。
 時折、胸で俺の顔を締め付けながら。

(そうか、バトルファックのことを忘れさせようとして、るのか?)

 後でわかったことだがバトルファックではアフターケアが重要だという。
 きちんとしておかないとトラウマになって負け癖がついてしまうのだ。

 無意識に俺は彼女に甘えていた。
 力の入らない指先で魅惑のバストを捉えようともがいていた。

「おっぱい柔らかいよね? 気持ちいいよね」

 クスッと笑うミズホに全身をギュッと抱きしめられる。
 たまらなく心地よい。
 こんなことを続けられたら彼女に逆らえなくなってしまいそうだ。

 陶酔感の中で俺は小さくうなずいた。

 これは気持ちいい……心が溶かされるほど柔らかくて、できることならミズホに抱かれてずっとこうしていたい。

「でも溺れちゃダメだよ。自分をしっかり持つの」
「ううぅぅっ……」
「そのうえで、相手のことを頭に思い浮かべて。今は私でいいから」

 戒めるような、相反する指示だった。
 軽い拒否感に胸が痛む。

 でも言われたとおりに思い浮かべる。
 ミズホの優しい笑顔を。

(なんだか、気持ちが楽になっていく。息もさっきより吸える気がする)

 大きく深呼吸をしてみた。やはり先程までとは違う。
 もやもやした何かに呼吸まで支配されていたようだ。

「リッカも悪気はなかったの。
 でも専用はダメ。男の子の気持ちを無視しちゃうから」

 そうか、知らないうちに暗示をかけられていたんだ。
 副部長にリードされたまま絶頂していたら、俺はきっと彼女を好きになってしまう。
 それだけじゃなく隷属に似た感情を抱いてしまうかもしれない。

「ミナトくん、もっとリラックスしてね」

 再び抱きしめられる。
 さっきまでと少し違って、力が強い。

(全身の力が……吸い出されて、また吹き込まれてるみたいな)

 呼吸が乱れるが心地よい痺れだった。
 ミズホのおっぱいで俺の中の何かが再生されていく。

 その時だった。

(うっ、ああああ!!)

 股間が甘く痺れた。

「おちんちん苦しそう。このままじゃダメみたい」
「んっ、んうううーーーーーーーーーー!!」
「私が楽にしてあげる。でも女の子の魅力に負けないで」

 そろりそろりとなぞられる。
 カリ首、裏筋、先端付近……

 明らかに手慣れた様子で、ミズホがペニスに触れていた。

「優しく撫でてるだけだよ。気持ちいいよね」

 言われるまでもない。気持ちいい。やばいくらいに感じる。
 こいつと肌を合わせるのは初めてのはずなのに、ずっと前から知られていたように気持ちいいところだけを探り当てられる。

「んうっ、うああああっ!」
「もう少し我慢して。基礎体力が上がるから」

 悶える俺をギュッと抱きながら、ソロリソロリの手付きが止まらない。
 こんなに優しい手コキなんて想像したこともなかった。

「せっかくだからイメージして。あなたが女の子をイかせるところを」

 自分がすでにイく寸前なのに、女の子のことなんて想像したら暴発しちまう!

「おちんちん大きくなってる……これをそのまま挿入して」
「っ!!」

 急にカリ首が、締め付けられた。
 皮が剥かれて気持ちいい……いあっ、ああああ、出ちまうッ!!

「ゆっくり腰を前後に振るだけでいいんだよ」

 言われたとおりに腰をふる。
 初めは動かなかった締め付けが前後に動き出す。

「女の子を喜ばせてあげて。えっと、今は私でいいから」

 この動きでミズホを喜ばせる。喜ばせるんだ……
 懸命に腰をふる。
 彼女の手が我慢汁ですっかりヌルヌルになっていた。

「ミナトくんのイメージの中の私をイかせて!」

 ミズホはそうささやきながら手のひらをすぼめてきた。
 タイミングを見計らったように亀頭を揉み込んでくる動き。

 あっさりと俺に限界が訪れる。

ビュルルルルルッ、ビュクウウウウーーーーッ!!

 何度も腰を振り、そのたびにおっぱいの柔らかさを再確認させられる。
 ミズホの存在をはっきりと感じる。

(俺の腰使いに感じまくって絶頂する彼女と、一緒に俺も果てたんだ)

 湧き上がる自信と疲労感。
 そして生まれた彼女への愛情。

「んっ、いっぱい出したね。すごい量」

 いつの間にか亀頭に被せられた彼女の指先の間に収まらない量の射精だった。

「ミナトくん、素質あるかも。
 まだ出せそうなおちんちんしてる。でも追撃はしないからね」

 幸せそうな表情をしてる俺に微笑みかける天使。
 ミズホはまだまだ余裕たっぷりな様子で後始末を始めた。

「意識が戻ったら今日はもう帰って。明日ちゃんと教えてあげるから」

 遠くで彼女の声が聞こえた。小さくうなずく。

 少しの間があって、彼女の手が俺の顔を挟み込んだ。

「最後に少しだけ、仲良くなろ……」

 とびきり柔らかな何か、おそらくミズホの唇が重なった瞬間、
 俺の意識がぷつんと途切れた。




「あ、あれ? 俺はいったい……」

 天井を見上げつつ目覚めた時、俺は制服姿に戻っていた。

「ようやく気がついた?」
「あっ、副部長!」

 隣室で待機していたであろうリッカが少しホッとした表情で俺を見つめていた。

「今日はもう帰るようにと部長から指示があったよ。
 ちなみに部長は誰だか覚えてる?」
「ええと、ミズホ?」
「うん、でもここでは北川部長と呼んで。それにしてもあなたはついてる」
「な、なにが?」
「この部で最強、いや全国屈指のバトルファッカーと手合わせしたのだから」

 ため息交じりで語る副部長の説明に対して、俺は首を傾げるだけだった。



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