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第七話




 私怨混じりの鬼気迫る勢いで副部長に犯さ……いや、厳しい指導を受けた次の日、俺はテニス部の朝練に参加していた。
 普段は男女別の場所で行うはずだが、女子部の設備不良のせいで今朝は男女混合での活動になっていた。

 疲労を感じながらも、なんとか基礎メニューをこなす。

 こころなしか下半身の切れが悪い。
 恨むぞ、リッカ!

 それでもテニスに関しての動きは自分の都合に関係なく人並み以上にできるのだが、
 バトルファックは未体験なことが多くてなかなかうまく行かない。

 だからこそ面白いというのもあるが、まだ疲労のほうが勝ってしまう。
 そのうち同じように無意識で体が動くようになるのだろう。
 今は辛抱の時期だ。

「ふぅ、いい汗かいたぞ……
 こっちとおなじくらいバトルファックも自由に振る舞えたらなぁ」

 淡々とメニューをこなしたあとで、軽くストレッチをしてコート脇のベンチに腰を下ろす。

 すると下級生がタオルを持ってきてくれた。
 見たことのないポニーテールの可愛らしい女子だ。

「大井先輩、バトルファック部にも所属してるんですか?」
「ああ。やらなきゃいけない決まりらしいからな」

 名前を尋ねると笑顔で答えてくれた。黒崎風花(くろさきふうか)というらしい。

「私も転校してきた時は驚きました。
 思い出すだけでもキツいです……毎日女としての自信をへし折られてるみたいで」
「女子でも苦労するんだろうな」
「そりゃそうですよ! みんながみんなエッチ大好きってわけじゃないですし」
「お、おう……」

 なるほど、同意だ。

 それにしても女子も強制参加なのか、バトルファック部。

 黒崎さんは苦労しながらもそれなりに期間を過ごし、今はテニス一筋だという。
 俺もこの子みたいな流れでバトルファック部を卒業するんだろうなぁ……などと考えさせられた。

 女子部との合同練習は次の日の朝練まで続いた。



 そして、合同練習明けの午後。
 テニス部の午後練は基礎体力づくりだけにして、バトルファック部で俺は指導を受けていた。

 今日はミズホ、もとい北川部長が相手をしてくれる日のようだ。
 努めて冷静さを保っているつもりだが、気を抜くとドキドキしてしまう。

 ミズホの髪、大きな目、胸の谷間、腰のくびれ、どれも目の毒だ。
 そういったことを受け入れ、受け流せるようにとも指導された。

「見とれてもいいけど魅了されちゃダメ」
「そんな無茶な!」
「心に壁を作って耐えるイメージ? 他のことを考えるとか」

 わかってはいる。が、なかなか難しい。
 自分の初体験の相手が目の前にいるんだから当たり前だろう。

「じゃあここまで!」
「はぁ、はぁ、終わった!」

 タイマーが鳴り響くのと同時に俺はその場で大の字になる。
 テニスとはぜんぜん違う筋肉を使うのがしんどい。

「バトルファックに対しての感じ方はいろいろだよね~」

 忍耐力を底上げするトレーニングを行ったあと、先日のテニス部女子とのやり取りを話すと彼女は頷いてくれた。

「男子でもはじめのうちは恥ずかしがる人がほとんどだし、女子だって同じだよ」
「マッチング次第で問題が生じたりするんじゃないのか。
 たとえばドMな女子とドS男子の組み合わせなんて目も当てられない」

 指導という名目で自分の趣味を貫いてしまうやつだっているだろう。

「私はそういうことしないけど、中には性格が噛み合わなくて徹底的にやっちゃう人達もいるみたい」
「そ、そうか」
「私達と同じクラスにもいるよ。リコちゃん覚えてる?」

 藤原リコ。初日は気さくに話してくれたのに、あれからほとんど会話をしていない。

「ああ、ここへ案内してくれたから覚えてる」
「そうそう。彼女がまさにそれだったの。あのね」

 話の続きを聞けば、藤原リコはバトルファック部では副部長と折り合いが悪い。
 彼女がいる日は必ず部活に出ないという。

 あの日、俺をここへ連れてきて副部長に睨まれ部室を飛び出した。
 その足でミズホに自分を新人教育担当にするよう直談判しにいったらしい。

「でもね、リコちゃんは教育熱心って人じゃないし、
 それよりも狙われたミナトくんのことが心配になっちゃって」
「狙われた!?」
「うん、リコちゃんは初体験マニアだから……」

 俺の担当を申し出たそうだが、彼女の童貞好きを知っていたミズホは却下した。
 さらに副部長と二人きりであることも知って、慌てて部室へ向かったわけだ。

 結果的にミズホが俺の担当になっているわけだが、今後は変わる可能性もあるという。
 それにしても童貞好きってよくわからない性癖だな。

「さて……そろそろいいかな。ミナトくん回復したでしょ」
「あっ、ハイ」

 ミズホは時計と俺の顔を見比べてから、ゆっくりとペニスに手を伸ばす。

(うっ……)

 何度触られても慣れない心地よさ。自分のペニスが彼女の指先に制圧されていく。

 手による愛撫は男子も女子も攻撃の基本技。
 しかし普通の手コキに見えるが、ミズホの手はとんでもなく気持ちいい。

「ん、んんっ!!」
「くすくすっ♪ 可愛いお顔になってますけど?」

 無造作に握ってくれるならどれほど楽なことか。
 彼女は決してそういう扱いをしない。

 焦らすほどゆっくりと、毎回握り方を変えてくる。
 そして確実に俺が感じるポイントで手を止めて、集中的に優しくしてくる。

「ひいいっ! ふああああっ、自分でやるのと、全然違うッ!」
「自分でやる時はどうやってするのかな?」
「そ、そんなの言えるわけが!」

 顔を背けようとすると、彼女の手が俺の顎をくいっと自分の方へ向けた。

「あ……」
「フフ、恥ずかしいよね? これが言葉責めだよ」

 普段と同じような穏やかな微笑み。

「聞かれたら恥ずかしいけど、
 思い出して気持ちよくなっちゃうように相手を誘導するの」
「な、なるほど……はううううっ!」
「そして隙を見つけて弱点をあぶり出すの」

 指先が僅かに俺の肉棒をこすり始める。

「やっぱり裏筋は敏感だね」
「あふっ、あああああーーーーーーーーーーッ!!」

 ゆっくりゆっくり、確実に追い詰められる。
 わずかに回復した忍耐力がどんどん目減りしていく。

「こないだみたいに優しくしてあげるから我慢して?」
「う、うんっ、あああ、あーーーっ!」
「かわいいなぁ、ミナトくん♪ 私のお手々の虜にしちゃうぞ?」

 冗談とも本気とも言えない口調で俺を責めてくる。
 試されている。
 心と体の両方の忍耐力を。

(お、俺は口にできない! ミズホに屈服するような言葉も、それに、んああっ!)

 口を結んでも染み込んでくる快感。
 俺の状況を常に把握しながら責めの手を変えてくる。

「少し技を教えてあげるね。まずは手コキ技のひとつ、逆手螺旋(さかてらせん)!」

 ミズホは俺にもたれかかるようにしながら上目遣いになる。
 見つめられるとドキドキしてくる。そしてその心の動きはモロにペニスへ伝わって、

(き、きもちいいいいいいーーーーっ!)

 大好きな女子に見つめられてしごかれるとこんなふうになるのか。
 だがミズホはそんな俺に解説し始める。

「この技の利点は相手の目を見ながらおちんちんの握り方を変えられること」
「う、ううううっ!」
「直接的な刺激で昇天させることより、弱点をサーチすることが目的」

 ミズホの指がくねくね動く。時々俺の性感帯をかすめる。
 こうしている間にもサーチされてるのか……!

「だからこの技を受けてる時は顔色を変えちゃダメ」
「ぐ、あっ、そ、そうだな!」
「ふふっ、そんなんじゃバレバレだよぉ。もっと我慢して♪」

 逆手握りだった手のひらがペニスを離して、ミズホがしゃがみ込んだ。

「次に連携技の亀頭磨き!」

 そこから左手でペニスの根本を掴み、先端に右手をかぶせて緩やかにこすり始める。

(あっ、あああーーーーーーーーーーーーっ!!)

 思わず彼女の方を掴んでしまう。
 焼け付くようにもどかしい、そんな強烈な刺激。

「これも射精狙いじゃなくて、相手に性的なストレスを試させるのが目的」
「な、なんだと!」
「敏感なところをサワサワされたら苦しいでしょ?」

 性的なストレスどころかこのままイッてしまいそうだ!

 ミズホの手のひらでこね回され、亀頭の側面をグリグリと弄ばれる。
 特に親指と人差指でカリの溝を撫でられるとヤバすぎる!

「しかも私の場合はギリギリまで裏筋には触れないの」
「ど、どうして!?」
「だって最後にコチョってすれば、だいたいの男の子はイっちゃうから」

 フフッと笑うミズホを見て思わずイきかけた。
 無邪気な顔でとんでもなくエロいことを言いやがる。

「べ、勉強になるぜ……」
「もっといっぱい教えてあげるから、我慢してね♪」

 ミズホが微笑んだその時だった。修練場にリッカが駆け込んできた。

「たいへんです! 男子テニス部の主要メンバーがっ」
「もうっ、雰囲気も高まっていいところなんだから邪魔しないでよ副部長!」

 あからさまに不満げなミズホに向かってリッカが侘びて説明をする。
 かなり慌てているようだ。

「え、男子全員が他校のマネージャー相手に骨抜きにされた?」
「はい。そのうち数名は意識不明になるほどの様子で……」

 テニス部の話なら俺も気になる。
 しかしそんな事が本当に起きうるのか。

「テニス部は県大会の予選が近かったよね」

 たしかそんな話もあった気がする。
 俺はメンバー入りしていなかったし、同世代の公式戦なのでそれほど気に留めていなかった。

「ハニートラップで負け試合なんて許せない。ミナトくん、これはリベンジ案件だよ!」

 ミズホが俺の手を取り熱っぽく語る。

「リベンジ案件!?」
「そう、相手のマネージャーとやらを屈服させて真実を語らせましょう」

 リッカが期待を込めた目で俺を見つめている。

 たしかにこれは黙っていられない状況だ。
 でも今朝はそんな雰囲気はなかった。

 他校のマネージャーっていつ侵入してきたんだろうか?





(ここまで)


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